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No. 2065 CIAはいかに世界を不安定にさせているか
投稿日時: 2024年2月19日
How the CIA Destabilises the World
by Jeffrey D Sachs
CIAは行く先々で破壊の痕跡を残すが、米国の政治家やメディアはCIAの責任を追及することに、これまで以上に関心がないように見える。
CIAには3つの基本的な問題がある。その目的、方法、そして説明責任の欠如である。CIAの活動目的は、国際法や米国の法律に関係なく、CIAや米国大統領がその時々の米国の利益になると定義したものである。その方法は秘密主義と二枚舌である。説明責任の欠如とは、CIAと大統領が国民の監視なしに外交政策を運営することを意味する。議会は簡単に踏みにじられる存在であり、余興である。
最近のCIA長官、マイク・ポンペオはCIA時代のことをこう語っている:
私はCIA長官だった。私たちは嘘をつき、不正行為を行い、盗んだ。トレーニングコースもあった。アメリカの実験の栄光を思い起こさせる。
CIAは1947年、戦略サービス局(OSS)の後継組織として設立された。OSSは第二次世界大戦中、諜報活動と破壊活動という2つの異なる役割を担っていた。CIAはその2つの役割を引き継いだ。一方では、CIAは米国政府に情報を提供する。もう一方でCIAは、「敵」、つまり大統領やCIAが敵と定義した人物を、幅広い手段を使って転覆させた。暗殺、クーデター、騒乱の演出、反政府勢力の武装化など、さまざまな手段を用いた。
後者の役割は、世界の安定と米国の法の支配に壊滅的な打撃を与えた。その役割をCIAは今日も続けている。事実上CIAは米国の秘密軍隊であり、何の説明責任も負わずに世界中に騒乱を引き起こすことができる。
ドワイト・アイゼンハワー大統領がアフリカで頭角を現し始めた、ザイール(現コンゴ民主共和国)で民主的に選ばれたパトリス・ルムンバを “敵 “だと決めつけた時、CIAは1961年、彼の暗殺を謀り、アフリカの民主化への希望を台無しにした。CIAによって失脚させられたアフリカの大統領は、彼が最後ではないだろう。
CIAは77年の歴史の中で、1975年に一度だけ公的な責任を問われたことがある。この年、アイダホ州選出の上院議員フランク・チャーチが上院の調査を主導し、CIAが暗殺、クーデター、不安定化、監視、メンゲレ式の拷問や医学的「実験」など、衝撃的な暴挙を繰り返していたことを暴露したのだ。
このチャーチ委員会によるCIAの衝撃的な不正行為の暴露は、最近、ジェームズ・リゼン調査記者による素晴らしい本『The Last Honest Man: CIA、FBI、マフィア、そしてケネディ家-そして民主主義を救う一人の上院議員の戦い』(2023年)にまとめられている。
このたったひとつの監視エピソードが起きたのは、珍しい出来事が重なったためだった。
チャーチ委員会の前年、ウォーターゲート事件はリチャード・ニクソンを失脚させ、ホワイトハウスを弱体化させた。ニクソンの後継者であったジェラルド・フォードは選挙で選ばれたわけではない元下院議員で、議会の監督権限に反対することに消極的であった。上院アーヴィン委員会が調査したウォーターゲート事件は、上院の権限を強化し、行政府の権力乱用に対する上院の監視の価値を実証した。重要なことは、CIAを一掃しようと考えていたウィリアム・コルビー長官がCIAを新たに率いていたことだった。また、同じくチャーチ委員会が暴露した広範な違法行為の著者であるJ・エドガー・フーバーFBI長官も1972年に死去していた。
1974年12月、当時も今もCIA内部の情報源を持つ優れたジャーナリストである取材記者のシーモア・ハーシュは米国の反戦運動に対するCIAの違法な諜報活動について発表した。当時の上院院内総務マイク・マンスフィールドは人格者であり、チャーチをCIAの調査官に任命したのである。チャーチ氏自身も勇敢で正直で知識豊富で独立心が強く、勇敢な上院議員であり、これらは米国の政治では常に不足している特徴だった。
チャーチ委員会が暴いた犯罪の結果、CIAの不正な作戦が歴史に幕を下ろしたのであれば、あるいは少なくともCIAが法の支配と公的説明責任の下に置かれたのであればよかったのだが、そうはならなかった。最後に笑ったのはCIAで、海外破壊工作を含む米国の外交政策において卓越した役割を維持することで世界を泣かせたのだ。
1975年以来、CIAはアフガニスタンでイスラム聖戦主義者を支援する秘密作戦を実行してアフガニスタンを完全に破壊し、一方でアルカイダを生み出した。バルカン半島ではセルビアに対して、コーカサス地方ではロシアに対して、中央アジアでは中国に対してすべてにおいてCIAが支援する聖戦士を配備した。2010年代、CIAはシリアのバシール・アル=アサドを打倒するための致命的な作戦を、イスラム聖戦士と実行した。少なくとも20年以上にわたりCIAはウクライナで拡大する大惨事の煽動に深く関与してきた。2014年2月にウクライナのヴィクトル・ヤヌコヴィッチ大統領を暴力的に転覆させ、現在ウクライナを巻き込んでいる壊滅的な戦争を引き起こしたこともそのひとつである。
これらの作戦について私たちは何を知っているのだろうか?内部告発者、少数の勇敢な取材記者、一握りの勇敢な学者、そして一部の外国政府が米国政府から厳しい報復を受けるかもしれないことを承知の上で、私たちに伝えようとしている、あるいは伝えることができた部分だけである。米国政府自身による説明責任はほとんどなく、 議会による意味のある監視や抑制もなかった。それどころか、政府はこれまで以上に秘密主義を強め、機密情報の開示に対して、たとえその情報が政府自身による違法行為を示すものであったとしても、あるいは特にそういう時に積極的な法的措置をとるようになったのである。
たまに元米政府高官が暴露することがある。たとえば、ジミー・カーターがアフガニスタン政府を不安定化させるために、イスラム聖戦士を訓練するようCIAに指示したことをズビグニュー・ブレジンスキーが暴露したように。その目的は、ソ連をアフガニスタンへ侵攻させることだった。
シリアの場合は2016年と2017年にニューヨーク・タイムズに掲載されたいくつかの記事から、バラク・オバマ大統領の命令により、CIAがシリアを不安定化させ、アサド政権を転覆させる破壊工作を行っていたことを我々は知った。 これは明らかに国際法違反の、ひどく誤ったCIAの作戦であり、それが10年にわたる騒乱、エスカレートする地域戦争、数十万人の死者、数百万人の避難民をもたらしたにもかかわらず、ホワイトハウスや議会はこのCIA主導の災難を一度も正直に認めていないのである。
ウクライナの場合、米国はヤヌコビッチを失脚させ、ウクライナを10年にわたる流血の渦に巻き込んだ暴力的なクーデターにおいて秘密裏に大きな役割を果たしたことを我々は知っているが、今日に至るまで、その詳細は分かっていない。ロシアは、当時米国の国務次官補だったヴィクトリア・ヌーランド(現国務次官)と駐ウクライナ大使のジェフリー・パイアット(現国務次官補)がクーデター後の政権について企てた通話を傍受し、掲載することで、世界にクーデターへの窓口を提供した。クーデター後、CIAはクーデター後の政権の特殊作戦部隊を秘密裏に訓練した。米国政府はウクライナにおけるCIAの秘密工作について口を閉ざしたままである。
CIAの工作員がノルドストリーム・パイプラインの破壊を実行したと信じる十分な理由が我々にはある。ハーシュがニューヨーク・タイムズに在籍していた1975年は、同紙がまだ政府の責任を追及しようとしていた時代だったが、当時と異なり、ニューヨークタイムズははハーシュの証言を調べようともしない。
CIAに公的責任を問うことは、もちろん困難な闘いである。大統領も議会もそれをやろうとしない。主流メディアはCIAを調査せず、代わりに「匿名の高官」の言葉を引用して公式の隠蔽工作を行うのだ。主要メディアは怠慢なのか、隷属的なのか、軍産複合体からの広告収入を恐れているのか、脅されているのか、無知なのか、あるいは上記のすべてなのか。誰にもわからない。
わずかな希望の光がある。1975年当時、CIAは改革者によって率いられていた。今日、CIAを率いているのはウィリアム・バーンズで、長年にわたりアメリカをリードしてきた外交官の一人だ。バーンズは2008年に駐ロシア大使を務め、ウクライナへのNATO拡大を推進することの重大な誤りについてワシントンに電報を打ったのだからウクライナに関する真実を知っている。バーンズの名声と外交実績を考えれば、おそらく彼は緊急に必要とされる説明責任を支持するだろう。
CIAの作戦の失敗がもたらした騒乱の数々には驚くほどだ。アフガニスタン、ハイチ、シリア、ベネズエラ、コソボ、ウクライナ、そして遥か彼方で、CIAの破壊工作によって放たれた不必要な死、不安定、破壊は今日まで続いている。主流メディア、学術機関、そして議会は、こうした作戦を可能な限り調査し、民主的な説明責任を果たすための文書公開を要求すべきである。
来年はチャーチ委員会の公聴会から50周年にあたる。50年後、チャーチ委員会自身の先例とインスピレーション、そして指導のもと、今こそ真実を明らかにして米国主導の混乱の真実を暴露し、米国の外交政策が透明性を持ち、説明責任を果たし、国内外の法の支配に服し、仮想の敵を破壊するのではなく世界の平和に向けた新しい時代が始まるべきなのだ。
https://braveneweurope.com/jeffrey-d-sachs-how-the-cia-destabilises-the-world
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