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苦境に陥っているイスラエルを支援するため米軍は中東で戦乱を拡大させつつある
https://plaza.rakuten.co.jp/condor33/diary/202402040000/
2024.02.04 櫻井ジャーナル
アメリカのCENTCOM(中央軍)は2月2日、B1爆撃機を含む航空兵力を使い、イラクとシリアを空爆した。目標は85カ所以上だったとされている。アメリカを攻撃したわけでない主権国への攻撃であり、「国際法違反」だと言えるが、アメリカはそうしたルールを守る意思はない。そもそもアメリカ軍は2014年からシリアへ地上部隊を侵入させ、20以上の基地を建設している。そのひとつのアル・タンフだ。
2011年春にバラク・オバマ政権は「アラブの春」を演出、アル・カイダ系武装集団を利用してリビアやシリアへの軍事侵略を開始、リビアのムアンマル・アル・カダフィ体制はその年の10月に倒れ、カダフィ本人はその際に惨殺された。その後、武器や戦闘員をシリアへ集中させたものの、バシャール・アル・アサド政権を倒せない。
そこでオバマ政権は配下の武装集団に対する支援を強化するが、それをアメリカ軍の情報機関DIAは危険だと考え、2012年8月にホワイトハウスへ報告書を提出している。反シリア政府軍の主力はアル・カイダ系武装集団のAQI(アル・ヌスラと実態は同じだと指摘されていた)であり、その中心はサラフィ主義者(ワッハーブ派、タクフィール主義者)やムスリム同胞団だと指摘、オバマ大統領が主張する穏健派は存在しないとしている。
オバマ政権はDIAの警告を無視、その結果、2014年にはダーイッシュ(IS、ISIS、ISILなどとも表記)が出現した。そのダーイッシュは残虐さを演出、世界の人びとを恐怖させた上でアメリカ/NATO軍を投入しようとした。
そのため、軍事力の行使に慎重な人びとが粛清される。2014年8月にはDIA局長だったマイケル・フリン中将が退役させられ、15年には2月に国防長官がチャック・ヘーゲルから好戦派として有名なアシュトン・カーターへ、また9月には統合参謀本部議長がマーチン・デンプシーから軍需産業と関係の深いジョセフ・ダンフォードへ替えられた。
デンプシーが退任した直後の9月30日にロシアはシリア政府の要請を受けて軍事介入、ダーイッシュや「アル・カイダ」系武装勢力を敗走させ、アメリカは軍事介入するタイミングを逸した。
そうした中、アメリカ軍はシリア領内へ侵入して基地を建設、敗走したダーイッシュに替わってクルドを手先として使い始めた。それ以来アメリカ軍はクルドを守り、クルドはシリアの石油を盗掘、その石油をいイスラエルへ供給している。
ガザでの虐殺はパレスチナ問題の一場面にすぎず、パレスチナ問題はイスラエルの「建国」から始まる。イスラエルなる国をアラブ人が住んでいた豊かな場所に作り上げるプロジェクトを始めたのはイギリスだ。この辺の事情は本ブログでも繰り返し書いてきた。
イスラエル軍は10月27日にガザへ3師団と数旅団を侵攻させたが、中東のメディアによると、その作戦にはアメリカ軍約5000人が参加しているとする話も伝えられていた。現在伝えられている話では2000人だとされ、そのほとんどが軍事顧問だというが、ガザでの戦闘にアメリカ軍の特殊部隊が参加していることはクリストファー・マイヤー国防次官補が語っている。
また、10月7日にハマスの戦闘部隊がイスラエルへ攻め込んだ際にイスラエル軍が醜態を見せたことから、アメリカ軍の司令官が事実上、イスラエル軍を指揮しているとする話も流れていた。
ハマスが攻め込む2カ月前、アメリカの国防総省はネゲブ砂漠のハルケレン山頂にある基地にアメリカ軍人の「生命維持エリア」を建設する契約をコロラド州に拠点を置く企業と結んでいる。
この基地は「サイト512」と呼ばれ、イスラエルを攻撃するイランのミサイルを監視するレーダー施設がある。ガザから30キロメートル余りの場所にあり、その存在は秘密にされていた。ハマスのミサイルはガザから発射されたため、このレーダーは探知できなかったようだ。アメリカは中東や北東アジアにAN/TPY-2レーダーを配備、そのひとつがサイト512。残りはトルコのサイトK、そして日本の青森県車力と京都府京丹後にある。
ガザへ攻め込んだイスラエル軍は苦戦を強いられている。病院が学校を破壊して3万人近い住民を虐殺しているものの、ハマスなどの戦闘部隊は大きなダメージを受けていない。ガザへの侵攻作戦は失敗したと考える人が少なくない。
ハマスの創設にイスラエルが深く関与していることは広く知られている話で、10月7日にハマスの戦闘部隊がイスラエルへ攻め込んだ際にもイスラエル政府やアメリカ政府は事前に知っていたかのような動きを見せていた。
しかし、ヤセル・アラファトが暗殺された2004年にハマスを創設したアーメド・ヤシンも殺され、その後、反イスラエル色の濃いグループも誕生した。10月7日の攻撃の数カ月前、ハマスはヒズボラやイスラム聖戦と会議を開いていたと言われているが、こうした組織は戦闘情報を交換していたようだ。各組織は独自に動いているものの、情報は共有しているという。イスラエルはハマスの動きを見誤ったのかもしれない。
いわゆる「国際社会」がイスラエルによるパレスチナ人虐殺を傍観している中、イエメンのフーシ派(アンサール・アラー)はイスラエルへ向かう船舶に対する攻撃を始めた。ガザでの虐殺が終わるまで続けると宣言している。
それに対し、アメリカとイギリスはガザで虐殺を続けるイスラエルを支援するため、1月12日からオーストラリア、バーレーン、カナダ、そしてオランダを引き連れてイエメンを攻撃しはじめた。
さらに、イラクやシリアで活動している反米グループもアメリカ軍施設への攻撃を開始、1月28日にはシリアとの国境に近いヨルダンのアメリカ軍基地、タワー22基地が攻撃され、アメリカ兵3名が死亡、25名以上が負傷したと発表されている。それに対する報復としてCENTCOMはイラクやシリアを空爆しているわけだ。
ジョー・バイデン政権は戦争の拡大を望んでいない風を装っているようだが、アメリカが世界制覇プロジェクトを作成した1992年2月当時から中東全域どころか世界を火の海にするつもりだった。
欧州連合軍(現在のNATO作戦連合軍)の最高司令官を務めたウェズリー・クラークによると、1991年に国防次官だったポール・ウォルフォウィッツはイスラエルにとって目障りなイラク、イラン、シリアを殲滅すると口にしていた。2001年9月11日から10日ほど後には統合参謀本部でクラークが見た攻撃予定国のリストにはイラク、シリア、レバノン、リビア、ソマリア、スーダン、そしてイランが載っていたという。(3月、10月)
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