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2023.12.14
https://plaza.rakuten.co.jp/condor33/diary/202312140000/
ペルシャ湾岸の産油国はアメリカやイギリスの強い影響を受け、イスラエルとも友好的な関係を築いてきた。アメリカを中心とする支配システムの柱であるドルを支えてきたのはサウジアラビアをはじめとする産油国にほかならない。その産油国とアメリカとの関係をイスラエルによるガザでの民族浄化作戦が揺るがしている。
アメリカが世界に君臨できたのは基軸通貨を発行する特権を手にしたからだが、その特権を失いかねない状況になったことがある。経済状況が悪化し、1971年8月にリチャード・ニクソン大統領がドルと金との交換停止を発表したのだ。これによってドルは金という後ろ盾を失った。
そこでアメリカは流通するドルを回収する仕組みを作り上げる。ひとつの仕組みは各国が必要とする石油の取り引きを利用するもの。石油取引の決済をドルに限定させ、産油国に集まったドルをアメリカへ還流させるのだ。
石油取引を利用してドルを回収するための協定をニクソン政権が最初に結んだ相手はサウジアラビア。1974年に調印されている。その後、同じ内容の協定をOPEC加盟国は結んだ。(Marin Katusa, “The Colder War,” John Wiley & Sons, 2015)
ドル決済に限定させる代償としてアメリカが産油国に示した条件は、国の防衛や支配者たちの地位や収入の保証だったという。産油国は集まったドルでアメリカの財務省証券や高額兵器を購入することで還流させ、オフショア市場へ沈め、あるいは投機市場へ流し込むわけだ。投機市場へ資金が流れ込み始めると相場が上昇、アメリカが保有する金融資産は膨らむ。
相場の上昇は世界の富豪たちにとっても好ましい。ドルが実世界に滞留すればインフレになるが、投機市場へ吸い上げればバブルになり、バブルは帳簿上の資産を増やして金融資産を増大させるからだ。世界の富豪や巨大企業が課税逃れのため、オフショア市場などに沈めている資金の総額は20兆ドルから30兆ドルだと言われている。
その一方、投機市場の吸い上げ能力を高めるために金融規制を大幅に緩和、シティを中心とするオフショア市場のネットワークも1970年代から整備された。特に重要な「改革」が証券業務と商業銀行業務を分離させるグラス・スティーガル法(1933年銀行法)の廃止と資本の国境を越えた移動の自由化だ。
ペトロダラーの仕組みができあがって間もない1975年3月、アメリカの言いなりにならないサウジアラビアのファイサル国王が執務室で甥のファイサル・ビン・ムサイドに暗殺された。暗殺犯はクウェートのアブドル・ムタレブ・カジミ石油相の随行員として現場にいた。
ビン・ムサイドはアメリカでギャンブルに溺れ、多額の借金を抱えていた。そのビン・ムサイドにイスラエルの情報機関、モサドは女性を近づけ、借金を清算した上で麻薬漬けにし、ベッドを伴にするなどして操り人形にしてしまったという。ファイサルが殺された後、サウジラビアのアメリカへの従属度は強くなる。(Alan Hart, “Zionism Volume Three,” World Focus Publishing, 2005)
つまり、アメリカの支配システムは金融マジックで成り立っているのであり、「張子の虎」だ。ペルシャ湾岸にはアメリカやイギリスが軍を配備して押さえつけているが、サウジアラビアはすでにイランやロシアへ接近している。今のところ利権でアメリカやイスラエルとの関係は維持されているが、かつてのような強いものではない。
そうしたイスラム諸国との関係を悪化させる発言をジョー・バイデン大統領は繰り返してきた。10月7日にハマスの戦闘部隊がイスラエルへ攻め込んだ後、バイデンはベンヤミン・ネタニヤフ首相と会談した際、「シオニストであるためにユダヤ人である必要はない」と断言、自らがシオニストだと訴えた。
本ブログでは繰り返し書いてきたが、ガザはイスラエルが建設した一種の強制収容所であり、その収容所を取り囲む壁には電子的な監視システムが張り巡らされ、人が近づけば警報がなる。すぐに地上部隊だけでなく戦闘ヘリも駆けつけることになっているのだが、ハマスはイスラエルへ突入できた。
攻撃の際、ハマスがアメリカ製の武器を大量に持っていることが映像で確認されているが、それらはウクライナから横流しされてきたと言われている。ただ、その武器をどのようにして「強制収容所」の中へ運び込んだのかは謎だ。
しかも突入の数時間後、2隻の空母、ジェラルド・R・フォードとドワイト・D・アイゼンハワーを含む空母打撃群を地中海東部へ移動させている。そうしたことから、ネタニヤフ政権やアメリカのジョー・バイデン政権はハマスの攻撃を事前に知っていたのではないかと疑う人が少なくない。
そしてイスラエル軍はガザの建造物を破壊し、住民を虐殺し始めた。モーシェ・フェイグリン元議員は「ガザをドレスデンや広島のように破壊」すると宣言したが、その通りになっている。
イスラエルがガザで大虐殺を行えるのはアメリカやイギリスが武器を供給し、情報を提供しているからだ。アメリカやイギリスの軍事拠点であるキプロスにはイギリス空軍のアクロティリ基地があり、イギリス空軍だけでなくアメリカ空軍の偵察航空団も駐留している。アメリカ軍はこの基地からイスラエルへ武器を輸送していると推測されている。
ハーレツ紙によると、10月7日からイスラエルへアメリカ軍の大型輸送機が20機、そしてイスラエルと各国がリースした民間輸送機が約50機、物資を輸送している。
キプロスのアクロティリ基地にはアメリカの輸送機が40機以上、イギリスの輸送機が20機、7機の大型輸送ヘリコプターが到着。装備品、武器、兵員を輸送したと見られている。
そのほかオランダの輸送機4機、緊急対応部隊を乗せたドイツの輸送機4機を派遣、カナダ空軍は数機の輸送機を向かわせた。またキプロスにはイギリス陸軍のSAS(特種空挺部隊)も待機中だという。
そのほかヨルダンの空軍基地には25機以上のアメリカ軍の大型輸送機が飛来、通常はイギリスにいるアメリカ空軍のF-15E飛行隊がヨルダン基地に配備されたという。ドイツの輸送機9機も同基地に到着したと伝えられている。
バイデンは若い頃からイスラエルと関係が深く、36年にわたって親イスラエル団体から420万ドルを受け取り、副大統領時代にはバラク・オバマ大統領とベンヤミン・ネタニヤフ首相との関係を取り持ったと言われている。1986年6月には上院議員としてバイデンはイスラエルがアメリカの利権を守る上で重要な存在だと主張していた。
こうしたバイデンの言動とは逆に、世界ではイスラエルへの怒りが高まり、イスラエルをボイコットする運動が強まっている。
そうした中、ロシアのウラジミル・プーチン大統領はサウジアラビアとアラブ首長国連邦を訪問、サウジアラビアとは防衛協力の強化で合意し、ガザにおける惨状を憂慮、軍事作戦の停止を求め、国際法および国際人道法に従って民間人を保護する必要性を強調した。
プーチンの中東訪問では政策以外のことでも注目された。サウジアラビアとアラブ首長国連邦の周辺地域は危険と予測不可能だとして、大統領を乗せた航空機を4機の標準兵器を搭載したSu-35S戦闘機が2500キロメートルを無着陸、燃料の補給なしで護衛したのだ。ロシア戦闘機の優秀さを世界に見せつけたと言えるだろう。その間、アゼルバイジャン、イラン、ペルシャ湾岸諸国がロシア軍の戦闘機が通過することを許可している。
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