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※2023年12月16日 日刊ゲンダイ2面 紙面クリック拡大
※紙面抜粋
※文字起こし
岸田首相は火の粉を払おうと「安倍派斬り」に動いたが…(C)JMPA
東京地検の捜査は、どこまで広がるのか。相当数の議員が立件されるのではないか、と自民党内には不安が広がっている。
自民党の最大派閥・安倍派(99人)が、政治資金パーティーで集めたカネを5年間で5億円も裏金にしていた一大疑獄。国会が閉会し、東京地検の捜査が、いよいよ本格化している。すでに安倍派の議員に対し、任意の聴取に応じるよう要請しているという。近く、安倍派への強制捜査に乗り出すもようだ。
東京地検がヤル気なのは間違いない。全国から検事を集め、50人という異例の規模で捜査をつづけている。霞が関の関係者がこう言う。
「驚いたのは、この事件を朝日新聞がスクープしたのが12月1日だったことです。まだ国会会期中ですよ。しかも、岸田首相の外遊中だった。東京地検が朝日新聞にリークしたと考えるのが自然でしょう。普通は、政治に影響を与えないように国会が閉まった後にリークするもの。国会会期中だったために、大騒ぎになった。東京地検が、この裏金事件を一大イベントにしようとしているのは明らかです。中途ハンパな捜査では終わらないでしょう。捜査期間も、来年1月に通常国会が召集されるまで、たっぷり1カ月間あります」
政治資金パーティーを利用して5億円の裏金を集めた安倍派は、ノルマ以上のパー券を売った議員に、超過分をキックバックしていた。朝日新聞によると、大野泰正参院議員には5000万円、池田佳隆衆院議員と谷川弥一衆院議員には4000万円が裏金として渡っていたという。「5人衆」と呼ばれる安倍派の最高幹部も、キックバックさせていた。
裏金づくりが派閥ぐるみだったのは疑いようがない。実際のパーティー収入が記載された「裏帳簿」と、政治資金収支報告書に記載する金額が書かれた「表帳簿」を作っていたというから、かなり悪質である。
「派閥の金庫番である70代の事務局長は、地検の聴取に完落ちし、表帳簿も裏帳簿もキックバックリストも、すべて渡してしまった、と言われています」(政界関係者)
立件され、有罪になれば公民権停止となり、議員辞職に追い込まれる。この年末年始、安倍派の議員が次々に立件されたら自民党に激震が走るのは間違いない。
始まった醜い派閥バトル
裏金を受け取っていた安倍派議員は、20〜30人ともいわれている。この先、安倍派の「看板」を嫌って離脱する議員が続出するのではないか。
自民党がどんな集団なのか、よく分かったのは、危機に直面し「あいつらが悪い」「おまえたちこそ」と、派閥同士で醜い罵り合いが起きていることだ。
火の粉を払おうと「安倍派斬り」に動いた岸田首相に対し、安倍派は「安倍派というだけで罪人扱いはどうなのか」「安倍派一掃を首相に勧めたのは他の派閥領袖なのだろうが、その派閥は許さない。助言を受け入れた首相も許さない」と怒りを爆発。
一方、首相にあらがった安倍派に対し、岸田派も「そもそも、なぜ安倍派が反発するのか。おまえらが引き寄せた災いじゃないか」と、ブチ切れている。
さらに、安倍派の大臣を更迭した後、後任に無派閥議員を就けるという構想が浮上すると、無派閥議員からは「こんな時だけ無派閥の名前ばかり挙がるってなんなんだ」と憤りの声が上がるありさまだ。
自民党内はバラバラ。収拾がつきそうにない。もし、東京地検に立件される議員が相次いだら、混乱はさらに広がるのではないか。
政治評論家の本澤二郎氏はこう言う。
「いま派閥同士でケンカしている場合じゃないでしょう。自民党政治の象徴である派閥の存在そのものに不信の目が向けられているのに、派閥単位で罵り合っているのだから処置ナシです。どこが政策集団なのか。しかも、更迭した安倍派大臣の後任選びも、派閥に頼っているのだから話になりません」
5派閥に「政治とカネ」
しかし、この問題は「安倍派が悪い」「いや岸田派だって」というレベルの話ではないだろう。自民党全体の問題なのは明らかだ。
安倍派のみならず、二階派だって、所属議員が販売ノルマを超過して集めた分を派閥の収支報告書の収入に記載していなかった疑いがある。総額は5年間で1億円超とみられている。岸田派も、2020年までの3年間で不記載額が2000万円超に上ることが分かっている。
刑事告発されているのは、安倍派を含む5派閥である。
しょせんは、安倍派も他派閥も同じ穴のムジナ。盗人同士が裏金の多寡で罵り合っているようなものだ。
実際、これまでパー券収入の裏金化だけでなく、あらゆる「政治とカネ」の問題を起こしてきたのが自民党という組織だ。
河井克行元法相は19年参院選広島選挙区を巡る買収事件で実刑判決を受け、吉川貴盛元農相は大臣在任中に鶏卵業者から500万円を受け取り、収賄罪に問われた。甘利元経済再生相は、大臣室で50万円を受領した“口利きワイロ”疑惑がくすぶったままだ。
法大名誉教授の五十嵐仁氏(政治学)がこう言う。
「政治とカネの問題は、自民党の宿痾みたいなものです。何度、痛い目に遭っても時間がたつと同じ問題を起こしている。リクルート事件をきっかけに、『政治改革大綱』を党議決定して政治資金の透明性確保を掲げ、政治改革の名の下に企業・団体献金を禁止したが、制度に“抜け穴”をつくり、結局は元のもくあみ。企業・団体献金もなくならなかった。いったい、企業・団体献金は禁止するからと、政党交付金制度を導入したのは何だったのか。政治資金パーティーを利用して裏金までつくっていた。自民党はヒドすぎます」
この期に及んでポーズだけのデタラメ
岸田は13日の会見で「国民の信頼回復のために火の玉となって自民党の先頭に立ち、取り組んでまいります」なんて言っていたが、ちゃんちゃらおかしな話だ。
表情だけは深刻そうだったが、ヤル気がないのはミエミエだった。実態解明の調査期限について聞かれても「まずは当事者が自らを調査し、(検察)当局に丁寧に説明し事実を確認する」と他人事。政治資金規正法改正の必要性についても「議論になることはあり得る」と言っただけだった。
あまりの消極姿勢に業を煮やしたのか、連立を組む公明党の北側一雄副代表にまで「検察の捜査を待つのではなく、自民党として事実関係の解明に取り組んでもらいたい」と注文をつけられるありさまだ。
口先だけの岸田政権に実態解明など、とても無理だ。
「岸田首相の発言は『火の玉』を含め、抽象的なものばかりで中身がありません。とりあえず勇ましげな姿勢を示しておけば、そのうち国民は忘れ、延命できると思っているのでしょう。ハッキリ言って、国民はなめられています。もっと怒るべきです。裏金が当たり前の腐敗政治を断ち切るには、政権交代しかないでしょう」(五十嵐仁氏=前出)
国民生活無視の“裏金蓄財政権”には、即刻退場してもらうしかあるまい。
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