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※2023年12月15日 日刊ゲンダイ1面 紙面クリック拡大
※紙面抜粋
※2023年12月15日 日刊ゲンダイ2面
※文字起こし
人事をやっても本質は変わらない(上は左から斎藤健経産相、松本剛明総務相、岸田首相、林芳正官房長官、坂本哲志農相)/(C)日刊ゲンダイ
予想された通り、永田町は臨時国会閉会の翌日(14日)から慌ただしい動きとなった。
江東区長選に絡む公職選挙法違反事件で、東京地検特捜部が柿沢未途衆院議員の議員会館の事務所を家宅捜索。自民党派閥のパーティー券裏金疑惑についても、特捜部が近く安倍派の強制捜査に乗り出すと報じられた。安倍派の派閥事務所のガサ入れや、所属議員全員が任意の事情聴取に呼び出されるという情報も飛び交う。
この「一大疑獄」で、岸田内閣の支持率は、時事通信の最新の世論調査でついに2割を切った。前月比4.2ポイント減の17.1%となり、民主党政権が誕生する直前の2009年9月の麻生内閣(13.4%)以来の落ち込み方だ。
岸田は13日の記者会見で「政治改革」「党の体質一新」を表明し、局面打開を図ろうと、安倍派所属の4閣僚を更迭する人事を断行したが、舞台裏は悲愴感が漂う。
無派閥の閣僚経験者らを官房長官の後任に据えようとしたが、浜田靖一前防衛相など片っ端から断られたという。「こんな泥舟に誰が乗るものか」──。それが当然の反応だろう。岸田は仕方なく、離脱中の自派閥から林芳正座長を充てるしかなかった。
安倍派の政務三役15人全員の一掃も一時企てたが、「政務官の1期生まで道連れにするのか」と反発が起きて断念。安倍派全体を敵に回す禍根を残した。
総理総裁が自らの望む人事をやれないほど、機能停止状態なのが今の岸田政権なのである。
自民党政治の本質は金券政治
もっともそんな小手先で、国民の怒りや不信感が払拭されるはずもない。今回の裏金疑惑は、「令和のリクルート事件」といわれている。1988年のリクルート事件で、退陣表明した当時の竹下首相から後継に指名された伊東正義総務会長が「本の表紙を変えても中身を変えなければ駄目だ」との金言を残した。岸田は知らないのだろうか。
自民党そのものの体質が根本から変わらなければ、どんな人事をやろうが、「火の玉になる」「先頭に立って戦う」と叫んでも、空疎に響くだけなのだ。
元経産官僚の古賀茂明氏がこう言う。
「自民党政治の本質は金権政治です。パー券を買ってくれる人、自民党にお金をくれる人のための政治であり、利権をぶら下げて企業・団体を引き付け、カネを出してもらう。選挙では票を出してもらう。ウィンウィンの関係なのです。だから、政治改革をうたっても、毎回どこかに法律の抜け穴を残す。派閥の1、2期生はパー券を売るためのセールスマンのようなものです。そういう本質が変わらない限り、人事を刷新しようが、総理の顔が変わろうが自民党は何も変わりません」
一強政治に安住し、消えた若手の改革エネルギー
パー券裏金疑惑だけじゃない。臨時国会で相次いだ、岸田政権の副大臣・政務官のドミノ辞任。いずれも「不適材不適所」で、選挙違反や脱税など政治家のモラルが問われるスキャンダルだった。
国民は物価高に喘ぎ、1回こっきりの定額減税は来年6月まで待たされる。防衛増税は開始時期の決定が先送りされたとはいえ、いつか必ずやってくる。一方で社会保障費は削られ、年金は物価上昇に追いつかず、どんどん目減りする。
ところが自民党は、俺たちは上級国民だとばかりに、「今だけ、カネだけ、自分だけ」。「政治とカネ」の問題がこれほど拡大して火を噴いても、ポストとバッジにしがみつく醜悪。もはやマトモな議員はいないのか。国民不在の保身ばかりの政党になぜ、誰も見切りをつけないのか。
かつての自民党には飛び出す気概のある議員たちがいた。
「リクルート事件」で政治不信が高まった89年、自民党は「政治改革大綱」を取りまとめ、「政治倫理の確立」「政治資金の透明性の確保」「派閥解消」などを掲げた。しかし、派閥は温存され、政治改革は進まず、92年に東京佐川急便事件が起きる。
当時の実力者だった自民党の金丸信副総裁がヤミ献金を受け取り議員辞職。国民の政治不信は頂点を極め、派閥が激しく金権選挙を繰り広げる中選挙区制度に問題があるとして、小選挙区を軸とした「選挙制度改革」へとつながっていく。
最大派閥の経世会が分裂し、政治改革法案の成立を先送りした宮沢喜一内閣の不信任決議案に、小沢一郎や羽田孜ら自民党の造反グループが賛成、不信任案が可決される。彼らが離党して新生党や新党さきがけを立ち上げ、総選挙を経て非自民連立政権を樹立、自民を下野させたのだった。
ジャーナリストの鈴木哲夫氏が言う。
「小沢氏や羽田氏など核になる実力のある政治家が動いたことが大きいが、それだけじゃなかった。当時の自民党には、若手の活力があり、若手の決起があったのです。『派閥による金権政治を変える』として、岡田克也氏、石破茂氏、簗瀬進氏といった1、2期生がガンガン上を突き上げた。総理公邸に若手が押し掛け、政治改革を迫る場面もありました。なぜ今、同様のことが起こらないのか。今の自民党の若手は、一党支配、一強政治に安住し、改革しようというエネルギーがないからでしょう」
自民の良識派と立憲若手が組む「新党」に期待
野党が弱すぎることもあるが、自民党が2度目の下野から政権復帰した2012年以降、安倍長期政権で自民党の一強政治が続いた。野党暮らしに戻りたくない自民党議員は、選挙に勝てさえすればいいと、どんどん内向きになり、寄らば大樹で、派閥の影響力も大きくなる。その末路が、派閥が億単位の裏金を平然とつくり続ける金権・政治腐敗の噴出である。
まさに「政治改革」が叫ばれた30年前に逆戻りだ。いや、30年間、自民党は反省した“フリ”をしていただけだったのだろう。
石破が14日、自民党の総務会でかつてまとめた「政治改革大綱」の検証を求めたというが、腐った自民党内で吠えるより、もう一度、離党した方が真の政治改革を実現できるんじゃないか。
今こそ、自民党を分裂させて、不信任案を可決させ、解散総選挙で政権交代をしないと、この国の政治は変わらない。国民生活も良くならない。日本の将来を憂うマトモな議員ならば、自民党を飛び出し、政界再編に動かなきゃおかしい。
前出の古賀茂明氏はこう言う。
「過去に自民党を割って出た人たちは、結局、出戻り、肩身の狭い思いをした。自民党議員には、そんなトラウマがあるのです。例えば、河野太郎さん。改革の旗を掲げるなら自民党から出たらと思うが、新自由クラブを立ち上げた父親の洋平さんが出戻りだったので、自民党総裁にはなったものの、首相にはなれなかった。そんな過去が影響している。しかし、ここまで自民党の金権政治が問題化した以上、例えば、自民党内の心ある人たちと立憲民主党の中堅・若手が組んで『新党』のような動きが出てきてもおかしくない。立憲内の『万年野党』体質に腐っている中堅・若手はたくさんいますからね。安倍一強政治が長期に続いたことで、忘れられていた政治家の情熱に火がつけば、政界再編や政権交代の起爆剤になるのではないかと期待しています」
ここまでの堕落を見せつけられ、岸田政権のままで、自公政権のままでいいのか……。有権者の怒りと情熱も重要だ。
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