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※紙面抜粋
※文字起こし
いつまで笑っていられるか(C)日刊ゲンダイ
政務三役の相次ぐ辞任や自民党派閥の政治資金問題など、自民党政権の腐敗劣化が次々と露呈しているというのに、この臨時国会はなんとも緊張感がない。
24日、今年度補正予算案が衆院本会議で可決。自民・公明・国民民主・日本維新の会の4党による賛成多数で衆院を通過し、参院に送られた。
総額が約13兆2000億円という巨額の補正予算案だが、物価高対策は2兆7400億円だけで他は企業向けの減税メニューがズラリだ。所得税と住民税の定額減税は来年6月の実施予定だから今回の補正予算案には含まれていない。本当にいま必要な緊急予算なのか疑わしいものが多いのだが、岸田内閣の予算案に賛成して秋波を送り続けている国民民主はともかく、維新も初めて賛成に回った。2025年大阪・関西万博の関連経費として約750億円が補正予算案に盛り込まれているためだ。このまま行けば参院での審議も順調に進み、補正予算案は来週中にスンナリ成立する。
本会議場での岸田首相はやけにご機嫌で、自席で閣僚と談笑したり、ニヤつく場面が目についた。低迷する内閣支持率に苦悩している様子はない。余裕の表情だ。
「自公政権に、『第2自民党』を自称する維新と、『自民党のアクセル役』を名乗る国民民主がスリ寄って、事実上の自民党独裁になっている。これでは、どんなに支持率が下がろうと政権は安泰だと岸田首相が考えていても不思議はありません。安倍1強が長く続いて驕り高ぶった自民党は、自分たちを脅かす存在がいないことにあぐらをかいて、今や完全に弛緩しきっているように見える。だから、『政治とカネ』の問題も次々と噴出している。自民党派閥の政治資金のデタラメぶりが注目されていますが、これはもう自民党全体が腐っているということです」(政治評論家・本澤二郎氏)
自民党丸ごと公民権停止じゃないのか
自民党の5派閥が18〜21年の政治資金収支報告書に政治資金パーティーの収入を過少記載したとして政治資金規正法違反で刑事告発された件は、衆院予算委員会でも追及された。現時点で判明しているだけでも、5派閥で計約4000万円である。告発を受け、東京地検特捜部が捜査に乗り出している。
政権を揺るがす大疑獄事件に発展しかねないのだが、岸田は「しっかり精査させる」「適切な説明を速やかに行うよう幹事長に指示した」などと答えるばかりで、どこか他人事だ。
自民党5派閥が24日までに公表した収支報告書の収入不記載は、安倍派が18年から21年分で54件、麻生派は19〜21年分の13件、茂木派も19〜21年分で17件、岸田派は18〜20年分で7件、二階派は18〜21年分で29件。いずれも収支報告書を訂正したという。
各派閥はあたかも“うっかりミス”のような態度で、「再発防止に努める」とか言うのだが、総務省が24日公表した22年分の政治資金収支報告書でも、各派閥は収入の一部を記載していなかった。これらは収支報告書の訂正で済む話なのか。
昨年12月に政治資金の過少記載で略式起訴された自民党の薗浦健太郎・前衆院議員は議員辞職し、裁判所から公民権停止3年の命令を受けた。パーティー収入の過少記載が裏金づくりと認定されたのだ。
自民党の派閥がやっていることも手口は同じだ。すべての派閥が同じ“ミス”を数年にわたって繰り返していた。常態化していると言っていい。実際の収入と過少申告との差額はどう処理されていたのか。せっせと裏金づくりに励んでいたのなら、自民党丸ごと公民権停止でもおかしくない。
岸田首相はいつまでヘラヘラ笑っていられるのか
薗浦の件も、自民党5派閥の21年分までの収入不記載も、政治資金規正法違反の疑いで刑事告発したのは神戸学院大の上脇博之教授だ。あらためて話を聞くと、「私の調査で判明したのは、氷山の一角に過ぎません」と、こう続ける。
「収支報告がネット公開されている政治団体については、支出と収入を突き合わせて調べられますが、パーティー券を買うのは政治団体だけではない。個人や企業が購入している分は報告義務がないため調べようがありません。薗浦氏の不記載も、私が調査で確認できたのは200万円程度でしたが、検察の捜査で5000万円近くに膨れ上がった。各派閥の不記載についても、検察が本気で調べれば何億円にも上る可能性があります。組織的な裏金づくりだとすれば、政治家の指示がなく派閥の事務員が勝手にやれることではないはずです。検察にはしっかり捜査して欲しいし、国民の側も『全容解明しなければ許さない』と監視する必要があります」
東京地検特捜部は派閥の担当者らから任意で事情を聴いているという。
「特捜部が動くからには、バッジ(国会議員)を挙げたいでしょう。派閥のノルマ以上のパーティー券を売った分が議員個人の収入になっているのに収支報告書に記載していないケースもあると聞きます。これが裏金にあたる可能性があり、検察は証拠固めをしている。全派閥を摘発することは難しくても、一罰百戒の意味で悪質な議員を検挙することはあり得ます」(全国紙司法担当記者)
二重取りで空前絶後の金権政治
特捜部は同時並行で、東京都江東区長選を巡る公職選挙法違反事件で、柿沢未途・前法務副大臣に関する捜査も進めている。区議や陣営スタッフに現金を提供した買収の疑いだ。「政治とカネ」の問題で2つのルートから虎視眈々と自民党議員を狙っている。
自民党が抱える「政治とカネ」の腐敗は、いよいよ底が抜けてしまった感じがする。企業・団体献金をなくすという目的で1995年に政党交付金の制度が導入されたのに、自民党と企業との癒着は一向に減っていない。
「22年の自民党の収入は約250億円で、2年連続の増収でした。円安政策を続けて庶民生活を犠牲にしてでも大企業を儲けさせ、税制でも優遇して、儲けの一部を献金で還元してもらう。大量のパーティー券も買ってもらう。国民の税金と企業献金の二重取りで、空前絶後の金権政治が行われているのです。表に出ているだけでこの調子ですから、どれだけの裏金をため込んでいるか分かったものじゃない。検察がマトモに動けば、その腐敗が白日の下にさらされ、下野は必然でしょう。自民党は、受け皿になる野党がないから大丈夫だと甘く考えているのかもしれませんが、国民の7割が岸田自民を不支持なのですよ。選挙で鉄槌を下したいと待ち望んでいる有権者は少なくない。頼みの公明党も、支持母体である創価学会の精神的柱だった池田大作名誉会長が亡くなり、組織の高齢化もあって集票力が細っていくことは避けられない。二人三脚でやってきた旧統一教会も表立っては動けない。次の総選挙で政権交代は不可能ではないし、この国の未来のためにも金権自民政権を引きずり降ろさなければなりません」(本澤二郎氏=前出)
今国会の会期末は12月13日。「国会が閉じれば国会議員逮捕」の噂もある。それは柿沢の公選法違反か、派閥の政治資金問題なのか。いずれにしても、さらなる支持率下落は確実だ。尻に火がついているというのに、危機感ゼロの岸田はいつまでヘラヘラ笑っていられるのか。
岸田が不人気でも、選挙前に新しい顔にすげ替えて政権をタライ回しすれば国民をけむに巻けるとタカをくくっている自民党も、派閥の裏金で逮捕者が出れば、年の暮れには阿鼻叫喚だろう。検察が今ほど国民に期待されることもないだろうから、たまには秋霜烈日の矜持を見せて欲しいものだ。
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