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※2023年11月17日 日刊ゲンダイ1面 紙面クリック拡大
※紙面抜粋
※2023年11月17日 日刊ゲンダイ2面
※文字起こし
それでも政権たらい回しを画策、自民党政治の劣化が凄まじい(岸田首相と松野官房長官)(C)日刊ゲンダイ
自民党政治の劣化がすさまじい。かつてないほどの腐臭が漂ってきた。この政権は一体どこまで堕落するのか。
岸田首相らの給与を増額する国家公務員特別職の給与法改正案が16日の参院内閣委員会で可決され、17日の参院本会議で成立。いつもは「スピード感を持って」とか言いながら検討を重ねて煮え切らないのに、こういう時だけは早い。来月8日に支給される岸田の期末手当(ボーナス)は36万円増額だ。スピード感がある。
国民の批判をかわすため、首相や政務三役は増額分を国庫に返納する方針を示しているが、法案に連動して国会議員のボーナスもアップする。「国民に還元」だか家計支援だかの所得税減税は来夏のボーナス時期に実施なのに、自分たちのボーナスは来月さっそくアップさせるわけだ。
「物価高で国民が苦しんでいる時に、その対策を後回しにして、真っ先に自分たちの給料を上げるなんて、あまりにナンセンスです。それも、政府与党が国家国民のためにマトモに仕事をしているならまだしも、政務三役の醜聞が続出している真っただ中ですよ。ただでさえ、こんな連中のために血税を払っているかと思うと情けなくなるのに、さらに給料アップとは国民をバカにしているとしか思えない。国民の反発は必至で、低迷する内閣支持率がますます下落することは間違いありません」(政治評論家・本澤二郎氏)
10月20日に召集されたこの臨時国会では、山田太郎参院議員が“パパ活疑惑”で文科政務官を、柿沢未途衆院議員が公選法違反の疑いで法務副大臣を辞任。さらには、あろうことか神田憲次財務副大臣が税金滞納で何度も資産の差し押さえを食らっていたことが発覚して辞任。3週間足らずで政務官と副大臣が3人も辞める異常事態になっている。
辞任ドミノは止まりそうにない
「辞任ドミノ」は止まる気配がなく、16日発売の「週刊文春」が、三宅伸吾防衛政務官が10年前に事務所スタッフの女性に性加害行為を働いたと報じた。三宅は「身に覚えがない」と繰り返し否定しているが、なぜか与党内からもかばう声は聞こえてこず、諦めムードが漂っている。
タガが外れたような政府与党に対する国民の視線は厳しい。
16日、時事通信が10〜13日に実施した11月の世論調査が発表された。内閣支持率は前月比5.0ポイント減の21.3%と政権発足以来最低を更新。2012年に自民党が政権復帰してからの最低でもある。支持率が30%を割り込むと危険水域と言われるが、10%台突入も目前だ。不支持率は7.0ポイント増の53.3%だった。
「時事通信の世論調査は個別面接方式で信頼性が高い。ここまで国民から見放された岸田首相は、来年の総裁選で再選されて長期政権を築くという野望もついえて、迷走の末に退陣することになりそうです。時事の調査で特筆すべきは、内閣支持率だけでなく、自民党の政党支持率も19.1%にまで下がったこと。これまでは、何があっても自民党政権を支持すると言われていた3割の岩盤支持層が崩れている。このまま不人気の岸田首相を支え続けていれば、自民党自体も支持を失っていく可能性が高いので、ポスト岸田を見据えた自民党内の動きが活発になってきました。高市経済安保相が急に勉強会を立ち上げたのが象徴的です。現職大臣が公然と首相に弓を引くような動きをすることは異例ですが、それだけ今の自民党はガバナンスが利いていない。末期的です」(本澤二郎氏=前出)
自民党内の主流派と非主流派の権力闘争という不毛
人気取りの減税策も不発で、岸田は総裁選再選に向けて模索していた年内の解散を断念。もっとも、本人が公に宣言したわけではなく、第一報は「政権幹部」の話として解散先送りが報道された。岸田に解散はさせない──。外堀を埋められたのだ。解散権を封じられた首相は、もはや死に体である。
そういうタイミングで、閣僚の高市が「『日本のチカラ』研究会」を立ち上げた。15日の初会合の参加者は13人。総裁選出馬に必要な推薦人20人にも満たない「高市殿の13人」だが、総裁選をにらんだ足場づくりなのは歴然だ。
岸田と距離がある非主流派の菅前首相や二階元幹事長も、党内重鎮と会合を繰り返し、揺さぶりをかけている。
「菅さんや二階さんの手中には“小石河”と呼ばれる総裁候補のカードがある。来年の総裁選で小泉元環境相、石破元幹事長、河野デジタル相の誰かを担いで、権力中枢に返り咲く戦略を描いているでしょう。高市さんも、夢物語ではあるが保守票をまとめて総裁選で勝ち抜く戦略を描いている。通常の総裁選なら、党員投票の比重が大きいので国民人気が高ければ勝てる可能性があります。それを阻止しようと蠢いているのが麻生派・茂木派・岸田派の主流3派で、岸田首相の再選が無理なら、来年の総裁選前に退陣して両院議員総会で次の総理総裁を決めることを画策するでしょう。両院議員総会なら、党員票は関係なく国会議員だけで次の総裁を選べる。主流派が結託して、権力を掌握し続けることも可能です。岸田首相がいつ、どうやって辞めるかに焦点が移っていくのではないでしょうか」(自民党ベテラン議員)
誰も国民のほうを向いていない
年内解散断念の報道が合図のように、大メディアの「ポスト岸田」報道も増えてきた。次の首相に誰がふさわしいのか、石破元幹事長や小泉元環境相、河野デジタル相、茂木幹事長、上川外相などの名前が挙がる。世論調査では誰がトップだとか、ワイドショーでも馬柱よろしく写真を並べ、あーでもないこーでもないとやっているが、そんなバカげた政局情報に何の意味があるのか。
「内閣支持率や政党支持率の下落は政治不信の表れで、問題が続出する自民党の自浄作用が問われている。それなのに、総選挙の顔になるとか、どの派閥が権力を握り続けるとか、相変わらず自分たちの思惑だけで動いているのが今の自民党です。誰も国民の方を向いていない。わが国の危機に向き合わず、内輪の権力闘争に明け暮れて、次の神輿に虎視眈々なのです。こんな自民党政治は制度疲労を起こしているとしか言いようがない。心ある自民党議員の中には『国民のため、わが国の未来のためにいったん下野した方がいい』と言う人もいます。自民党内の論理でポスト岸田を選び政権をタライ回ししていても、国民生活は決してよくならない。政治不信が高まるだけです」(政治ジャーナリスト・山田厚俊氏)
野党第1党の立憲民主党は、泉代表が「5年で政権交代」と言っているが、国力衰退が著しい日本の現状は、そんな悠長なことを言っていられる状況ではないだろう。
国民生活を顧みず、私利私欲で動く政権与党。国会議員以前に社会人としての良識を持ち合わせていない政務三役。民主主義は風前のともしびだ。このままでは、日本の底が抜けてしまう。
野党としては、次の総選挙は国民に不人気な岸田のままで戦いたいという思惑もあるのだろう。だから臨時国会での追及も手ぬるいのだが、岸田を“温存”させたところで、選挙で負けそうになれば、自民党は新しい総理総裁を選んで臨む。たとえ党内で嫌われていようが、国民人気の高い石破でも、初の女性総理で話題になる上川でも、選挙に勝てればいいのだ。それほど自民党の権力への執着はすさまじい。
国民のために働く気があるなら、野党はいまこそ本気で政権交代を目指さなくてどうする。外交は対米追従、国政無策の岸田政権が続けば混迷は深まる一方だ。
大メディアも社会の木鐸を気取るなら、政局報道を垂れ流している場合ではないだろう。腐敗しきった自民党政権が続くことが国民のためになるのか? いま求められているのはポスト岸田ではない。自民党政権の腐敗を断ち切り、この国を立て直すには政権交代が絶対に必要だ。
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