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※2023年11月15日 日刊ゲンダイ1面 紙面クリック拡大
※紙面抜粋
※2023年11月15日 日刊ゲンダイ2面
※文字起こし
続くイスラエルの空爆で、倒壊した居住建物から負傷者を救出するパレスチナ民(C)ロイター
全身灰にまみれながら、必死にがれきをかき分け肉親を捜す人々。血だらけで泣き叫び、空を仰ぐ子供たち。昼夜問わず飛び交う無数のミサイルと響き渡る銃声。白煙を上げて崩れ落ちる建物……。
イスラム組織ハマスが実効支配するパレスチナ自治区ガザに対するイスラエルの激しい空爆と地上侵攻のニュース映像を見ていると、「天井のない監獄」といわれたガザ地区が今や、「地獄そのもの」に変わったと言っても過言ではない。
イスラエル軍は13日も、ガザ市最大規模のシファ病院の周辺などでハマスと激しく交戦。同市のアルクッズ病院の入り口から同軍を銃撃した21人を殺害したと発表した。
激戦が続くガザ北部では複数の病院がイスラエル軍に包囲されているとみられ、AFP通信によると、ガザ保健当局者は同日、ガザ北部で全ての病院が「稼働停止」の状態になったと主張。シファ病院の院長は、中東の衛星テレビ局アルジャジーラに対し、電気や水が不足し、人工透析の機材、酸素供給装置も攻撃などで壊れて機能していないとして、「もはや病院ではない」と訴えた。
同病院ではすでに未熟児7人と集中治療室の患者27人が死亡したといい、パレスチナ赤新月社も、アルクッズ病院の患者らは水も食料もなく、取り残されているとX(旧ツイッター)に投稿。
人道危機の深刻さは増すばかりだ。
ジェノサイドに近い攻撃に正当性はない
イスラエル政府の高官は欧米諸国などと会談した際、「民間人の被害は最小限に抑える」「人道支援する」と説明したと報じられていたが、欺瞞だったとしか思えない。
民間人に対して南部地区への避難を促しながら、南部の街も容赦なく攻撃。アルジャジーラによると、南部ハンユニスでは12日から13日にかけて住宅地が攻撃を受け、30人以上が死亡。巻き込まれた建物には、ガザ北部から逃れてきた避難民らが身を寄せていたというからむちゃくちゃだろう。
世界保健機関(WHO)の報道官は英BBC放送に「シファ病院の周囲では遺体が放置されているが、埋葬もできない。病院は機能せず、ほぼ墓場だ」と嘆き、国連パレスチナ難民救済事業機関(UNRWA)のガザ責任者も13日、Xに「燃料が搬入されないため、ガザでの人道活動はあと48時間で停止する」と投稿。
病院であろうが救急車であろうが、お構いなく大量のミサイルで袋叩きにするイスラエルの姿勢は、無差別な大量虐殺(ジェノサイド)と同じで、明確な国際法違反ではないのか。
世界各国でイスラエル非難の声が強まっているのも当然で、今こそ存在感を発揮するべきなのがG7(先進7カ国)議長国である日本の役割だろう。岸田首相だって、今年1月に訪米した際、会見で「G7が結束して法の支配に基づく国際秩序を守り抜くため連携していくことを確認できた」などとエラソーに言っていたではないか。
ところが岸田は「イスラエルが国際法に従って自国や国民を守る権利を有することは当然」などと言うばかり。「世界のリーダー」を気取って「法の支配」「国際秩序を守り抜く」と叫んでいたクセに、ガザでの国際法違反には国会答弁すらしないというダブルスタンダードだから呆れてしまう。
元外務省国際情報局長の孫崎享氏がこう言う。
「国連決議で120カ国が人道的休戦を求めたことから見ても、世界の潮流は即時停戦であり、インドネシアの大統領さえも『ガザでの残虐行為はやめろ』と声を上げている。フランスのマクロン大統領も、ハマスのテロ行為は非難しつつも、ジェノサイドに近いイスラエルの攻撃に対して正当性はない、と明確に発言しているわけで、日本政府も人道的な視点から独自声明を出すことはできるはず。このまま何もしなければ、世界は『日本は相変わらず米国に追従しているだけの国』と見られるでしょう」
長期政権による自民党議員の質の劣化、驕りがすべての問題の根源
もっとも岸田政権がイスラエルの虐殺を傍観しているのは、米国の顔色をうかがっているだけが理由じゃないだろう。
外交に手を付ける暇がないほど、内政がメタメタだからだ。
とりわけ、チンピラ政務三役をめぐる対応は後手後手処理と弁明ばかり。
岸田は9月発足の第2次再改造内閣について、「適材適所」と胸を張っていたものの、10月20日に臨時国会を召集して以降、同26日に山田文科政務官(当時)が女性問題、同31日に柿沢法務副大臣(同)が選挙違反事件への関与でそれぞれ辞任に追い込まれ、4度にわたる税金滞納が発覚した神田財務副大臣も13日更迭となった。
政務三役のクビは、この3週間足らずで3人目。岸田政権では昨年も閣僚4人が辞任しているが、再び「辞任ドミノ」を繰り返すことになったわけだ。
「任命責任を重く受け止めている。国民におわびを申し上げなければならない」
岸田は13日夜、記者団にこう言っていたが、神田の税金滞納が報じられたのは8日だ。法律を制定する国会議員であり、税をつかさどる財政担当の財務副大臣が、よりによって税金滞納を繰り返し、当局から何度も差し押さえされていたなんて言語道断。常識的に考えれば即刻クビが当たり前で、議員辞職でも不思議ではない。それなのにダラダラと判断を引き延ばし、右往左往していたのだからクラクラする。
岸田自身が総理大臣として適材適所じゃない
ガザで繰り広げられている惨劇のニュースの後、バカげた人事で右往左往している岸田政権の様子が報じられると、国民の多くは「何やってんだか、この国は」と暗澹たる思いを抱いているに違いない。
岸田自身が総理大臣として適材適所じゃないのだから、政務三役が適材適所であるはずがないのだが、最大の問題は、岸田の任命基準が、個々の能力や「日本にとってベストな布陣」ではなく、「自分が総理を続けるためのベストな布陣」で人選していることだろう。
次期総裁選で自分のライバルになりそうな人は閣内や党の要職に起用して動きを封じ、各派閥の意見を尊重するだけ。つまり、身体検査もヘッタクレもないわけで、これじゃあ税金滞納の“常習者”が財務副大臣になってしまうわけだ。
打ち出す政策だって、総理を続けるために国民ウケを狙ったキャッチフレーズ優先だから、中身も財源もいい加減になる。
異次元の少子化対策に取り組むと言いながら、財源は後回し。唐突に「税収増を国民に還元する」「所得税、住民税の定額減税を実施する」と言い出したかと思えば、還元の財源を問われると「すでに使って原資なし」と説明するトンチンカン。一事が万事、この調子で、物価高に苦しむ国民生活のことを本気で何とかしたいなどと、これっぽっちも考えてはいないのだろう。
さすがに国民だってバカじゃない。こんな愚鈍首相では日本はダメになる。衰退すると強い危機感を抱いた表れが、支持率2割台の実相なのだ。
政治評論家の小林吉弥氏がこう言う。
「岸田首相にはこの国をどうしたいのか、どうするべきなのか、といった展望も構想もない上、国民が今、何を求めているのかということを全く理解していない。定額減税が来年6月に実施されればボーナスと一緒になって国民も大喜び、なんて考えは有権者をバカにしているとしか思えません。もっとも、これは岸田首相だけの問題ではなく、長期政権による自民党議員の質の劣化、驕りがすべての問題の根源にあると思います」
国民も「解放」を求めるべく、自民党政治に鉄槌を下す時だ。
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