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未解決の旧J社解体的出直し
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2023年11月 1日 植草一秀の『知られざる真実』
ジャニーズ社が創業者であるジャニー喜多川氏の長年にわたる性犯罪行為を認定し、被害者への謝罪、救済ならびに補償の方針を示すとともに、企業の解体的出直しを図る考えを公表して2ヵ月の時間が経過する。
この間、同社は9月と10月に記者会見を開いてきた。
しかし、10月の記者会見ではNGリストの存在が発覚し、同社に対して厳しい質問をする記者を排除する対応を同社が取っていたことが判明した。
同社に求められる対応は明確である。
1.過去の性犯罪事案の事実検証
2.被害者に対する謝罪・救済・補償を必要十分なかたちで遂行すること
3.重大犯罪行為を実行してきた旧ジャニーズ社の解体
4.メディアとの癒着体制の解消
5.過去と完全に決別する新体制の確立
ところが、ジャニーズ社の対応はこれらの要請される対応とはかけ離れたものであった。
問題の重大性をまったく認識していないと批判されて反論できない水準のものだった。
9月の会見ではジャニー喜多川氏の名を社名にそのまま残す考えを示した。
また、ジャニー喜多川氏の親族であるジュリー藤島氏が唯一の代表取締役として新企業に残存する方針も示した。
また、ジャニー喜多川氏と長期にわたり親密な関係を有し、自身についても性暴力事案が指摘される東山紀之氏が新企業の社長に就任する案も示された。
東山氏は9月の会見で自身の性暴力事案について明確に否定することすらできなかった。
10月の会見で同社は同社を被害者の救済・補償のみを行う企業として存続させ、芸能プロダクション・エージェント企業を新たに設立する方針を示した。
そして、存続する救済補償専業企業、ならびに新設する芸能プロダクション・エージェント企業の双方の経営トップに東山紀之氏と井ノ原快彦氏を充てる方針を示した。
しかし、この会見で東山紀之氏はジャニー喜多川氏の性犯罪事案を長期にわたり「見て見ぬふりをしてきた」と述べた。
「喜多川システムの共犯者」とも言える人物が新企業の経営トップに就任することの妥当性について強い疑念が生じて現在に至っている。
旧ジャニーズ社はスマイルアップ社に社名変更されたが、現在存在するのは被害者の救済・補償だけを行う企業である。
ところが、この新企業の公式サイトには所属タレントの氏名、グループ名などが掲載され、同社が被害者の救済・補償だけを行う企業であるとの方針と矛盾する現実も観察されている。
10月2日の会見から1ヵ月後に芸能プロダクション・エージェント企業を発足するとされたが、1ヵ月が経過した11月1日現在、新プロダクション・エージェント企業の詳細は示されていない。
こうしたなか、新企業トップに就任する予定だった東山紀之氏が社長就任を辞退したと伝えられている。
また、新企業がエージェント機能に特化する企業に変わるとの方針も確認されていない。
新企業からの離脱も自由であるとされたが、離脱を表明したタレントに対する遺留工作が行われているとも伝えられている。
被害者に対する補償も具体的にはまだ明らかにされていない。
NHKは同社タレントとの新規の契約を行わない方針を示している。
NHKは同社の補償の具体的進展、企業活動の刷新などの現実を確認する方針を示している。
年末の紅白歌合戦にも同社所属のタレントを出演させない方針が確認されている。
ところが、これに対して一部テレビ放送企業が同社所属タレントの新規起用を表明している。
フジテレビは10月27日の定例社長会見で、港浩一社長が年末の音楽特番「FNS歌謡祭」で旧J社所属グループ「嵐」の相葉雅紀氏を司会で起用する方針を表明した。
また、明石家さんま氏と旧J社所属の木村拓哉氏による年始特番「さんタク」についても「放送をする予定」とした。
その理由について同社は
「先方もいろんなところで改革をし、人権問題に取り組み、新しい会社を作り動いている。うちとのいろんな話し合いが行われているという状況を見て、総合的に判断した」
と説明。
日本テレビも旧J社所属の桜井翔氏を2024年4月以降も情報番組NEWS ZEROで引き続き起用する方針を明らかにしている。
フジテレビも日本テレビも過去検証番組を放送したが、検証と言える代物でない。
かたちだけの自称「検証番組」を放送して、問題を済ませてしまおうとの姿勢が鮮明だ。
このような重大問題が明らかになった際、徹底的に事実を検証し、必要十分なけじめをつけなければ、問題は風化し、類似した問題の再発を招く。
「日本的あいまい処理」を率先して示しているのがテレビキー局各社である
このような杜撰体質が日本社会の質的劣化の根本原因である。
市民はテレビキー局の杜撰体制を容認してはならない。
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