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※2023年10月26日 日刊ゲンダイ1面 紙面クリック拡大
※紙面抜粋
※2023年10月26日 日刊ゲンダイ2面
※文字起こし
とうとう身内からも…(代表質問をする世耕弘成参院幹事長。岸田首相=後方)(C)日刊ゲンダイ
社会風刺コント集団「ザ・ニュースペーパー」が、25日の東京新聞朝刊の「紙上LIVE」で、岸田首相のニックネームが「ミスター検討使」や「増税メガネ」から、今は「カニ総理」に変わったとして、その理由についてこう皮肉っていた。
<支持率がめちゃくちゃ低く、横ばいですから。何をするにも前にも後ろにも進むことができず、ただ泡を吹いてます>
迷走ぶりが際立つ最近の岸田を評したのだろうが、言い得て妙とはこのことだ。
岸田は9月末に「成長の成果である税収増等を国民に適切に還元する」「物価高に苦しむ国民に成長の成果を適切に還元」などと繰り返し、近くまとめる経済対策に「減税策」を盛り込むかのような口ぶりだったが、どんどん後退。と思っていたら、唐突に「所得税減税」をぶち上げる。
首相として一体何がしたいのか。どこの誰を見て政治をしているのかがサッパリ分からない。これでは各メディアの世論調査で支持率が過去最低を更新するのも当然。世論の反応を見て、ひとりで慌てふためき、右往左往しているとしか見えない姿はまさに「カニ」そのものだ。
世耕の辛辣発言は党内に流れる危機感の表れ
その迷走ぶりに呆れたのだろう。25日の参院本会議で始まった各党代表質問では、身内である自民党の世耕参院幹事長が岸田に対して異例とも言うべき苦言を呈していた。
「残念ながら岸田首相の決断と言葉については、いくばくかの弱さを感じざるを得ない」
「還元という言葉が分かりにくかった。自分で決断するのではなく、検討を丸投げしたように国民に映った」
「還元という言葉がひとり歩きして、給付なのか減税なのかさまざまな臆測を呼び、世の中に対しても総理が何をやろうとしているのか、全く伝わらなかった」
「総理大臣としての決断と言葉が弱い」「検討を丸投げ」「何をやろうとしているか全く伝わらない」……。いやはや、これでもかとばかりにケチョンケチョンだ。
「総理ご自身がじっくりと考えて決断し、水面下の根回しも入念に行って(略)その発言により政権の政策の方向性を確定させ、何としてでも国民の支持を得るという覚悟で、政治家としての言葉で発信していただきたい」
世耕はこう締めくくっていたが、遠回しの表現を要約すると、岸田について「根回しもできず、方向性もいい加減で、国民の支持を得るという覚悟もない」と言っているわけで、首相としての資質もボロクソにこき下ろしていたわけだ。
政治評論家の本澤二郎氏がこう言う。
「世耕氏の言葉はかなり辛辣だったわけですが、おそらく『このままだと政権は持たない』と言いたかったのでしょう。叱咤激励というよりも危機感に近く、自民党内がそれだけバタバタしている表れとも言えます」
「経済オンチ」の無策で日本経済は今以上に転落する
もっとも世耕だって国民生活のことを真剣に考えて岸田に厳しいことを言ったわけじゃないだろう。世耕が所属する自民党「安倍派」は昨夏の銃撃事件で安倍元首相が死去して以降、我こそが安倍の後継だと言わんばかりの激しい権力闘争が今も続いている。世耕としては、少しでもチャンスがあれば存在感を発揮したいわけで、岸田に対する「異例の苦言」の背景には、党内の“内輪モメ”もあることは容易に想像がつく。
一方、世耕に吊るし上げられた「増税メガネ」の岸田は、「デフレ脱却を確実なものにする一時的な措置として、国民の可処分所得を直接的に下支えし、物価高による国民の負担を緩和するといった私の考え方をしっかり伝えていく」「自ら決断し、国民の皆さんに直接発信することを心掛けてきたが、本国会でも経済政策や物価対策を中心にしっかりと議論を重ね、国民の皆さんに丁寧に説明してまいりたい」などと答えていたのだが、その表情に厳しさや険しさは感じられず、薄笑いを浮かべていたから唖然呆然だ。
というのも、世耕は最大派閥に所属しているとはいえ、領袖でも何でもない。そんな軽量級にここまで腐されているのに、よくぞ、へらへらと笑っていられるものではないか。
アベノミクスで日本は「美しい国」ではなく「貧しい国」に
IMF(国際通貨基金)の最新予測によると、2023年の日本の名目GDP(国内総生産)はドルベースで前年比0.2%減の4兆2308億ドル(約633兆円)となり、人口が約3分の2のドイツ(8.4%増の4兆4298億ドル)に抜かれ、これまで維持してきた3位から4位に転落する見通しとなった。
「美しい国」を掲げた安倍政権が「経済を取り戻す」などと大風呂敷を広げ、市場にカネをばらまく「アベノミクス」を10年以上も続けてきた結果、日本の経済は「取り戻す」どころか、どんどん沈み、「貧しい国」にまっしぐら。
まさに「悪夢」であり、岸田が本気で「経済」の立て直しや国民生活のことを考えるのであれば、真っ先に取り組むべきは「アベノミクス」からの脱却だろう。
物価高対策であれば消費税減税が必要だし、高止まりのガソリン代を支援するのであれば、元売りに対する補助金ではなく、トリガー条項を発動して減税すればいい。やるべきことや考えることはいくらでもあるのに、出てきた対策が1年限定の所得税減税という意味不明の愚策だから、もはやヤキが回ってきたとしか思えない。
所信表明演説で「経済」を連呼していた岸田は、17カ月連続で国民の実質賃金が下がり続けている状況をどう受け止めているのか。能天気に「全ての国民が幸せを実感できる社会」「明日は今日より良くなると信じられる時代を実現」などと言っている場合じゃないのは中学生でも分かるだろう。野党が岸田を「経済オンチ」と呼ぶのも当たり前だ。
埼玉大学名誉教授の相澤幸悦氏(経済学、金融論)はこう言う。
「岸田首相が打ち出す経済対策の意味が分かりません。防衛費増税を決めながら減税と言い出すこともチグハグですが、増えた分の税収を他に回すのであれば、まずは借金返済や将来のための少子化対策でしょう。思い付きの策というのか、政府が目指している方向性が見えないのです。このままだと日本経済は今以上に転落しかねません」
「経済オンチ」の無策で国民が右往左往するかもしれないなんて冗談ではない。
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