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【速報】自民補選「1勝1敗」で岸田首相は年内解散断念へ…「減税メガネ」への転換ならず
https://gendai.media/articles/-/118110
2023.10.22 現代ビジネス編集部
情勢調査通りの惨敗
「岸田首相は、2連勝したうえでの解散総選挙が頭にあった。長崎もギリギリの勝利だったので真っ青になっているはずだ」
こう話すのは、官邸関係者のひとりだ。参院徳島・高知選挙区と衆院長崎4区の補欠選挙が10月22日に投開票された。自民党候補は参院徳島・高知では惨敗、長崎4区では辛勝という結果に終わり、岸田文雄首相にとっては薄氷の選挙戦となった。
現代ビジネスでも10月20日に報じたように、今回の補選では情勢調査の生数字で、すでに自民党の大苦戦は予測されていた。
午後8時にメディアが「当確」を打ち始めたのは、参院徳島・高知選挙区。自民党は元高知県議の西内健氏を擁立したが、元衆議院議員の経験があり、旧民主党にも所属していた、無所属の広田一氏が一騎打ちを制した。
衆院長崎4区の開票は、立憲民主党の衆議院議員、末次精一氏と自民党の金子容三氏が一進一退の戦いだった。午後10時を過ぎて、ようやく金子氏に「当確」のランプがともった。
10月14日、徳島入りした岸田首相
「岸田首相は補選で2連勝したうえで、所得税減税を打ち出して支持率を一気に上昇させるという戦略だった。だが長崎4区で負けてしまい、計画も水の泡だ」
こううなだれるのは、岸田派の国会議員のひとりだ。
臨時国会が10月20日にスタートした。支持率低迷にあえぐ岸田首相は、「所得税減税を含め、党における指示をした」と所得税の「減税」をにおわせる発言をした。
現代ビジネスが入手した自民党の《新たな総合経済対策に向けた提言 部外秘》という文書がある。10月17日に自民党の政務調査会が出したものだ。
《日本経済は、歴史的転換点を迎えている》という書き出しではじまるこの文書は、
《最優先にすべきは、物価高への対応である》
《成長の成果を、国民にしっかりと還元していかなくてはならない》
《足元の物価高から国民生活を守るための対策》
などと訴えている。
岸田首相、最終日の現地入りを断念
だが「減税」を思わせるものは《大胆な経済対策の策定と迅速な執行》というくだりくらいで、これまでの経済対策とそう変わったものはない。
「岸田首相は年内の解散総選挙をずっと頭に入れていた。そこで、所得税減税をまず打ち出す。だが低所得者にとって、所得税減税では、何も恩恵はない。そうなれば、所得税減税と現金給付がセットになる。
事実、岸田首相は政策の責任者、萩生田光一政調会長に、このふたつをセットで検討するように、指示を出している。だから、所得税減税については、根回しをしていたにもかかわらず、支持率アップのために『自分で発表する』ことに固執し、周囲にもかん口令を敷いていた」(前出・官邸関係者)
また、岸田派の国会議員もこう証言する。
「実は選挙戦最終日、長崎4区に岸田首相が再度、現地の応援に入るという予定も当初はあった。だが情勢が厳しいので、総理が行って万が一負けたら格好がつかないとのことで、中止になりました。
『増税メガネ』とSNSで揶揄されていることを非常に気にしている岸田首相は、このさき一気に挽回すべく、所得税減税、カネをばらまく現金給付を打ち出し、ここで解散総選挙を重ね合わせれば、勝てるという目論見があった。しかし、補選の危うい結果で、ダメになってしまった」
そして、連立与党の公明党の幹部も渋い顔でこう語る。
「うちも2つの選挙区で推薦を出したのに、参院ではよもやの敗戦。山口代表が岸田首相と並んで応援したという異例の支援体制だったのに、自民党はどうなっているのか……」
公明党の推薦が遅れた理由
岸田文雄首相は10月14日に、徳島で連立を組む山口那津男代表と一緒に選挙カーにあがった。
「公明党の山口代表と私が選挙で一緒に応援をするというはそんなにない。いかに西内健さんに期待しているかと徳島に乗り込んできた」
雨中の中、岸田首相は訴えた。岸田首相は山口代表を頼りにしなければならないほど、徳島・高知選挙区が追い込まれていることを把握していた。ただ西内氏には、早くから公明党の推薦が出ていた。
だが一方の衆院長崎4区で、公明党が金子氏に推薦を出したのは公示日前日の10月9日というギリギリのタイミングだった。翌日10日の出陣式でようやく「推薦状」が手渡されたのだ。
この推薦の遅れには伏線があった。
公明党が、衆議院の解散総選挙となれば「東京都内の小選挙区では、自民党に協力しない」と反旗を翻したのは、今年5月のこと。9月になってから、なんとか公明党が撤回し、自民党と「合意文書」の署名に持ち込んだ。
「自公連立も長くなれば永田町だけではなく、地方でもゴタゴタはある。それが長崎4区に飛び火していたのです。世襲3代で『世襲メガネ』とからかわれている金子候補ではどうなのかという思いでした。自民党の長崎4区の中のゴタゴタも重なりましたが、投票率が低かったのでなんとか公明党の推薦と組織で勝ったということ。自民党も長崎4区でうちの大切さを思い知ったはずです」
(前出・公明党の幹部)
自民党の政務調査役を長く担当してきた政治評論家の田村重信氏はこう語る。
「2つの補選は国政選挙ですから、まさに岸田政権に直結し、大きなダメージとなります。2連勝して当然という補選だったわけですから。すでに1週間前には東京都議の補選で、2議席の立川市選挙区で自民党が議席をとれず、都民ファーストと立憲民主党に議席をおさえられた。
地方と東京、どちらも厳しいという世論がはっきりしたわけです。もともと、解散総選挙は春から夏にかけてと考えが岸田首相にはありました。それが内閣改造してからと様子を見ていたら、この惨状です。減税政策を打ち出したところで、年内はもちろん、年が明けてもしばらく解散総選挙はできないでしょう」
補選でこけてしまった岸田首相は、「増税メガネ」から「減税メガネ」への転身は大失敗のようだ。
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