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※紙面抜粋
※2023年9月16日 日刊ゲンダイ2面
※文字起こし
また“ポンコツ”大臣が続出するのか(C)共同通信社
さすがに岸田官邸は「厳しい数字だ」「ご祝儀がないのは想定外だ」と真っ青になっているらしい。政権浮揚を狙って、岸田首相が練りに練って実施した内閣改造。ところが、支持率はまったくアップしなかった。いわゆる「ご祝儀」はゼロだった。
読売新聞が行った世論調査によると、内閣支持率は35%と、8月末の前回調査と同じだった。不支持率も50%と動かなかった。
さらに、日経新聞の調査でも、内閣支持率は42%と前回調査から変わらず横ばい。逆に、内閣を「支持しない」は1ポイント上昇し51%になった。
内閣改造をしたのに、支持率がピクリともしないのは珍しいのではないか。バカみたいなのは、政権浮揚を狙って人事に手をつけたのに「岸田辞めろ」の声を大きくしてしまったことだ。
「どのくらい首相を続けてほしいか」の質問(読売)に対し、「総裁任期が切れる来年9月まで」が、54%(5月調査56%)と最も多く、「すぐに交代してほしい」が27%(同15%)だった。「すぐに交代」が約2倍に膨れ上がっているのだ。
「支持率がアップしないのは当たり前です。官房長官や幹事長といった骨格を維持したために刷新感に乏しいうえ、新入閣の11人は派閥順送り、滞貨一掃組だから見たことも聞いたこともない顔ぶればかりです。国民の支持が集まるはずがないでしょう。しかも、サプライズもなかった。事前に『石破茂が入閣するのでは』といった情報も飛びかったが、大物の起用も、民間人の起用もなかった。そのうえ、旧統一教会と関係のある議員を4人も入閣させている。本来なら支持率が下落しておかしくないですよ」(政治ジャーナリスト・角谷浩一氏)
唯一のサプライズが「ドリル優子」こと小渕優子・元経産相の党選対委員長への抜擢なのだからどうしようもない。
立正大名誉教授の金子勝氏(憲法)はこう言う。
「今度の内閣改造は、岸田政治を象徴していると思う。一国のトップとして何をしたいのか、メッセージがまったく見えてこない人事です。これでは国民も希望を感じられないでしょう。岸田首相は『変化を力にする内閣』と命名していますが、今回の人事でハッキリしたことは、変化ではなく、むしろ古い自民党に回帰しているということです。国民の支持よりも、各派閥の実力者を取り込むことで、自民党総裁に再選されることを最優先している。女性閣僚を5人に増やしたことだって『これで支持率がアップするだろう』という自民党的な発想がミエミエです。支持率がアップしなかったのは、さすがに国民も見抜いているということでしょう」
「極右政治家」を防衛相に就けた恐怖
こんな顔ぶれでは、内閣支持率は下落していくに違いない。派閥順送りでメンツを決めたから、“ポンコツ”が紛れ込んでいる可能性が高いからだ。
実際、前回の改造も派閥順送りで決めたせいで、トンデモ大臣が続出、わずか2カ月の間に4大臣が交代する「辞任ドミノ」に発展した。
なかでも危ういのは、木原稔防衛相だ。自民党内でも「極右政治家」として有名な男である。2015年に、自民党タカ派議員が名を連ねる「文化芸術懇話会」の呼びかけ人となり、発足を主導。右翼議員が集まった会合では、「マスコミを懲らしめるためには広告収入をなくせばいい」「(沖縄の新聞2紙は)左翼に乗っ取られている」と、トンデモ発言が飛び出している。
沖縄の戦没者追悼式では、当時の安倍首相が「帰れ」などとヤジを浴びたことについて、根拠もないのに「明らかに動員されていた」と発言。猛批判にさらされた。大衆が権力に盾突くのは絶対に許さない、というタイプだ。極右組織「日本会議」の国会議員懇談会の役員に名を連ねたガチガチの右翼思想の持ち主である。
こんな人物を防衛相に就けて大丈夫なのか。さすがに、国民の不安を招くのではないか。政治評論家の本澤二郎氏はこう言う。
「岸田首相には、極右政治家の木原氏を防衛相に据えることで保守層のご機嫌をうかがうという意図もあるのだと思う。しかし、タカ派大臣には、多くの国民が不安を抱くでしょう。とくに自衛官を家族に持つ国民はどう感じるか。恐らく、木原大臣も軍拡路線の持論を前面に押し出してくるはずです。木原氏の防衛相就任は、岸田内閣の火種になる可能性があります」
加藤新大臣から早くも「政治とカネ」
早速、新任大臣から問題が噴出している。
本紙の調べで、当選3回で抜擢された加藤鮎子こども政策相に「政治とカネ」の問題が発覚した。加藤が代表を務める資金管理団体が、家賃名目で実母に政治資金を還流させていたのだ。金額は17〜21年の5年間で計900万円にも上る。
これは、昨年末、辞任に追い込まれた寺田稔元総務相と秋葉賢也元復興相とまったく同じ構図だ。
寺田、秋葉の2人の関連政治団体も、親族に家賃名目で政治資金を還流させ、大炎上。野党から「ファミリービジネスだ」と猛批判を浴び、2人とも事実上、更迭されている。
このままでは、加藤も進退を迫られるのではないか。早くも永田町では「辞任第1号は加藤さんか」と囁かれているほどだ。
「就任後、初の会見で加藤さんは、緊張からか目が泳ぎ、言葉に詰まる場面が目立っていました。『異次元の少子化対策』は、岸田内閣の一枚看板だから、国会答弁も多いはず。野党の追及に耐えられるのか、と不安の声も上がっています」(永田町関係者)
盛山正仁文科相の資質にも疑問符がついている。旧統一教会の解散命令を請求する立場にありながら、教団との接点が指摘されている。
さらに、過去、教育現場に「圧力」をかけていたことも分かっている。盛山自身の母校である私立灘中学校が採択した歴史教科書について「なぜ採択したのか」と、同校に連絡していたことが17年に報じられたのだ。従軍慰安婦について「お詫びと反省」を表明した「河野談話」が掲載された教科書に、“イチャモン”をつけた格好だ。
14日の会見では、教員不足の解消について「正直、名案はない」と口にしている。たとえ困難でも教員の働きやすい環境をつくり、教員不足を解消するのが文科相の務めなのに、最初から「名案はない」とは、ヤル気がないのがアリアリだ。これでは、国民から総スカンを食らい、またぞろ「辞任ドミノ」が始まってもおかしくない。
支持率低下でもはや解散も困難
それでも岸田周辺からは「10月解散」の声が飛んでいる。実際、今回の内閣改造が「年内解散」を想定したものなのは間違いないだろう。選挙に弱い議員を閣僚につけているからだ。
文科相に就いた盛山は前回、選挙区(兵庫1区)で敗れて比例復活だった。岸田派の議員だけに、選挙前に箔をつけさせようとしたのではないか。
伊藤信太郎環境相は、選挙区の10増10減によって選挙区が減り、次回は宮城4区で立憲民主党の安住淳・国対委員長と激突することになる。安住は選挙に強いだけに苦戦必至だろう。
立憲民主党の岡田克也幹事長も「10月中の解散の可能性はかなり高い」と警戒している。スキャンダルまみれで解散総選挙の邪魔になるとみられた木原誠二官房副長官も、官邸から外に出した。
しかし、この支持率では、もはや早期の衆院解散は難しいのではないか。
「内閣改造は、岸田政権が支持率をアップさせる数少ないチャンスだった。たとえば、マイナンバー問題の不手際で国民の信頼を失っている河野大臣を更迭すれば、支持率もアップしたでしょう。でも、チャンスを見送ってしまった。このままでは、菅前首相のように解散を打てないまま退陣という可能性も高いように見えます」(金子勝氏=前出)
人事に失敗し、一気に政権が弱体化することは、ままあることだ。この内閣改造が、岸田政権の命取りとなるのではないか。
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