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※紙面抜粋
※2023年9月6日 日刊ゲンダイ2面
※文字起こし
政策も国民もないがしろ政権(岸田首相)(C)日刊ゲンダイ
チラチラと内閣改造の記事が出始めている。
5日の読売新聞は朝刊1面で<内閣改造 「来週にも」><首相、与党幹部に11〜13日有力>と題した記事を掲載した。
岸田首相は5日午後、インドネシア・ジャカルタで開かれる東南アジア諸国連合(ASEAN)関連首脳会議に出席するために政府専用機で羽田空港を出発。インド・ニューデリーで9、10日に行われる20カ国・地域首脳会議(G20サミット)にも参加し、11日に帰国する予定で、記事によると、<外遊先で人事構想を練り、刷新感のある体制を早期に発足させ、新たな経済対策を含めた政策遂行の環境を整えたい考えだ>という。
出発前に開かれた党役員会に出席した岸田は、記者団に対し、「(改造人事は)適材適所に尽きる。タイミングはまだ決まっていない」などと素っ気なく語っていたが、これにはワケがある。
読売など複数メディアの報道によると、2日に投開票された国民民主党の代表選では、2022年度の政府予算に賛成し、自公との政策協議を進めるなど、与党寄りの姿勢が目立つ玉木代表の続投が決まった。これを受け、自民党内では国民民主との連立協議入りを探る動きが浮上。
同党の茂木幹事長も5日の会見で、「(国民は)安全保障、憲法改正など、わが党の方針と一致する部分が多い。前向きな政策提言には誠実に対応し、さまざまな取り組みを前に進めたい」などと発言していたから、岸田としては今後の「自公国政権」誕生の可能性を見極めるため、含みを持たせたのだろう。
内政、外政ともに課題は山積している
いずれにしても、岸田内閣の改造人事は早ければ今月中旬、遅くとも下旬には行われる公算が大きいが、こうした動きから見えてくるのは、国民不在の権力亡者の姿だ。
内閣改造の狙いは政権浮揚や局面の打開だ。「政権の基盤強化を図るため」「内閣支持率の低下を改善するため」「政党内派閥のバランスの考慮のため」といった理由が挙げられるが、果たして今、そんなことをしている場合なのか。
国民の多くが不安を抱き、反対しているマイナンバーの問題はちっとも解消されていない上、自民党を離党した秋本真利衆院議員の風力発電絡みの収賄疑惑や、岸田側近の木原官房副長官をめぐる違法デリヘル問題、「観光旅行」と世論批判が噴出した自民党女性局のパリ視察旅行、ガソリンに代表される資源高、あらゆるモノの物価高と減り続ける実質賃金、福島第1原発からの処理水海洋放出をめぐる日中関係の亀裂……など、内政、外交ともに課題は山積しているのだ。
本来であれば内閣改造など二の次で、岸田はこうした問題に真正面から取り組むべきではないのか。それなのに政策も有権者のこともソッチノケ。ただただ政権維持したいという自分勝手な思惑、都合だけで動き、そのためには野党にも平気で手を突っ込み、国民民主を揺さぶる自民の露骨な姿勢は、心ある有権者からみれば卑しいにも程があるだろう。
政治アナリストの伊藤惇夫氏はこう言う。
「党役員任期は1年のため、手をつけなければならない事情はある。とはいえ、国民からみれば、今、人事をやっている場合なのかと思うでしょう。(国民生活を考えて)ごく一部にとどめるのか。それとも解散含みでサプライズを狙うのか。岸田政権の姿勢が問われます」
権力維持だけが目的の史上最悪の政権
狡猾な自民から「連立入り」と「閣僚ポスト」という“鼻薬”を嗅がされて浮足立っている国民民主も浅ましい。玉木は記者団に「(連立入りの)具体的な話はない」「一般論で言えば政策の一致や選挙調整など、ハードルは非常に高い。まずは自分たちの力をつけたい」と話していたが、ハードルうんぬんの問題ではないだろう。
そもそも国民民主の支持者は、同党が自民ではない野党だから選挙で投票したのだ。仮に連立入りしたとしても、自民が国民民主に選挙区を明け渡すことは絶対にあり得ない。子供でも分かるのに揉み手で与党入りするとなれば、それこそ支持者に対する重大な背信行為、裏切りだ。そして、そんな無定見な自民にすがり続け、まさに下駄の雪と化した公明も自壊まっしぐらだ。
5年で43兆円という防衛費の拡大を認め、敵基地攻撃能力の保有や武器輸出さえもスルー。戦後日本が積み上げてきた平和主義を簡単に捨て去り、安倍政権以上の露骨なタカ派と言われ、やりたい放題の岸田政権にされるがままだ。もはや誰が見ても、今の公明を“平和の党”と思わないだろう。
目くらましと保身しか頭にない岸田政権の姿勢は国民愚弄と表現する以外、何というのか。
悪代官さながらの悪辣政治を踏襲する岸田
政治家は本来、国民のために働くのが仕事だ。間違っても権力にしがみつくことが仕事ではない。
ところが第2次安倍政権以降の政治家、とりわけ与党、自民党の政治家は違う。そろって、絶対多数で権力を独占し続けていれば、「国民に嘘をついても、繰り返しても構わない」「白を黒と言いくるめることができる」「異論は許さない」という悪代官さながらの思考だ。
この悪辣な政治姿勢を踏襲し、さらに悪い方向に動いているのが岸田なのだから、国民生活が良くなるはずがない。
おそらく今度の内閣改造だって、見るもおぞましい姿になるに違いない。岸田の保身と悪代官たちが政権を維持するためだけにつくられる人選になるのは容易に想像がつくからだ。そして、それは大マスコミだって分かっているはずなのに他人事のように政局を垂れ流すだけ。立憲や共産などの野党が選挙協力し、候補者調整すれば、途端に「野合」などと大騒ぎで批判的に報じるくせに、与党の場合はダンマリを決め込んでいるから何をかいわんや。「ザ・野合」ともいうべき「自公国連立」の可能性だって、何ら批判もせずに報じている。
大マスコミはジャニーズ事務所の性加害問題を長年、「黙認」していたとして批判の声が出ているが、政権与党に対する報道姿勢も同じ。権力の監視役どころか、走狗と言ってもいいだろう。
元参院議員の平野貞夫氏はこう言う。
「岸田政権は国民生活をまるで考えておらず、権力の座にしがみつくためなら何でもする。連立話もそう。政権維持のためであれば、国民民主だけでなく、維新も取り込むとの話もあるし、突然、出てきた旧統一教会(世界平和統一家庭連合)の解散報道も、目的は被害者救済ではなく、政権浮揚に利用したいから、との見方もある。いずれにしても権力維持だけが目的の史上最悪の政権です」
大マスコミは政治でも「沈黙」報道を続けるのか。
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