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盗っ人猛々しいと言われる
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2023年9月 3日 植草一秀の『知られざる真実』
汚染水問題の出発点は東電がフクシマ原発事故を引き起こしたことにある。
「原発は絶対に安全である」、
という「原発絶対安全神話」が流布されてきたがフェイクだった。
「絶対安全」であるはずの原発が重大事故を引き起こした。
原発重大事故はフクシマ以外にも先例がある。
米国スリーマイル島原発事故、ウクライナ・チェルノブイリ原発事故が存在する。
したがって、「原発絶対安全」はウソである。
東電福島第一原子力発電所はステーションブラックアウト=全署停電に陥り、原子炉核燃料は溶融した。
原発メルトダウンである。
メルトダウンする過程で原子炉格納容器内の圧力が高まれば格納容器は大爆発を引き起こす。
全署停電に陥ったため格納容器内圧力を低下させる「ベント」を実施できなかった。
それにもかかわらず、原子炉大爆発が生じなかったのは原子炉に重大な欠陥があって空気が外部に漏れていたためだった。
原子炉にあってはならない重大な欠陥があったために原子炉大爆発を免れたという笑えない現実がある。
4号機の使用済み核燃料プールが干上がり、膨大な放射性物質が大気に放出されることも時間の問題だった。
しかし、これもいくつかのあってはならない欠陥、考えられない奇跡が重なり、最悪の事態が回避された。
こうした奇跡が重ならなければ、日本は少なくとも東日本全体を失っていたと考えられる。
原発は「絶対安全」ではない。
極めて深刻な脆弱性を抱えている。
原発が何らかの理由で電源を失うだけでフクシマ事故は再現される。
とりわけ、日本の場合、巨大地震が原発を襲うリスクが高い。
日本の原発は巨大地震の揺れに耐えられる設計基準で建造されていない。
フクシマ事故を引き起こした現実、そして、こうした事情がありながら、日本政府は原発を廃止しない。
岸田内閣は原発全面稼働に向けて突き進んでいる。
福島第一原発の核燃料はメルトダウンして地下に潜り込んだ。
その全貌は把握されていない。
このむき出しの溶け落ちた核燃料がデブリと呼ばれる塊として地下に存在する。
この燃料デブリに接触した放射能汚染水が福島原発に蓄えられてきた。
しかし、タンクが一杯になったので岸田内閣は海洋投棄を決めて実行した。
このことに対する反対が極めて根強い。
反対の理由は福島汚染水が燃料デブリに直接接触した水を大量に含んでいること。
諸外国原発のトリチウム処理水とは特性が異なる。
より重大な理由は汚染水の処理を東電が取り仕切り、外部からのチェック体制が取られていないこと。
貯蔵されている汚染水の約7割において、トリチウム以外の12の核種が取り除かれておらず、基準値を上回っているとされる。
東電はトリチウム以外の核種を取り除き、トリチウムについても基準値を下回る水準で海洋投棄するとしている。
しかし、東電の説明をそのまま信用できないと考える人が多く、これが海洋投棄反対の最大の根拠になっている。
実際、東電はこれまで原発関連の問題で改ざんと隠ぺいを繰り返してきた。
処理後汚染水海洋投棄において改ざんと隠ぺいが繰り返されない保証がない。
中国、韓国、香港の人々が心配するのは無理もないこと。
日本国内でも事情をよく知る人ほど海洋投棄に強く反対しているという現実がある。
ところが、日本のメディアは日本の責任を棚に上げて、処理後汚染水海洋投棄に反対する中国等の反応を総攻撃している。
彼らを総攻撃する前に、日本政府の対応、東電の対応に問題がないかどうかを謙虚に振り返るのが先決だ。
海洋投棄する処理後汚染水のデータチェックを外部に全面開放するべきだ。
東電任せで情報開示がなければ疑われるのが当然と言える。
処理後汚染水を流す側の対応に厳しく対処せず、海洋投棄を不安視する海外の人々の声を総攻撃するのは「盗人(ぬすっと)猛々(たけだけ)しい」と言うほかない。
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