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ガソリン高騰、過去最高値に 補助金廃止で200円台も 店頭価格の4割が税金 ガソリン税撤廃し生活と産業守れ
https://www.chosyu-journal.jp/shakai/27412
2023年8月27日 長周新聞
値上がりし続けるガソリン価格
日常生活に欠かせないガソリンの高騰が止まらない。帰省シーズンの7日に180円をこえた店頭現金価格(全国平均)は、2008年8月の過去最高値に近づきつつある。原油価格は若干の落ち着きを見せているが、記録的な円安の影響で仕入価格が上昇しており、それが食品、日用品、光熱費など生活にかかわるさまざまな物の値上がりに追い打ちをかけている。今年に入り石油元売りへの補助金を段階的に引き下げていることも13週連続の価格上昇に影響しており、9月末の補助金廃止で200〜210円まで上がることが見込まれている。岸田政府はなお、減税だけはしない姿勢を貫いており、国民生活の厳しさを眺めているだけだ。
増税しか考えぬ岸田政府
資源エネルギー庁が毎週発表している給油所小売価格調査で、8月14日(月)のレギュラーガソリンの現金価格は全国平均で181・9円だった。前週比で約1・6円の値上がり、前月比では約7・9円の値上がりだ。地方局別に見ると、北海道局(180・9円)、関東局(182・5円)、中部局(181・3円)、近畿局(181・4円)、中国局(181・4円)、四国局(182・4円)、九州局(183・6円)、沖縄局(187・2円)と、東北局を除くすべてで180円を突破した。
軽自動車で考えると、3年前の2020年8月(135・5円)は30gで満タンにして4065円だったが、181・9円となると5457円になる。一回につき約1400円の値上がりだ。これも「全国平均価格」なので、フルサービスのガソリンスタンドになると、「すでに現金価格は190円になっている」というところも少なくない。3gそこらしか入らない原付で680円だったと驚く声もある。無意識に給油しているとあっという間に1万円が飛んでいくことから、「通勤距離は変わらないのに、月2回給油すると妻から怒られてしまう」とサラリーマンの男性は嘆く。突然愛車の燃費がよくなるわけでもないし、通勤などで自家用車を使わざるを得ない人たちは節約のしようがないのが現実だ。「缶コーヒーを買うか、1本我慢して10`走るか」という世知辛い選択を迫られている。
ガソリン価格が過去最高を記録したのは、原油先物市場に投機資金が流入して価格急騰を引き起こした2008年。最高値である同年8月4日のレギュラーガソリンの店頭価格は185・1円で、現在その水準に迫っている。政府が「燃料価格激変緩和対策事業」として石油元売りに出している補助金を勘案すると(実際にどれほどの効果があったのかはだれにもわからない)、実際の価格はすでに過去最高水準といえる。
国内配送を担うトラックが使う軽油価格も高騰し続けており、8月14日時点で1g161・4円とかつてない水準になっている。
現在、原油価格は若干の落ち着きを見せており、日本のガソリン高騰の大きな要因は円安だ。
価格高騰の要因は円安
政府は「燃料価格激変緩和対策事業」として2022年1月から石油元売り各社(エネオス、出光、コスモ石油など)に補助金を支給してきた。ガソリン、軽油、灯油、重油に2023年は航空機燃料も加わった。予算は約6兆2000億円だ。
当初はレギュラーガソリン価格170円を基準価格として、それをこえた分を最大5円の範囲内で元売り各社に支給するというものだった。その後、基準価格は168円に引き下げられている。上限も2022年3月に25円に、同年4月に35円へと引き上げ、さらに35円を超過した分についても2分の1を支援するという内容で支給がおこなわれてきた。資源エネルギー庁は、この補助金がなければ昨年6月のガソリン価格は215円をこえる水準になったとしており、最大で41・9円の抑制効果があったと宣伝している【グラフ@参照】。今年に入り、原油価格が落ち着いてきたとして、補助額を毎月減少させる仕組みを導入しており、9月末での打ち切りが決まっている。経済産業省などの言い分としては、円安に補助し続けることはできないのだそうだ。
ガソリンスタンドの関係者は異口同音に「このまま補助金がなくなると、10月以降は200〜210円まで上がるのではないか」と話している。家計を切り盛りする女性たちのなかで、「食品も日用品も、ちょっとした楽しみのビールも値上がりし、これから台風など災害の影響で野菜も値上がりしていくのではないか。今、補助金を打ち切るという判断が理解できない」という声があふれている。
これだけとられる税金
ただ、実際にはこの補助金が本当に適切なものであったのかは疑問視されている。燃料価格の高騰が直撃してきたトラック運送業界の関係者は、「4円値上がりするところが1円の値上げに抑制されたということだが、実際のところ“4円の値上げ”が適正なのかどうかは元売りにしかわからない。元売りに補助金を出した分すべてが、末端の負担軽減になっているかどうかは疑問」と指摘していた。2023年度のガソリン税の税収は2兆2000億円(揮発油税+地方揮発油税)と見込まれていることを考えると、この補助金事業には3年分近くのガソリン税収がつぎ込まれたことになる。そのもとで石油元売り大手は黒字をたたき出しており、それだけの財源があるならば、減税をした方がより直接的に消費者の負担軽減につながることが当初から指摘されてきた。
日本の場合、「ガソリンが高い」といっても、実のところその4割が税金だ【図参照】。たとえば8月7日のレギュラーガソリン価格180・3円(1g)で考えると、ガソリンの本体価格はわずか107・4円だ。それに本来の道路整備財源としてのガソリン税(揮発油税+地方揮発油税)28・7円に、「特例税率」分の25・1円が上乗せされて161・1円になる。それに石油石炭税20・4円、温暖化対策税0・76円が加わり、さらにこれら税金も含んだ額に消費税10%(16・3円)がかかる二重課税の構造になっていて、消費者が支払う金額が180・3円までになるのだ。
軽油引取税も本来1g当り15円だが、特例税率として17・1円上乗せされて32・1円になっている。本体価格のみを見ると、軽油よりもレギュラーガソリンの方が安いのだが、税金が積み上げられて高値になる仕組みだ。
もともと終戦直後のガソリン代は税金が十数円だったため50円を切っていた。その後の増税を加味しても、1970年代までガソリン代は1g50円台を維持していた。しかし、1956年に軽油引取税(道路を使わない船やユンボなどは免除)が、1974年にガソリン税が「道路整備財源の確保」を掲げて導入された。このとき、道路整備の財源が不足していることを理由に、1g53・8円の「暫定税率」が適用されたが、小泉改革のもとでガソリン税が「一般財源」に移行(2009年)され、その意味がなくなったにもかかわらず、なぜか「暫定税率」は「特例税率」に名前をかえて維持され続けている。
2012年からは石油石炭税に加えて「温暖化対策税」が創設された。当初、石油製品1g当り2・29円だったのが、2014年4月から1g当り2・54円に、2016年4月から2・8円に引き上げられた。
そのうえに消費税が加わる。消費税は1989年の3%に始まり、1997年に5%、2014年に8%に引き上げられ、2019年10月から10%に引き上げられた。
とくに二重課税の幅が大きいレギュラーガソリンは、本体価格が上がり、税金額が増えると、それにともなって消費税額も増加する構造が放置され続けており、国民生活は厳しくなるが、税収は増加するという異常な状態になっている。
こうして、2022年度の国の一般会計の税収は約71兆1373億円と過去最高を更新した。コロナ禍にもかかわらず2020年度から3年連続での過去最高の更新だ。
なかでも消費税は23兆792億円と、3年連続で所得税収を上回り最大の税目となっている。いかに消費税が過酷な税金であるかをあらわしているが、過去最大の税収なら、国民生活が厳しいおりに減税が検討の俎上にのぼるのが当然だ。
燃料高騰時の減税の仕組みとしてはすでに「トリガー条項」が存在している。これは指標となるガソリン価格の平均が連続3カ月にわたり1g160円をこえた場合、ガソリン税や軽油引取税の上乗せ部分の課税措置を停止する制度だ。2010年4月に導入されたが、翌年「東日本大震災の復興財源確保のため」として凍結されている。この凍結を解除して、「特例税率」分を減税するだけで、180・3円のレギュラーガソリンは一気に153円ほどに値下がりする。
さらに税金に消費税がかかる二重課税を解消して、消費税は本体価格のみにかかるようにすれば150円ほどまで値下がりする計算になる。6兆円をつぎ込んで最大で41・9円抑制したというが、年間2兆円のガソリン税収が減収になるだけで常に30円ほど抑制できるとすれば、その方がより簡潔で効果があるのは明白だ。
実質賃金はマイナス続き
内閣府が15日に発表した4月から6月までのGDP=国内総生産の速報値は、成長率が年率換算でプラス6・0%と伸びたというが、その半分以上を占める個人消費はマイナス0・5%。白物家電の販売減少で「耐久財」がマイナス3・3%、食料や日用品などの「非耐久財」もマイナス1・9%と、消費者が財布の紐を締めていることが顕著にあらわれた。8割超の企業が賃上げを実施してなお、実質賃金は15カ月連続のマイナスで、物価上昇には追いついていない。
内需の落ち込みは著しいなかで、さらなるガソリン価格の高騰が待ち受けており、「減税せよ」の声は高まっている。
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