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※紙面抜粋
※2023年8月16日 日刊ゲンダイ2面
※文字起こし
薄っぺらい「不戦の誓い」/(C)共同通信社
15日は岸田政権が安全保障政策を大転換してから初めて迎えた終戦の日だった。敗戦から78年。新型コロナウイルスの5類移行を受け、政府主催の全国戦没者追悼式の参列者数は昨年からほぼ倍増の1855人となったものの、台風7号による交通機関への影響などから10府県の遺族が欠席を余儀なくされた。事前に参列の意向を示した遺族は80歳以上が4割超に上り、戦没者の妻は2人のみ。父母の参列は2010年が最後。月日の経過とともに、あの戦争を知る人は少なくなっている。
「プーチンの戦争」が1年半前に勃発すると、待ってましたとばかりに飛びついたのが岸田首相だった。「ウクライナは明日の東アジアかもしれない」と煽り、昨年末に安保関連3文書の改定を閣議決定。世界3位の軍事大国化につながる防衛費倍増、国是の専守防衛を形骸化する敵基地攻撃能力の保有を決めた。いずれも米国の意向に沿った動きだ。岸田は「安倍さんもやれないことをやった」と高揚感を隠しきれなかったというが、2回目の参列となった追悼式の式辞は、完コピと言っていいほど昨年と同じ内容。今年もアジア諸国への加害責任には触れず、ケロリとこう言っていた。
「戦争の惨禍を二度と繰り返さない。この決然たる誓いを今後も貫いてまいります。いまだ争いが絶えることのない世界にあって、わが国は、積極的平和主義の旗の下、国際社会と手を携え、世界が直面するさまざまな課題の解決に、全力で取り組んでまいります」
行動と発言のすさまじい乖離。これほど薄っぺらい「不戦の誓い」は聞いたことがない。立正大名誉教授の金子勝氏(憲法)は言う。
「アジア諸国を侵略した先の大戦を反省し、新しい国づくりをする。それが戦後日本の歩みでしたが、『戦後レジームからの脱却』を掲げた安倍元首相が再登板し、ひっくり返してしまった。ABCD包囲網で経済的に追い詰められ、苦境を打破するためのやむにやまれぬ戦争だったというロジックをじわじわと復活させた。岩盤保守層が好むそうした路線を菅政権も岸田政権も踏襲。歴史に目を背けているから、おわびの言葉はついぞ出てこない。誰の心も打たない形式的なスピーチに終始してしまうのです」
平和国家が78年で先祖返り
自民党を支える右派が憧憬する明治維新から、敗戦までが77年。戦後はこれよりも長くなった。平和国家として地歩を固めるべきところに、醜い先祖返り。今年の終戦の日が戦後もっともおぞましい形となったのは、安保3文書の改定によって、この国の歴史の流れが一変したからだ。駐米大使などを歴任した元外交官の佐々江賢一郎氏(日本国際問題研究所理事長)も、政権寄りの読売新聞(15日付朝刊)でこう言っていた。
「昨年12月に国家安保戦略など3文書を改定して防衛政策のかじを切ったことは、戦後史に残る出来事だった。日本の進むべき道は極めて明確になりつつある。ウクライナに対しても、経済的な支援だけでなく、これまで自制してきた殺傷力のある武器の供与を含めた支援を可能にすべきかどうかを議論する時期に来ている」
折しも、防衛装備品の輸出ルールを定めた「防衛装備移転三原則」の運用指針の見直しが加速している。自公与党の実務者協議は先月上旬に論点を取りまとめ、秋に再び協議を始めるとしていたが、先月末に岸田が早期実施を指示。23日にも協議が再開されるという。そもそも日本は憲法の平和主義に基づき、輸出を原則禁じる「武器輸出三原則」を1970年代までに確立したが、第2次安倍政権下の14年に輸出を一部容認する「防衛装備移転三原則」を閣議決定。それでも対象国を安保分野で協力する米国などに限定し、装備品についても「救難」「輸送」「警戒」「監視」「掃海」の5類型に限ってきた。殺傷能力のある装備品の輸出を認めない根拠となっていることから、自民は与党協議で「撤廃」を主張。再開にあたって政府の考え方も示される予定で、緩和にカジを切ること必至だ。
「抑止力や反撃能力は不可欠」「大方の国民が是」
防衛費倍増や敵基地攻撃能力の保有について国民に問うことはなく、国会審議もロクになされていない。この上、岸田はなぜ戦争を助長しかねない武器輸出を急ぐのか。それもこれも、バイデン米政権によるお墨付きを確かなものにするためだ。18日に米ワシントン郊外の大統領専用の山荘「キャンプデービッド」で開かれる日米韓首脳会談の手土産にしようというのである。米国は3カ国会談を毎年定例化し、日米同盟と米韓同盟の一体運用ものませる腹でいる。あわせて行われる日米首脳会談では、極超音速兵器を迎撃する新型ミサイルの共同開発で合意する見通しだという。米国が敵視する中国が「ゲームチェンジャー」といわれる新兵器の世界最先端技術をもっているとされ、開発を急ぐロシアや北朝鮮にも対抗するためだ。
ロシアの核の脅しに直面しているウクライナが日常を取り戻す兆しは見えない。平和の尊さを噛みしめるべき時に、およそ似つかわしくない不穏なニュースがあふれ返っている。大マスコミは無批判に垂れ流し、政権の都合の悪いことはすべて沈黙。終戦の日の社説で読売はこう書いていた。
〈こうした脅威に対処するには、平和を唱えるだけでなく、相手に侵略や攻撃を思いとどまらせるような抑止力や反撃能力を持つことが不可欠である〉
〈政府は、防衛力の強化が平和を守るために必要な措置であることを丁寧に説明し、着実に実行しなければならない〉
自民応援団の産経新聞にいたっては、虚実ないまぜだ。
〈中国、北朝鮮の脅威の高まりやロシアのウクライナ侵略をみて、日本人の安保意識は東西冷戦期や平成の時代と比べ、格段に向上した。岸田政権は昨年12月、安保3文書を閣議決定した。反撃能力の保有や5年間で防衛費を43兆円にする方針が決まり、大方の国民はこれを是とした〉
ハト派は行くところまで行く
軍拡政権にメディア翼賛化の不気味は、いつか来た道を彷彿とさせる。
「大本営発表に加担した新聞は報道責任を直視して出直したはずなのに、戦争のお先棒を担いだ自覚が薄れてきている。自民党というのは振り子理論で動いていて、タカ派政権が倒れたらハト派首相を押し出して世論を欺き、コトを前に進める。岸田首相はその役割を全うするため、行くところまで行きかねません」(金子勝氏=前出)
米国はサプライチェーンから中国を切り離す動きも強めている。製造業強化を狙ったインフレ抑制法を使って、北米で組み立てられたEVなどに限って購入時に最大7500ドル(約100万円)の税額控除を受けられるようにし、中国排除を鮮明にしている。EVの要である電池の世界シェア6割を中国企業が握る中、日本勢を含むメーカーは取引を回避せざるを得ない。米国の尻馬に乗った経済ブロック化、軍事同盟の深化が泥沼の対立を招く懸念は高まる一方だ。
政治評論家の本澤二郎氏はこう言った。
「麻生副総裁が台湾で〈戦う覚悟が抑止力になる〉とか言っていましたが、あの人はマンガの世界で生きている。戦端が開かれたとして、麻生一族の人間は誰一人として戦地に赴かないし、命を危険にさらすこともない。軍需産業の利権にぶら下がる連中は高みの見物なのです。ウクライナで徴兵逃れをめぐる汚職が摘発されましたが、戦争には腐敗がつきもの。国民にとっても、国家にとってもプラスになることはひとつもない。岸田政権がマイナカード取得を強要するのは、防衛増税を嫌がる国民に首輪をつけるため。財源の見通しも立たないのに少子化対策を打つのは、戦闘員を確保するため。根底にあるのは、戦時中の『産めよ増やせよ』です。すべてが憲法違反なのです」
ボーッとしていたら、国民はまたゆでガエルにされる。
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