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※紙面抜粋
※2023年8月10日 日刊ゲンダイ2面
※文字起こし
YOUは何しに台湾へ?(あいさつする麻生太郎副総裁、台湾の蔡英文総統と)/(C)共同通信社
「長崎を最後の被爆地に」──。原爆投下から78年。6日の広島に続き、9日、長崎で「原爆犠牲者慰霊平和祈念式典」が営まれた。台風接近に伴い、一般市民の参列も見合わせ、会場は例年の平和公園から屋内施設に変更。規模は縮小されたが、核廃絶と平和への願いは変わらない。
鈴木史朗市長は今年4月の就任後初の平和宣言で「核抑止に依存していては、核兵器のない世界を実現することはできない」と訴え、世界のリーダーたちに「今こそ、核抑止への依存からの脱却を勇気を持って決断すべきだ」と呼びかけた。
6日の広島の平和宣言で「核抑止論は破綻していることを直視すべきだ」と訴えた松井一実市長に続き、核抑止の考えを否定するメッセージとなった。両市長の平和宣言が例年以上に踏み込んだ内容になったのは、先のG7広島サミットで岸田首相が主導した「広島ビジョン」へのアンチテーゼに他ならない。核抑止を正当化したことに対する抗議表明である。
それでも、岸田は広島の式典のあいさつで、サミットの成果を強調。参列を見送った長崎の式典では、ビデオメッセージで「サミットの確かな成果を土台として、核軍縮の進展に向けた機運をより一層高める」と、おべんちゃらを言うのみ。両市長が求める核兵器禁止条約の批准どころか、オブザーバー参加にも言及せず、昨年のあいさつに比べて核廃絶への決意はトーンダウン。被爆地の怒りを聞き流し、すっかり馬耳東風を決め込んだ。
わざわざ台湾まで赴き中国を挑発
「被爆2世」の鈴木市長は平和宣言で、当時16歳で被爆した谷口稜曄さんの体験を紹介。6年前に他界した谷口さんは、原爆の熱線で体が焼けただれた「赤い背中の少年」の被写体として知られる。生前に残した次の言葉を鈴木市長は読み上げた。
「過去の苦しみなど忘れ去られつつあるようにみえます。私はその忘却を恐れます。忘却が新しい原爆肯定へと流れていくことを恐れます」
今の世界を予見したような言葉だが、「原爆」を「戦争」と置き換えてもいい。その懸念を屁とも思わない暴言が、台湾を訪れた自民党の麻生副総裁から飛び出した。しかも、ちょうど広島・長崎両平和式典の間、8日午前のことである。
蔡英文総統との会談に先立つ講演で、麻生は台湾海峡で軍事演習などを行う中国の動きに警戒感を表明。「最も大事なことは、台湾海峡を含むこの地域で戦争を起こさせないことだ」としたうえで、こう力説した。
「日本、台湾、米国をはじめとした有志の国に、非常に強い抑止力を機能させる覚悟が求められている。戦う覚悟だ」──。続けて「金をかけて防衛力を持っているだけではダメ。いざとなったら使う。台湾海峡の安定のために使う明確な意思を相手に伝えて、それが抑止力になる」とまで言ってのけた。
「戦う覚悟」とは極めて挑発的かつ好戦的な言葉だ。麻生の暴言について、中国外務省は9日の報道官談話で「日本の政治家に台湾問題であれこれいう資格はない」と強く批判。在日中国大使館も「身の程知らずでデタラメだ」などとする報道官談話を発表した。政権与党の幹部がわざわざ台湾まで出かけ、中国にケンカを売るとはマトモじゃない。
忘却の罪が新たな戦争を引きつける
大体、戦争を起こさせないために「戦う覚悟」が必要とはムチャクチャな理屈だ。核兵器廃絶のために核抑止論を肯定する「広島ビジョン」にも通じる倒錯したロジックである。法大名誉教授の五十嵐仁氏(政治学)はこう指摘する。
「中国が生意気だから威嚇し、力で抑えつけようとする発想は戦前の『暴支膺懲』(横暴な支那を懲らしめよ)の論理と同じ。そもそも日中双方には『互いに協力のパートナーであり、互いに脅威とならない』との合意を重ねてきた経緯がある。その外交原則を一方的に破棄するような暴言で、本来なら日本政府も許してはいけない。気になるのは『非常に強い抑止力』なる表現。核による抑止力を指すのであれば『原爆の日』に核廃絶を誓う広島や長崎の人々を冒涜しています。二重三重に誤った大暴言です」
1972年の断交後、現職副総裁として初という異例の訪台に踏み切った麻生。中国挑発の背景には、緊張が高まる台湾海峡情勢を念頭に岸田政権の姿勢を内外に示す狙いもあったようだ。同行した鈴木馨祐政調副会長は9日夜のBSフジの番組で麻生の発言は「政府内部を含め、調整をした結果だ」と説明。となると、麻生暴言は岸田とタッグの確信犯である。
このタイミングで麻生に言わせたのは、次の衆院選をにらみ、保守層の支持を引きつけたいとの思惑も透ける。昨年12月には萩生田政調会長、世耕参院幹事長も、それぞれ訪台。蔡総統と会談した。2人は安倍派の所属。岩盤支持層に支えられた安倍元首相の側近だった。安倍は生前「台湾有事は日本有事」と言い切り、日台関係を重視していた。その安倍とは麻生も盟友関係だった。
萩生田、世耕、麻生は岸田政権でも要職にある。LGBTなど性的少数者への理解増進法などを巡り、保守層の離反が指摘される中、安倍に近い3人の相次ぐ訪台は「衆院選に備え、安倍シンパの岩盤支持層を政権につなぎとめるため」と踏む政界関係者は多い。
必要なのは慰霊碑に刻まれた「不戦の覚悟」
「加えて今月17日からの岸田首相の訪米を控え、バイデン政権に忖度。中国と『戦う覚悟』を示したかったのでしょう」と言うのは、立正大名誉教授の金子勝氏(憲法)だ。こう続ける。
「昨年末に安保関連3文書を改定し、防衛費倍増や敵基地攻撃能力の保有にカジを切ったのも、27年までに中国が台湾に侵攻するという米国の仮説に従ったもの。時を同じくして、中国軍のハッカーが20年秋に機密情報を扱う日本の防衛ネットワークに侵入していたと米紙が報じたのも、においます。中国の脅威をあおるだけあおり『専守防衛』の破棄に飽き足らず、殺傷能力のある武器輸出は現行ルールでも可能と言って『武器輸出三原則』は完全消滅。また、核抑止拡大や核共有政策の必要性を強調し、唯一の被爆国としての『非核三原則』すら踏みにじる。今の政権は『全ての道は中国との対立に通じる』で、戦後の平和の礎を担った原則を一切合切、葬ろうとしています。麻生氏の暴言は、そのための心構えを国民に植え付ける意味合いもあるのだと思います」
麻生は1940(昭和15)年9月生まれ。4歳で敗戦を迎えた。出生地は福岡・飯塚市。ほど近い北九州市・小倉地区(当時は小倉市)が、2発目の原爆投下の第1目標だったことも恐らく知っているだろう。小倉が雲に覆われていたため、第2目標の長崎が“身代わり”となったことに小倉の人々は心を痛めた。だから戦後の小倉市民と市議会は原水爆禁止運動の先頭に立ったのだ。そんな歴史的経緯を知っているなら、麻生はなぜ、あんな暴言を吐けるのか。「存じ上げない」と言うのであれば、あまりにも無知。政治家失格である。
「驚くのは、麻生氏の暴言についてメディアの批判が弱いこと。いくら頻発する暴言に慣れていようが、今回は『またか』では済まされない。戦争のリアリティーが全く欠落した『戦う覚悟』をメディアや世論まで受け入れるなら、戦前のような危うさを感じます。戦争の悲惨な体験を語り継ぐことが、平和国家の本当の『抑止力』だったのに、この国から戦争に対する想像力が失われてしまっている証拠です。やはり、忘却は『罪』です」(五十嵐仁氏=前出)
終戦記念日を前に、軍拡のためなら中国への挑発まで厭わない狂乱を放置していたら一巻の終わりだ。「過ちは繰返しませぬから」──広島の原爆死没者慰霊碑に刻まれた「不戦の覚悟」が、今こそ求められている。
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麻生氏「戦う覚悟」発言に中国が反発「身の程知らずででたらめ」 麻生氏周辺“中国が反応してるのは抑止力になった証拠”
2023/08/10 TBS NEWS DIG
3日間にわたり台湾を訪問した自民党の麻生副総裁が、「戦う覚悟を持つことが抑止力になる」と発言したことに中国が激しく反発しています。麻生氏の発言の狙いとはなんだったのでしょうか。
自民党 麻生太郎 副総裁
「戦う覚悟です。お金をかけて『防衛力』持っているだけではダメなんだ。台湾海峡の安定のために、それ(防衛力)を使うという意思、 明確な意思を相手に伝えて、それが『抑止力』になる」
きのうまでの台湾訪問中、軍事的圧力を強める中国を念頭に、「戦う覚悟」という強い言葉を使った自民党の麻生副総裁。「日本、台湾、アメリカをはじめとした有志国に強い抑止力を機能させる覚悟が求められている」と訴えました。
中国を刺激する発言ですが、“突然出た発言ではない”と麻生氏の周辺は話します。
麻生氏周辺
「外務省と相談した上での発言だ。岸田総理の口からは言えないから、麻生さんが言うべきだと判断した」
きょう、磯崎官房副長官は…
磯崎仁彦 官房副長官
「議員、政党の活動についてということでございますので、政府としてコメントすることは差し控えさせていただきたい」
一方、中国側は麻生氏の発言に激しく反発しています。
中国報道官
「身の程知らずで、でたらめを言っている」
今回の発言に、与野党からも懸念の声が相次いでいます。
立憲民主党 岡田克也 幹事長
「非常に軽率な、そして最終的には国民の命と暮らしを預かってるのは私たち政治家なので、軽々にそういったことを言う話ではない」
今月末、山口代表の中国訪問を控える公明党からも…
公明党幹部
「中国を明らかに刺激している。本来なら避けて欲しかった発言だ」
一方で、麻生氏の周辺は“狙い通りの効果が出ている”と強調します。
麻生氏周辺
「今回の麻生さんの発言で、台湾での戦争リスクは下がる。中国という国は、弱い国を徹底的に攻めるからね」
岸田総理は来月上旬、中国の李強首相と首脳会談を行う方向で調整していますが、緊張緩和となるのでしょうか。
▼TBS NEWS DIG 公式サイト https://newsdig.tbs.co.jp/
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