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2023年8月10日 06時00分
https://www.tokyo-np.co.jp/article/269153
岸田文雄首相は9日、台風接近に伴い欠席した長崎市での平和祈念式典に寄せたビデオメッセージで、核軍縮への取り組みに全力を尽くす姿勢を強調した。だが、核兵器を全面的に違法とする核兵器禁止条約や、核抑止からの脱却への道筋については、6日の広島市での式典に続いて言及しなかった。被爆地は核廃絶への具体的な行動を求めているが、深い溝は埋まらないままだ。
首相は「『核兵器のない世界』を実現するため非核3原則を堅持し、たゆまぬ努力を続ける」と説明。核軍縮の具体策については「核拡散防止条約(NPT)を国際社会が結束して維持・強化するよう訴え、取り組みを主導する」と触れるにとどまった。
一方、被爆2世の鈴木史朗長崎市長は平和宣言で、広島サミットで発表された核軍縮に関する共同文書「広島ビジョン」が肯定した核抑止論を全面的に否定。「私たちの安全を本当に守るには、地球上から核兵器をなくすしかない」と訴えた。
核抑止脱却は、広島市での平和記念式典でも、松井一実市長や湯崎英彦広島県知事が求めた。だが、政府は「核抑止力を含む米国の拡大抑止が不可欠」との立場を崩さない。
鈴木市長は「日本政府と国会議員に訴える」と前置きし、核禁条約への署名や第2回締約国会議へのオブザーバー参加も求めたが、この点についても首相が触れることはなかった。
9日に予定されていた長崎の被爆者団体と首相の面会は、月内に行われる見通し。(近藤統義)
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広島ビジョン 今年5月の先進7カ国首脳会議(G7広島サミット)でまとめられた核軍縮に焦点を当てた文書。核兵器について「防衛目的のための役割を果たし、侵略を抑止し、戦争や威圧を防止すべき」と明記し、核抑止力を肯定した。米ロ英仏中の5大国の核保有を前提とする核拡散防止条約(NPT)体制の堅持や、核兵器のない世界を「究極の目標」とすることも確認した。
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