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定例の敗戦イベントに意味再考
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2023年8月 6日 植草一秀の『知られざる真実』
78年前の1945年8月6日午前8時15分、米国は広島に原子爆弾リトルボーイを投下。
きのこ雲の下に、抱き合う黒焦げの親子、無数の遺体が浮かぶ川、焼け崩れた建物。
幾万という人々が炎に焼かれ、その年の暮れまでに14万人もの命が奪われた。
これだけではない。
米国は同年8月9日午前11時2分、長崎にプルトニウム原子爆弾ファットマンを投下。
原爆投下により長崎市の人口24万人(推定)のうち約7万4千人が殺害された。
負傷者も7万人超に達した。
1945年3月以降、米国は日本の主要都市において焼夷弾による空襲を繰り返した。
3月9日から10日にかけての東京大空襲では東京の一般市民8万4000人が殺害された。
東京だけでない。
日本全国の主要都市で焼夷弾爆撃が展開された
50万人以上の一般市民が虐殺された。
広島、長崎の原爆投下、東京大空襲を含む日本全国での空爆、民間人の大虐殺は明白な戦争犯罪、国際法違反行為である。
ウクライナ戦争でロシアの戦争犯罪を叫ぶ米国。
その米国が重大な戦争犯罪を実行してきている事実が存在する。
日本の敗戦は時間の問題だった。
しかし、米国政府は日本を最速で降伏させて戦争を終結させることよりも、二つの目的を達成することを目指して行動したと見られる。
二つの目的とは、
ソ連の影響を最小限に抑制すること、
日本降伏前に日本に原爆を投下すること、
である。
可能な限り早期に原爆を投下し、ソ連の影響力が拡大する前に戦争を終結させる。
これが米国の行動基準であったと考えられる。
1945年2月のヤルタ秘密協定で、ドイツ敗戦90日後のソ連の対日参戦および千島列島・樺太・朝鮮半島・台湾などの日本の領土処遇が決定されている。
ヤルタ秘密協定を締結したのは米国とソ連。
日ソ中立条約は1941年に締結され、有効期間は5年間だった。
ソ連が日ソ中立条約を破棄して対日参戦したことを批判する者は多い。
しかし、ソ連の行動は米ソの協議によって決定されていた。
ソ連の対日参戦を求めたのは米国である。
ソ連の行動を非難するなら、同時に米国の行動も非難する必要がある。
米国は対日戦争を終結させるためにソ連の力を必要としたが、ソ連の権益が拡大することを恐れた。
同時に原爆を実戦使用してソ連に対する優位を確立しようとした。
そのために、原爆投下と原爆投下後の早期戦争終結を目指したのである。
7月26日に「ポツダム宣言=日本への降伏要求の最終宣言」が発出された。
米国のフランクリン・ルーズベルト大統領は枢軸国のドイツ、イタリア、日本に対して無条件降伏を求めるスタンスを貫いた。
しかし、1945年4月にルーズベルト大統領は死去。
無条件降伏の内容にはあいまいな部分が存在していた。
5月7日にナチス・ドイツが無条件降伏して対ドイツ戦が終結。
米国大統領に就任したトルーマン大統領は日本の降伏を促すため「無条件降伏」の「再定義」を模索。
米国が求めるのは軍事的な無条件降伏であり、日本を災厄へ導いた軍事的指導者の影響力除去を意味するもので日本国民の絶滅や奴隷化を意味するものでないことを公表した。
しかし、日本政府はポツダム宣言を黙殺した。
その結果として広島、長崎への原爆投下が実行され、ソ連が対日参戦。
多数の日本兵のシベリア抑留などが生じる原因が創出された。
日本政府が早期に戦争を終結させていれば日本国民の犠牲ははるかに小さく済まされた。
米国の戦争犯罪を糾弾することが必要であるが、日本政府が無謀な戦争に投入し、終戦を遅らせた責任も重大である。
日本敗戦の季節が到来し、敗戦時の事象が取り上げられるが、戦争責任と戦争犯罪の事実を明らかにして適正な責任処理を行うとともに、戦争の教訓を確立しなければ歴史から学ぶことにはならない。
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