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朝日新聞のジャーナリズム精神はどこへ…「木原問題」も大々的に扱わず、それでいいのか? 週刊誌からみた「ニッポンの後退」
https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/life/327106
2023/08/06 日刊ゲンダイ
「影の総理」といわれる木原誠二官房副長官(C)日刊ゲンダイ
朝日新聞の凋落が止まらない。週刊新潮(8月3日号)によれば、かつて840万部あった朝刊発行部数は今や380万部(1月のABC調査)だという。
深刻なのは部数だけではない。2021年には約442億円の赤字を計上して、200人の希望退職者を募ったことで、エース級の記者たちがこぞって辞めていってしまった。
さらに、今夏、有望な若手が3人も同時退職するという。彼らの次の就職先は大手損保、大手人材サービス、民放テレビ局だそうだ。
中村史郎社長は、これからは朝日を稼げる会社にする、そのための柱はデジタル、イベント、不動産だと公言しているそうだ。そこにはジャーナリズムなど入る余地はないのだから、損保や人材派遣に転職するのも自然の流れだろう。
朝日にはさらに深刻な事態が起きているという。5月に朝日新聞デジタルで配信した記事が某団体の批判を受け、それに屈服する形で記事をあっさりと「削除」してしまったというのである。
記事が世に出るにあたっては、デスクや編集局長クラスも原稿に目を通しているはずだが、いったんトラブルが起きると、自分たちの責任が問われることを恐れ、記事を取り消してウヤムヤにしてしまう。「こういうモラルハザードが起こっていると、現場の記者も、官公庁や捜査機関などの発表をそのまま流す“発表モノ”など差しさわりのないことしかやらなくなります」と、元朝日記者の鮫島浩氏が同誌に語っている。
朝日よ、それでいいのか
元警部補の実名告発も(C)日刊ゲンダイ
週刊朝日の次に消えていくのは、朝日新聞かサンデー毎日ではないかと、私は思っている。
週刊文春が連続して報じている、木原誠二官房副長官の妻の捜査に木原が裏で手をまわして捜査をストップさせたのではないかという重大疑惑について、新聞、中でも朝日新聞がほとんど報じないのも、ジャーナリズムを放棄したと思えば納得はできる。だが、朝日よ、それでいいのか。
文春は、木原の妻が過去に結婚していた相手が「不審死」していたことや、“事件”から12年後に再捜査が開始されたこと、同じ年の10月9日に、木原邸に踏み込み妻に任意同行を求めたこと、その捜査が突然上からストップされたことなど数々の「事実」を、証言とその裏付けをしっかり取りながら報じてきた。
そしてついに、木原の妻を取り調べた捜査1課刑事(当時)が実名で、文春誌上で、「はっきり言うが、これは殺人事件だよ。(中略)ところが、志半ばで中断させられたんだよ。(警察庁=筆者注)長官は『事件性が認められない』と事案自体を“なかったこと”にしている。自殺で片付けるのであれば、自殺だっていう証拠をもってこいよ」と爆弾証言したのである。
岸田政権の「陰の総理」といわれている木原とその妻に関わる、政権を揺るがしかねない文春報道を無視することで、木原側を擁護していることに朝日をはじめとした大新聞は気がついていないのだろうか。否、そんなはずはない。だが、彼らにとってジャーナリズムのような飯のタネにならないことなど、どうでもいいのだ。政権中枢ににじり寄り、甘い汁をおすそ分けしてもらうことこそが新聞記者の“使命”だと教え込まれてきたのだから。
紙幅がなくなってきた。これだけは言っておきたい。今回の文春の木原追及報道は長い週刊誌の歴史の中でも歴史的快挙である。木原は「文春を刑事告訴した」と公表した。墓穴を掘ることになるのではないか。私はそう思う。(文中敬称略)
(元木昌彦/「週刊現代」「フライデー」元編集長)
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