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※紙面抜粋
※2023年8月5日 日刊ゲンダイ2面
※文字起こし
「瑕疵はない」と開き直った岸田首相(C)共同通信社
驚くべき会見だった。ここまで国民をなめきった総理会見も珍しいのではないか。
混乱がつづく「マイナンバーカード」について、岸田首相が行った4日の記者会見。国民に大きな不安を与えているのに、謝罪の言葉は、たった一言、冒頭で「国民の皆さんにおわび申し上げる」と、頭も下げずに発しただけだった。その挙げ句「これまでの進め方に瑕疵があったとは考えていない」と言い放ったのだから、ふざけるにも程があるというものだ。
世論調査で、政府のマイナンバー対応を「評価しない」が72%に達しているのに、よくも「瑕疵はない」などと口にできたものだ。まさか本気で「自分に非はない」と考えているのか。
結局、会見で打ち出したのは、現行の「健康保険証」は予定通り来年秋に廃止し、「マイナ保険証」を持たない人に交付する「資格確認書」の使い勝手を良くするというものだった。当初「資格確認書」は、本人の申請に基づいて交付し、有効期間も「1年を限度」としていた。2年後には、ほぼ全ての国民が「マイナ保険証」を保有せざるを得なくなる制度だった。
それを、本人の申請がなくても「プッシュ型」で交付するように改め、有効期間も「最長5年」に延ばすという。要するに、「資格確認書」を「現行の保険証と同じように使えるようにする」ということだ。
しかし、だったら「現行保険証」を残した方が合理的なのではないか。「資格確認書」を交付するとなると、余計な手間と経費がかかるからだ。立憲民主党の山井議員事務所の試算によると、「現行保険証」に比べ、「資格確認書」の発行コストは、被用者保険で年間241億円も余計にかかるという。完全なムダ遣いだ。
「岸田さんの会見でハッキリ分かったことは、国民のことは眼中にない、ということです。コストがかかっても現行の保険証を廃止するのは、政府のメンツを優先させたからでしょう。最大のトリックは“資格確認書”の期限を最長5年としたことです。その後、ほとんどの国民に“マイナ保険証”を持たせる方針に変わりはないということです。これほど国民が“マイナ保険証”に不安を感じているのに、耳を傾けているようには見えません」(立正大名誉教授・金子勝氏=憲法)
メンツ優先、国民後回し
それにしても、総理会見までのスッタモンダは醜悪の極みだった。当初、会見は2日に予定されていたが、どのような対策を打ち出すか、閣内がまとまらず、4日に延期している。
岸田は会見で、来秋に保険証を廃止するスケジュールを維持したが、「さらなる期間が必要と判断される場合には見直しも含め適切に対応する」と、廃止時期の延期も示唆した。内閣支持率の下落を食い止めるため、岸田本人は「廃止延期」も考えていたという。
ところが、保険証廃止の言い出しっぺである河野デジタル担当相がかたくなに「来秋廃止」を譲らず、一度決めた日程を狂わされたくない厚労省の意を受けた加藤厚労相も「廃止延期」を拒否していた。
結局、メンツにこだわる河野と加藤の強硬姿勢に押され、優柔不断な岸田は「廃止延期」を決め切れなかったという。そのドタバタ劇には、最後まで「国民のため」という発想はなかった。
岸田が「廃止延期」を決められなかったのには別の理由もある。法大名誉教授の五十嵐仁氏(政治学)はこう言う。
「廃止延期を決めれば、法改正が必要となり、秋の臨時国会はマイナンバー一色になるでしょう。野党に追及の機会を与えることになり、政権への風当たりがさらに強くなるのは間違いない。岸田首相の解散戦略にも影響を与えることになります。だから、今回は廃止時期の判断を留保したのでしょう。結局、国民とは全く関係のない自分たちの都合とメンツを優先したということです。国民不在は明らかでしょう」
メリットは政府だけ
そもそも、マイナンバーカードは、国民のためにはじまった制度じゃない。
岸田政権は「国民の利便性が高まる」などと喧伝しているが、大嘘もいいところだ。もし、国民に大きな利益があるなら、政府が普及にシャカリキにならなくても、国民は喜んでマイナンバーカードを作っているはずだ。
岸田政権がマイナンバーカードを普及させるために、“アメ玉”として2万円分のポイントを配り、“ムチ”として現行保険証の廃止を決めても普及が進まないのは、多くの国民がメリットを感じていないからだろう。実際、メリットはコンビニで住民票が発行されるくらいのものだ。
マイナンバーカード推進派は「先進国で制度がないのは日本だけだ」などとあおっているが、これも怪しい。生涯変わらない個人番号に、銀行口座、健康保険証、運転免許、母子手帳……と、あらゆる個人情報をひも付けようとしているのは、世界でも日本だけだろう。
むしろヨーロッパ諸国は、個人情報の漏洩や、なりすましを防止するために、利用範囲を狭めているくらいである。イギリスは2006年にIDカード法が成立したが、10年の政権交代で廃止している。
「マイナンバーカードの本質は、政府が国民一人一人を管理するための制度だということです。収入から財産、健康状態まで丸裸にできれば、管理しやすい。ヨーロッパの国民が、個人情報の集約を拒否しているのは、個人情報は政府のモノではなく、個人のモノだという意識が強いからでしょう」(金子勝氏=前出)
庶民の暮らしには無関心
マイナンバーカードだけじゃない。岸田自民は一事が万事、すべてこの調子だ。いつも自分たちの都合とメンツを最優先し、国民は置き去りである。象徴的なのは、アメリカの言いなりとなっている防衛政策である。
岸田が先月下旬、自公両党に、防衛装備品の輸出緩和に向けた議論の加速を指示し、殺傷能力のある武器輸出に道を開こうとしているのもアメリカのためだ。今月18日にアメリカで開かれる日米韓首脳会談の“手土産”にする腹積もりともっぱらだ。
勝手に決めた防衛費倍増も、アメリカの要望に応えたものだ。後に訂正したが、バイデン大統領に「私がキシダを説得した結果、日本は防衛費を飛躍的に増やした」と暴露されていた。
ここまで国民不在の政治を続けるのは、国民の気持ちを理解しようとしないからではないか。
「自民党の松川るい議員が、フランスのエッフェル塔の前でポーズをとる写真をSNSにアップし、批判を招いています。5年前も西日本豪雨のさなかに、自民党議員が議員宿舎で行った『赤坂自民亭』と呼ばれる飲み会の写真を投稿し、批判されていた。こうした写真を平気で表に出すのは、国民がどれだけ苦しい生活を送っているのか、考えが及ばないからでしょう。『永田町』という世界の中だけで生きているから、想像力が働かないのだと思う。こんな調子だから、岸田政権の政策が、国民に寄り添ったものにならないのは当然です。デジタル化だって、国民の利益につながるとは思えません」(五十嵐仁氏=前出)
このまま岸田政権に任せていてはダメだ。
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