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※紙面抜粋
※2023年8月3日 日刊ゲンダイ2面
※文字起こし
元凶の「アベ・クロ」コンビ(左から安倍元首相、黒田前日銀総裁、麻生副総裁)/(C)共同通信社
「ギャンブル金融政策」の修正議論は1カ月半前から出ていたようだ。
日銀が2日に公表した、6月15、16日の金融政策決定会合の議事要旨。同会合で、日銀は、長短金利操作について「運用を現時点で見直す必要はない」(委員)と、それまでの大規模緩和策の維持を全員一致で決定したのだが、一方で、一部の委員からは、大規模緩和からの出口局面における急激な金利変動を回避する必要性があるとして、「(金利操作については)早い段階で、その扱いの見直しを検討すべきだ」「出口観測が高まった際に金利が急上昇することを極力避ける必要がある」などの声が上がっていたという。
こうした意見を受け、日銀の植田総裁は見直しに伴うリスクも考慮しつつ、7月27、28日の会合で、長期金利の上限を事実上1.0%まで引き上げることを認めた「長短金利操作の運用柔軟化」に踏み切った。中途半端で恐る恐るの“修正”となったのは、一部委員の慎重論に配慮しただけではないだろう。金融政策を正常化したいが急激にやれば、市場が大暴落してしまう。黒田異次元緩和の罪は、かくも重いことを改めて思い知らされるが、そんな中、黒田前総裁が異次元緩和に踏み切る際の全議事録(2013年1〜6月の金融政策決定会合)が先月31日、公表された。この中身が衝撃なのだ。なにしろ、2年以内に2%のインフレ目標の短期決戦のはずだったのに、2年2%の根拠が議論されていない。大規模緩和は明確な根拠や理論に基づくものではなく、単なる“かけ声”だったのである。まるで戦前、理論的根拠なく、「短期決戦ならば米国に勝てる」と反対論を封じ込めた軍隊みたいだ。
中央銀行の政策決定会合で「ギャンブル発言」の異常
当時の日銀といえば、12年末の衆院選後に発足した第2次安倍政権が経済政策「アベノミクス」を掲げ、緩和論者として知られていた黒田前総裁を起用、政府とアコードを結んだ。黒田は総裁就任直後に開かれた4月3、4日の会合で、「2年程度で2%目標」を実現するために「できることはすべてやる」と宣言。国債の爆買いで資金供給量を倍増させるという「量的・質的金融緩和」を打ち出した。
政府・日銀がそろって、あらゆる手段で金融緩和を進める姿勢を企業や家計に示せば、物価は上がるという期待(インフレ期待)も喚起される──。そんな思惑だったらしいが、2年経っても物価目標は達成されず、14年10月には追加緩和を余儀なくされ、その後もマイナス金利や長短金利操作といった異例策を次々と繰り出す展開になった。今の日本経済は、こうした金融緩和の麻薬漬けから脱せず、そのうえ、安易な円安が見せかけの企業業績を膨らませたものだから、イノベーションも進まなかった。日本企業はどんどん世界から遅れを取った。
マネタリーベース(資金供給量)を2倍に増やすとなぜ、物価上昇率が2%になるのか。なぜ、2年と期限を区切りながら、続けたのか。異次元緩和の出口戦略をどう描いていたのか。
当時の黒田の考えを示す記載は公表された議事録にはみられない。当初から、「先のことは知らねえ」ということだったのだろう。
衝撃だったのは、当時の委員らが「(国債の)買い入れ強化がインフレ期待を引き上げる効果は未知数だ」「(資金供給)量を出せば期待が変わるのか、不確実性が高い」「政策効果に重大な誤解がある。ギャンブル性の強い政策となることは覚悟すべき」と、そろって大規模緩和に異論や疑問を唱えていたことだ。
大規模緩和がどれほど経済政策の常識や理論からかけ離れていたのかが分かるが、これでは、「ただの博打」と変わらない。
埼玉大学名誉教授の相澤幸悦氏(経済学、金融論)はこう言う。
「私も議事録を読みましたが、2年2%の根拠はみられませんでした。何というか、大規模緩和をエイヤッと強引に決めてしまった、そんな感じです。議事録で『ギャンブル』という言葉が出てきたことに驚きました。中央銀行の政策決定という重大な会合の場で博打を示す発言があったこと自体、当時の日銀の異常性を物語っているのではないでしょうか」
今も政府、日銀の不健全な関係が続いている
「理論的な検証が全くなく始まった。(政策の)波及経路も明確でなく、大きな問題だった」
異次元緩和が始まった当時、日銀の委員を務めていた木内登英・野村総合研究所エグゼクティブ・エコノミストが時事通信のインタビューに答えていた内容も仰天だ。
「2%物価目標導入」に強く反対していた木内氏は、その理由として、「2%は実際の物価と比べると非常に高いし、金融政策だけでは達成できない。高めの目標を導入したら、金融緩和を求める政府の介入が強まると分かっていた。安倍政権は日銀法改正もちらつかせて圧力をかけてきた」と言い、日銀が政治圧力に押し切られていたことを問題視。
大規模緩和については、あらためて「結局、異例の緩和もインフレ期待や物価の基調に影響しないと分かってきた」と振り返っていたが、国民にとっては全く冗談ではない話だろう。
デフレ脱却効果の検証もロクにせず、黒田日銀が愚策をダラダラと続けた結果、今、何が起きているのかと言えば副作用ばかりだ。国債発行残高の5割超を日銀が保有するという財政規律の歪みはもちろん、異例の低金利策を取り続けたことで米欧との金利差が広がり円安が進行。ウクライナ危機による原材料価格高が重なり、今やあらゆるモノの価格がハネ上がり、国民生活に重くのしかかっている。
大規模緩和策の失敗や国民負担増を反省しない政治家
安倍政権に突き上げられていたとはいえ、金融の専門家らが「不確実性が高い」「ギャンブル性の強い政策」と懸念を示していたにもかかわらず、「世紀の愚策」に独断専行的に突っ走った黒田日銀の姿勢は、勝てない戦争に精神論で突入した御前会議と一体、どこが違うのか。戦後、労働運動が活発だった時代、中心となって活動していた「日本労働組合総評議会(総評)」の強引な体質を揶揄する意味で「昔陸軍、今総評」という言葉がはやったが、「昔陸軍、今日銀」と毒づきたくなる。
そして、その尻拭いを国民に負わせ、誰も責任を取らず、政治家の懺悔もない世紀の無責任ぶりも戦前と同じだ。
植田日銀の政策修正について、自民党の世耕参院幹事長は会見で「緩和姿勢を変えないコミットメント(約束)が守られていくか注視したい」「植田日銀に目を光らせなければいけない」と言い、不満を口にしていたが、相変わらず中央銀行の独立性をてんで理解していない。政策修正を批判する前に、これまでの緩和策の失敗や、国民負担が増大していることについて、どう考えているのか。本来であれば、「異次元緩和策は間違いでした」「国民の生命、財産を守る政治家として失格。辞職してけじめをつけます」と言うのが当然ではないのか。
元参院議員の平野貞夫氏がこう言う。
「日銀は第2次安倍政権以降、もはや中央銀行としての独立性を失い、政治家に忖度する体質に変わってしまった。それが公表された議事録から分かることであり、『政策修正に動いた』と言われる植田総裁も、政府に対して明確にノーという姿勢はとっていません。つまり、今も政府、日銀の不健全な関係が続いていると指摘せざるを得ず、今後も問題が起きる可能性があります」
政府のためならギャンブルもいとわないという日銀の体質を変えないと、迷惑をこうむるのは国民だ。
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