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※紙面抜粋
※2023年7月19日 日刊ゲンダイ
※文字起こし
剛腕復活に期待(C)日刊ゲンダイ
「今度は最終戦のつもりでやる」──。力強い発言だ。立憲民主党の小沢一郎衆院議員が時事通信のインタビュー(15日配信)に対し、次の総選挙で政権交代を目指すと堂々と宣言してみせた。
最近の小沢は精力的な動きが目立つ。6月16日には小川淳也前政調会長らと提携し、「野党候補の一本化で政権交代を実現する有志の会」を立ち上げた。執行部などを除く衆院80人に参加を呼び掛けると、7割近い53人が結集した。
この動きに立憲の泉代表以下、執行部は方針転換。7月に入り、ずっと否定してきた共産など他党との候補者調整を進めると翻意せざるを得なかった。小沢たちの「突き上げ」が奏功した形だ。
6月21日には、小沢自らがトップを務める政策グループ「一清会」を結成。15人ほどが行動を共にし、秋の臨時国会の前後から活動を本格化させると意気込む。
小沢は2021年の衆院選で地盤の岩手3区で敗れ、比例復活に甘んじた。昨年の参院選では側近議員が相次ぎ落選し、今年2月には20年以上続けた政治塾も休止。かつての政治力に陰りが見えていたが、この間、党勢も低迷。どの世論調査でも政党支持率は日本維新の会に追い抜かれて、それが固定化しつつある。
次の選挙で野党第1党の座を明け渡すどころか、党の消滅すら危ぶまれる状況に小沢は「もう、黙っていられん」と言わんばかり。各種メディアにも積極的に出演し、過去2度の政権交代の紛れもない立役者が3度目への挑戦に意欲を燃やしている。今まで鳴りを潜めていたのが嘘のような「剛腕」復活だ。
3度目を実現しなければ死にきれない
「時事のインタビューにも〈政権交代可能な議会制民主主義をつくらなければいけない〉と答えていましたが、それは小沢氏の長年の持論です。加えて81歳、残りの政治家人生を考えれば次期衆院選は3度目のラストチャンス。もう一度、政権交代を果たさなければ、死んでも死にきれないとの思いを強めているのは間違いありません」
そう語るのは先月、小沢をインタビューしたジャーナリストの鈴木哲夫氏だ。こう続けた。
「長期政権は必ず腐敗する。社会のあちこちに政権党を中心とした利権構造ができる。腐敗の利権構造の打破には、政権交代で権力を代えるしかない。そうすればパッと雲散霧消するというのが、小沢氏の一貫した考えです。その時々の政治状況で受け手の反応は変わっても、彼の主張は数十年間ブレていない。政権交代可能な2大政党じゃなく、2つの政治勢力でもいい。政権が代わる緊張感がないと権力は国民の声を聞かなくなるから、政権交代可能な政治状況をつくるべきだとの理念も不変です」
この秋の衆院解散が取り沙汰される中、小沢は「解散は2025年参院選とダブル選挙」と見据える。来秋の総裁再選に向け、今や自民党内に岸田首相のライバルが見当たらないためだ。
2年前に総裁の座を争った河野デジタル相はマイナカード問題の失態を抱え、高市経済安保相は放送法を巡る「捏造文書」騒動や地元・奈良県知事選の候補一本化失敗で自滅。小沢は時事に「来年の総裁選前に選挙をするメリットは全くない」との見解を示した。ライバル不在のまま再選できるのに解散のリスクを負う必要はない──。いかにも彼らしい合理的な見立てだが、小沢がもくろむ「25年衆参ダブル選で政権交代」の実現に至るには、いくつもの条件がある。
可能性を左右する「維新」「連合」との関係
「代表や幹事長は当初、衆議院で150人しか立てないということを言っておられた。誰かに文句を言われたら、200人立てると言い出したが。150人しか立てないでどうして政権を取れるんですか」
小沢は14日、横浜市で開かれた立憲議員のパーティーでそう訴えた。「政権を取る意志を示さずに『私たちならこうする』などと言うのは有権者を欺くことだ」と党執行部を痛烈に批判したが、確かに野党第1党が過半数の候補者を立てるのは政権交代の最低条件だ。しかし、立憲単独での政権奪取は現実には不可能。「沈みゆく船」の現状なら、なおさらだ。
だから小沢は野党候補の一本化を目指し、小選挙区での候補者調整を求めているのだが、勢いづく維新の馬場代表は全289小選挙区への公認候補擁立を目指し、一本化には否定的だ。政権交代の可否を左右するのが、この立憲と維新の関係をどうするかだ。
前出の鈴木哲夫氏はこう言う。
「小沢氏は15日夜、元大阪市長の橋下徹弁護士とABEMAの番組に出演。橋下氏が候補者一本化のため、野党間の予備選実施を主張すると、小沢氏は『大賛成』と同調しました。維新の生みの親の橋下氏は今なお党への影響力は強い。このように維新と相通ずる部分は少なくないはずで一本化に向けた合意点を模索すべきです。維新だって仮に野党第1党になっても政権を奪わなければ何もできません。自らの主張を実現するには政権を取らなければいけないし、政権を取るには選挙に勝つ必要があるというのが、小沢氏の一貫した考えであり、今の野党は一つにならなければ選挙に勝てません。勝てる選挙になれば必ず馬場代表も一本化に乗ってくる。それが永田町のリアリズム。あとは立憲がいかに勝ち戦にできるかどうかです」
「共闘批判」を恐れるのは信念のない証拠
逆に「維新と国民民主党は自公与党に付いていく政党。維新が強いままだと、政権交代は実現しにくい。立憲は両党との差異を明確に打ち出すべき」と言うのは、政治ジャーナリストの角谷浩一氏だ。こう続けた。
「維新の支持率上昇は主に『自民は嫌だけど、他に入れるところがないから』という消極的な理由です。立憲は自民とも維新とも違う政党であることをハッキリさせ、積極的な支持を目指すべきです。批判の強いマイナンバー制度を巡っても、現行の健康保険証を廃止してマイナ保険証に一本化する改正法に維新と国民民主は賛成した。この違いをもっと強調してもいい。なのに、立憲は民主党政権時代のトラウマを引きずり、批判を恐れる体質がある。常に何かをやる前におじけづき、何をしたいのか、何ならできるのか分からない政党との印象を与えています。執行部が『野党共闘』への批判を過剰に恐れているのは信念がない証拠でしょう。それこそ、ブレずに批判に耐えてきた小沢氏の政治姿勢を見習うべきです」
政権交代には立・国両党の支援団体「連合」との関係見直しも急務だ。
「今の連合は人も票もカネも出さないのに、文句だけは一人前。参院に組織内候補はいても、衆院の選挙は連合の力だけでは勝てません。だから、立憲は共産に協力を求めているのに、連合の横やりは大きなお世話。政権交代は保守からリベラルまで幅広い支持を得なければ実現しません。野党支援の組織内で『右だ、左だ』と有権者を色分けするのは実現を遠ざけるだけです。立憲は連合の言うことを聞けば政権が取れるのか。袂を分かつ覚悟で連合抜きでも勝てる政党へと脱皮をはかるしかない。そうすれば、他の野党もおのずと共闘に追随してきますよ」(角谷浩一氏=前出)
マイナトラブルの混乱ひとつ取っても、もはや岸田自民党政権は統治能力を失っているのは明らか。25年のダブル選まで待っていたら、安保政策の大転換や防衛増税などで国の形は完全に変わり、国民生活が破綻してしまう。「常在戦場」もまた、小沢の好む言葉である。野党は岸田政権にいつでも取って代わるべく、サッサと衆院解散まで追い込まなければダメだ。
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