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※紙面抜粋
※2023年7月14日 日刊ゲンダイ2面
※文字起こし
これが「国家プロジェクト」なのか(2025年大阪・関西万博の起工式で。左から、岸田首相、西村経産相、岡田万博相)/(C)共同通信社
マイナンバーをめぐる混乱がどんどん「マンガ」みたいになってきた。
13日は総務省がマイナカードの交付枚数を過大計上して公表していたことが発覚。4月末時点で約8800万枚となっているが、取得者の死亡や自主的な返納、紛失などで廃止された分も含めていたことがわかり、その数ナント、約500万枚もあった。「簡便に数値を把握できるため」と理由を説明しているが、少しでも数字を多く見せたかったからじゃないのかと疑われても仕方ない。
健康保険証の廃止期限後もマイナと一体化していない人に「資格確認書」を発行する件もいよいよマンガだ。政府は与党の要望を受け、申請がなくても積極的に発行する「プッシュ型」にするかどうかの検討に入ったという。マイナ保険証も現行の保険証もいずれも持っていない人は「無保険者」扱いになってしまう恐れがあり、プッシュ型なら不安の払拭になるが、「自動的に確認書を配るのであれば膨大なコストがかかる。健康保険証を残す方がいい」(立憲民主党の長妻政調会長)という話。論理的でないことにツギハギの弥縫策を施しだすと、整合性が取れなくなるという典型例だ。
国民を不安にさせるトラブルも依然として後を絶たない。12日には宮崎県で、知的障害者向けに発行する療育手帳の情報が2336件も誤ってマイナンバーに紐づけされていたことが分かった。手作業でやっている以上、ヒューマンエラーは消えない。河野デジタル相は「人手を介さず、システムで対応できるようにすることが大事だ」とか言っていたが、誤登録をチェックできないアナクロなシステムに問題があるんじゃないのか。
マイナは財界の「もうけのタネ」
そうしたら出てきたのが13日付の「しんぶん赤旗」のスクープだ。〈マイナンバー 政官財の癒着〉と題した記事は、マイナ制度の中核システム「情報提供ネットワークシステム」を内閣府から約123億円で受注した5社連合のうちの4社(富士通、日立製作所、NEC、NTTデータ)が、2014年から21年までの8年間で計5.8億円を自民党の政治資金団体「国民政治協会」に献金していたと伝えている。
5社連合はマイナカードの発行業務などを担う「地方公共団体情報システム機構(J-LIS)」が発注した業務約69億円など、関連事業も多数受注。一方で、献金企業には、内閣府や総務省などの役所から幹部が多数天下りしているという。
さらに驚くことに、マイナ制度を強力に推進したのは財界だという。個人情報をデータ化してビジネスに利用するのが目的。経済同友会は第2次安倍政権時代の18年8月に「健康保険証とマイナカードのワンカード化を早期に実施・完成すべき」と提言し、マイナ普及促進を政府に求めていた。菅政権の21年4月の経済財政諮問会議では、財界代表の民間議員から「マイナカードと健康保険証の一体化は、一丁目一番地の改革だ」との提言が出されている。これが岸田政権で一気に具体化したという。
今年6月の法改正を経て、政府は運転免許証や母子手帳などあらゆる個人情報をマイナに紐づけする方針だが、これらは「ビッグデータ」として大企業の「もうけのタネ」として利活用されることになるという。
しかし、である。トラブル続出なのに、あれもこれも紐づけて大丈夫なのか。
河野が講演で、2国間の外相会談では日本側が援助を申し出る立場だったのに、デジタル相になって「遅れている日本のデジタル化を進めるために何でも言ってくれ」と、支援を受ける側に立場が逆転したと自虐的に話していた。これが「デジタル後進国」ニッポンの現実だ。結局、マイナが利権の巣窟になっているから、まともな先進的システムとして機能しないんじゃないのか。
政治評論家の本澤二郎氏はこう言う。
「自民党のスポンサーは財界。そこから献金をもらい、何か新しい政策を進める際は、必ず関連の役所と業界が一体となって知恵を出し合う。従来からそうした仕組みが存在していますが、第2次安倍政権以降の10年でそれが極めて露骨に出てきた。マイナもそのひとつです。甘い汁は一度きりではなく、システムが続く限り、継続的な利権となる。税金からものすごい金額が動くことになります」
政官財の癒着に庶民が搾取される政治
そして、もうひとつ。日本の国力低下がわかるドタバタを展開しているのが大阪・関西万博だ。25年4月の開幕までにパビリオンの建設が間に合わず、このままでは“失敗必至”と関係者が大慌てしている。
万博の運営主体は国と大阪府・市、財界などでつくる「日本国際博覧会協会」で、3者それぞれが3分の1ずつ会場建設費を負担するが、建築資材や人件費の高騰などで、ただでさえ、当初予算の1250億円から上振れして1850億円に膨らんでいる。
そこへウクライナ戦争勃発で原材料費がさらに高騰したうえ、独創的なデザインがあだとなり、赤字を出してまで建設を引き受けるところがなく、昨年から入札不調が続発。さらにここへきて、海外からの参加国が建てるパビリオンの建設申請がいまだゼロ件ということが分かった。
焦った万博協会が参加国に建設工事発注の代行を提案したというが、費用まで日本持ちになってしまわないのか。会場建設費の1850億円が再び上振れするのは時間の問題だ。
半年間の開催期間で2820万人の来場者を見込むが、チケットは基本料金が7500円と過去の万博と比べても高額。運営費は入場料収入で賄うことになっているため、そこにも万博協会の焦りの色が見える。
「万博協会副会長でもある関西経済連合会の松本正義会長が、関経連副会長の出身企業16社に対し、1社当たり15万〜20万枚の前売り券を購入するよう呼びかけたそうです。しかし、6000円の前売り券で20万枚なら12億円。さすがに不満が出て、枚数のノルマはいったん引っ込めました。松本氏が会長を務める住友電気工業は立場上、率先して25万枚を購入するよう調整を始めたそうです」(在阪のメディア関係者)
目的が不純だから不満が噴出
仲間うちで入場券を大量購入して、観客を動員するのか。税金からの拠出額もさらに膨らむのはほぼ確実。海外の参加国にしても積極的には見えない。こうなってくると、なんで万博なんてやるのか、今からでも中止した方が損失が少なくて済むんじゃないかとすら思えてくる。
経済評論家の斎藤満氏が言う。
「万博は成長過程にある国が世界にその実力を知ってもらおうと開催するもので、成熟した老大国の日本が何を見せるのでしょう。衰退気味の哀れな姿を世界に知らせたいのでしょうか。結局、政治家が税金を使って自らの関係者に利権を分配する。万博のようなビッグイベントにはそんな目的がある。東京五輪もそうだったじゃないですか。国民に見返りはない。こんなバカな税金の使い方はありませんよ」
1970年の、あの大阪万博再び、と夢見た「国家プロジェクト」の哀しさ、浅ましさ。世界はGAFAを筆頭にしたITや環境ビジネスなど新たなイノベーションを進めているのに、日本は50年前の経済発展モデルにすがり、後進国のような知恵しか生まれない。政官財で分け前にあずかろうとしているという点で、マイナ事業も万博も同列。目的が不純で説明がつかないから矛盾が噴出する。「お笑い日本」の末路の象徴だ。
安倍1強から10年。権力に長くいると自分の無能さすら見えなくなってくるのだろう。それがいまの自民党だ。政官財の癒着に庶民が搾取される政治が続いていいのか。変えるのは有権者の行動にかかっている。
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