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検察の卑劣な時間稼ぎ許さない
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2023年7月11日 植草一秀の『知られざる真実』
刑事訴訟法第336条は次のように定める。
(無罪の判決)
第336条
被告事件が罪とならないとき、又は被告事件について犯罪の証明がないときは、判決で無罪の言渡をしなければならない。
「被告事件が罪とならないとき」、「被告事件について犯罪の証明がないとき」
は判決で無罪の言渡をしなければならない。
「犯罪の証明がないとき」には「無罪の言渡をしなければならない」
とされるが、問題になるのは、何をもって「犯罪の証明」とするのかだ。
「犯罪の証明」とは「厳格な証拠によって、合理的な疑いを超える確信を裁判官に抱かせる程度まで証明すること」を指す。
「厳格な証拠」が犯罪の証明には必要不可欠だ。
ところが、現実には「厳格な証拠」の存在が客観的には確認されていない場合でも有罪の判決が示されることが多い。
この判断の拠り所とされるのが「自由心証主義」と呼ばれる考え方。
刑事訴訟法第318条は次のように定める。
(自由心証主義)
318条
証拠の証明力は、裁判官の自由な判断に委ねる。
証拠の価値(証拠価値)は裁判官の自由な判断にゆだねることとされている。
福岡県弁護士会HPの「弁護士会の読書」と題する書評欄に霧山昴氏による、
『犯罪の証明なき有罪判決』(吉弘光男・宗岡嗣郎著、九州大学出版舎)
の書評が掲載されており、そのなかから一部を転載させていただく。
「「裁判官は証拠で認定するのが本来ですが、なかには証拠が薄くても本当に被告人が犯人だと確信してしまえば、多少判決の説明が苦しくても有罪判決する裁判官がいる」(木谷明元判事)。
しかし、たとえ裁判官がどれほど強く有罪への確信をもって心証を形成しても、証拠の薄さに由来する「疑わしさ」が残るかぎり、「犯罪の証明があった」とは言えず、有罪判決は書けないはず。
有罪の「心証」ではなく、有罪の「証明」が必要なのである。
ところが、裁判官は有罪の証明ができないときに「事実を創作」してしまう。
もちろん、こんなことはあってはならないことですが、ときどき起きているのが現実です。」
「犯罪の証明」が自由心証主義に委ねられると、一言で言えば「何でもあり」になってしまう。
「証拠の価値」が裁判官の自由な心証に委ねられれば「白が黒になり」、「タテがヨコになる」。
裁判が根本的な危うさ=でたらめさを内包していることを知っておく必要がある。
上記の書評には、
「裁判官は、検察官に対してあたかも同僚のような信頼感をもち、「判検一体」となった訴訟指揮をすることが多い。
そして、被告人に対しては法廷では嘘をついて罪を免れようとしているという偏見をもち、「おれは騙されないぞ」と、捜査官のような予断をもっている。」
とも記述されている。
元プロボクサーの袴田巌さんへの死刑判決が確定した事件の再審請求について、2023年3月に東京高裁(大善文男裁判長)は検察の即時抗告を棄却し、弁護側が求める再審開始を認める判決を示した。
検察は最高裁への特別抗告をせず、再審開始が確定した。
事件発生から57年もの年月が経過しての再審開始決定である。
袴田巌さんは1966年6月30日の事件発生後の8月18日に一家4人殺害事件の被疑者として逮捕された。
8月19日から9月6日まで、炎天下で1日平均12時間、最長17時間
の過酷な取り調べが行われた。
睡眠時も酒浸りの泥酔者の隣の部屋にわざと収容させ、その泥酔者にわざと大声を上げさせるなどして一切の安眠もさせなかったと伝えられている。
違法な取り調べは静岡県警で次々と冤罪を作り上げたことで知られる紅林麻雄警部の指導を受けた者たちが関わったとされる。
犯行を頑強に否認していた袴田さんは勾留期限3日前の9月6日に犯行を自白したとされる。
しかし、同年11月に開かれた第1回公判で起訴事実を全面否認。
以後一貫して無実を主張している。
翌年の1967年8月に味噌製造工場にある味噌タンク内から、従業員が血染めの「5点の衣類」を発見。
検察はこれを決定的証拠として提示したが、検察による証拠のねつ造が強く疑われている。
すでに裁判所の判断は示されている。
検察はこの期に及んで再審で有罪立証を行う方針を示したと伝えられている。
袴田巌さんも保佐人の姉・ひで子さんも高齢である。
検察は取り返しのつかない過ちを犯した上、面子を保つための時間稼ぎに動いていると見られる。
日本の刑事司法腐敗の現実を全国民が糾弾しなければならない。
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