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マイナンバーカードのトラブルは「消えた年金問題」の再来 野党に責任転嫁する河野太郎・デジタル相の大間違い
マネーポストWEB 2023.06.29号
https://www.moneypost.jp/1038328
岸田内閣の支持率が想像以上のペースで急落し、政権に動揺が走っている。6月23〜25日に実施された読売新聞の全国世論調査では、内閣支持率が41%となり、約1か月で15ポイントも下落した。岸田文雄首相の秘書官を務めていた長男・翔太郎氏の不祥事などに加え、やはり影響が大きいとみられるのがマイナンバーカードを巡る問題が続出していることだ。2009年に自民党が政権与党から転落するきっかけのひとつとなった「消えた年金問題」と重なって見えるとの指摘も出るなか、“総点検”の責任者となる河野太郎・デジタル担当相の失言もあり、騒動はまだまだ収まりそうにない。
前述の読売新聞の世論調査では、マイナンバーカード(マイナカード)を巡るトラブルに対して政府が適切に対応していると思うかという問いに、「思わない」と回答した人が67%にのぼったという(「思う」は24%)。現在の健康保険証を来年秋に廃止してマイナカードに一本化することについても、「反対」が55%と過半を占めた。
この間、マイナカードを巡る数々のトラブルが表沙汰になってきた。健康保険証と一体化した「マイナ保険証」への別人の個人情報の登録、マイナカードを活用した住民票写しの交付などで別人の証明書を付与、マイナポイントの別人への付与、マイナンバーに別人の公金受取口座を登録、といった具合に枚挙に暇がない。岸田首相は、河野氏をトップとする総点検本部を立ち上げ今秋までの総点検を指示したが、混乱が収束する目途は立っていないようだ。
消えた年金問題と同様のミスが起こる皮肉
経済ジャーナリストの荻原博子氏は、「第一次安倍政権の2007年に大炎上した『消えた年金記録問題』が想起されます」と指摘する。
「誰のものか確認できない“宙に浮いた状態”の年金記録が5000万件もあることが発覚した問題でしたが、これは基礎年金番号を導入するにあたって各人の年金記録を統合する過程で、担当者の入力ミスなどが原因で起きたことでした。そうした杜撰な管理にならないようにと、個人を生涯にわたって識別できるマイナンバー導入の議論につながっていくわけですが、皮肉なことに消えた年金問題と同様のミスが繰り返されています。
富士通子会社のシステムの問題などもありましたが、マイナカードのトラブルも消えた年金問題と同じような人的ミスが多くを占めます。今年2月末までにマイナカードを申請すると最大2万ポイントがもらえると喧伝したことで、申請が殺到。コロナ対応もあるなかで窓口が大混乱に陥り、行政の担当者が端末のログアウトを忘れたまま次の人の手続きをするなどして、誤った情報が登録されていったのです。国が自治体任せにしたうえに、国民にニンジンをぶら下げるかたちでの突貫工事を進めた結果だとも言えるでしょう」
消えた年金問題の影響は大きく、当時の安倍政権は2007年の参院選で過半数割れとなる惨敗を喫し、衆参の「ねじれ国会」が生まれたことで2009年の民主党政権誕生へとつながっていく。その歴史を考えれば、岸田首相が火消しに躍起となるのは当然だろう。
期限内の総点検は「まず無理でしょう」
荻原氏は「そもそも、『マイナンバー』と『マイナカード』の議論を分けて考える必要があるでしょう」と続ける。
「マイナンバーは国民全員に強制的に振られている12ケタの番号で、国や自治体の行政業務のなかで使われ、利用用途や利用主体などが厳密に管理されています。こちらでは大騒ぎになるような問題は起きていません。
一方のマイナカードは、4ケタの暗証番号を使うと『マイナポータル』にアクセスできて、そこに利用者が同意した情報が紐付けられていく。認可を受ければ国や自治体だけでなく民間企業なども使えます。マイナポータルから様々な個人情報が確認できるようなるわけですから、これは当然、任意で進められますが、利用者の側にその認識がどこまであるかというのが問題。いきなり紙の保険証を廃止してマイナ保険証に一本化すると言い出すなど、事実上の強制のようなかたちになっていることが問題と言えるでしょう」(荻原氏)
この先も難題は山積みとみられる。河野氏はマイナ保険証への情報の誤登録などについて7月末までに自治体など全保険者からどのくらいのミスなどがあるかを報告させるとしているが、荻原氏は「まず無理でしょう」と話す。
「たとえば東京・世田谷区は人口70万人ですが、70万人分の個人情報を全部突合するのに、どれだけの時間と人員が必要なのかという話です。ある自治体の幹部に話を聞きましたが、“全部突合するのは無理だから、適当に出さざるを得ないのだろうな”と言っていました。河野氏が“もう大丈夫です”と会見した後にもボロボロと問題が出てくるということの繰り返しになるのでは」(荻原氏)
本当に民主党のせい?
難題となる総点検の責任者となった河野氏だが、6月25日には新潟・新発田市で講演し、野党からの批判が相次いでいることについて「マイナンバー制度は民主党政権が作った制度。お前が始めたんだろうと言い返したくもなる」と愚痴をこぼしたことが報じられ、炎上している。この発言について荻原氏は「間違っていますよ」と断じる。
「マイナンバー制度は2016年1月に交付が始まったもので、たしかに2013年に可決された個人番号制度関連法案は、民主党が与党の時に法案として国会に提出し、自民・公明と協議、手直しをして成立したものです。
ただ、もともとはその前の自民党政権時代からの住基ネット(住民基本台帳ネットワークシステム)、住基カードの延長線上にあるもの。法案の可決からは10年以上が経過しているし、前述した通り、マイナンバー制度とは分けて考えるべき『マイナカード』を推進したのは自民党ですし、先頭に立ってマイナ保険証をゴリ押ししたのは河野さんです。それなのに野党に責任転嫁するなんて大間違いでしょう」
今後の総点検結果がどうなるのかも、注視していかなくてはならない。(了)
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