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※紙面抜粋
※2023年6月28日 日刊ゲンダイ2面
※文字起こし
目黒署に入る市川猿之助を乗せたと思われる車両(C)日刊ゲンダイ
カシャ、カシャ、カシャ……。小雨が降る東京・警視庁目黒署の前で待ち構えていた70人以上の報道陣のカメラのシャッター、フラッシュが一斉にたかれた。目黒区の自宅で母親の自殺を手助けした疑いが強まったとして、27日、警視庁捜査1課に自殺幇助容疑で逮捕された、歌舞伎俳優の市川猿之助容疑者が署に到着した時だった。
捜査関係者によると、猿之助は5月17〜18日ごろ、目黒区の自宅で睡眠薬を準備するなどし、母親が自殺するのを手助けした疑いが持たれている。
司法解剖の結果、母親の死因は向精神薬中毒だったとみられ、父親の歌舞伎俳優市川段四郎さんも死亡。同課は猿之助ら3人が睡眠薬を飲むなどし、一家心中を図ったとみて調べを進めている。
事件は5月18日午前10時20分ごろ、猿之助を迎えに行ったマネジャーからの119番で発覚。両親は自宅2階のリビングの床にあおむけに横たわって布団が掛けられ、その後、死亡が確認された。
一方、猿之助は半地下のクローゼット内で意識がもうろうとした状態で座っているのが発見された。病院に搬送されたが命に別条はなく、警視庁が複数回、任意で事情を聴いていた。猿之助は事件直後、捜査員に対し、「死んで生まれ変わろうと話し合い、睡眠薬を皆で飲んだ」「両親の顔にビニール袋をかぶせた」という趣旨の説明をしたという。
室内からは睡眠薬の入れ物やポリ袋は発見されておらず、同容疑者がゴミとして捨てたとみられる。
政治の腐敗が犯罪を助長させている
戦国時代から江戸時代にかけて広まったとされ、「常軌を逸脱した行動に走ること」を指す言葉「かぶき」が語源のひとつになったといわれる歌舞伎。まさに言葉そのまま、歌舞伎顔負けの醜聞の末とも言っていいのがこの事件だ。
一部メディアでは、警視庁が母親に対する容疑から立件したのは、父親に対する殺人容疑なども視野に入っているためではないか──と“次の展開”をにおわせる報道もあるが、いずれにしても日本の伝統芸能「歌舞伎」の世界を大きく揺さぶり、今後も長く語り継がれる衝撃事件になったのは間違いないだろう。
猿之助が捕まったとはいえ、果たして親子心中なのか、自殺幇助なのか。真相はまだまだ分からないことだらけだが、それにしても歌舞伎界に限らず、近年起きている事件を振り返ると、動機や目的がよくわからないような「常軌を逸した」事件ばかりではないか。
神戸市西区の草むらで、スーツケースに入った6歳児の遺体が見つかった事件もそうだし、岐阜市の陸自日野基本射撃場で自衛官候補生の男が自動小銃を突然乱射し、隊員3人を死傷させた事件もそうだ。初公判が始まった、東京・世田谷区を走行中の小田急線車内で乗客3人を包丁で切り付けたとして、無職の男が殺人未遂罪などに問われている事件や、SNSなどを通じて「闇バイト」に応募し、強盗を繰り返していたという事件もある。
いずれの事件でも、容疑者や被告はそろってコトの重大性をまるで理解しておらず、衝動的、短絡的で、一時的な満足が得られればいいという刹那主義。そういった利己的な人間が増えていると感じている人は少なくないのではないか。
元参院議員の平野貞夫氏がこう言う。
「欧州が中世から近代へと移行期を迎え、宗教中心の社会から経済発展を遂げた時、価値観の変化によって政治や社会が混乱し、人心が乱れた。今の時代も同じ。アナログからデジタル化がますます進み、価値観も多様化。しかし、その動きに人間社会が追い付いていない。本来はそういう時だからこそ、政治がきちんとした方向性を示すべきなのに何もしない。それどころか逆に国民生活の不安をあおるようなことばかりやっている。政治の腐敗が犯罪を助長させる一因になっている面はあるでしょう」
「無敵の人」が社会の中で常態化しつつある
「ドドーン」──。安倍元首相が奈良市で選挙応援の演説中、銃撃されて亡くなった事件から間もなく1年。この時、ネット上で広く拡散されていたのが、<無敵の人>という単語だった。
<無敵の人>とは、<社会的に失うものが何もないため、犯罪を起こすことに何の躊躇もない人>を意味するネットスラングだ。格差が進み、非正規が固定化して安定的な雇用が望めず、子供を育てるどころか、家族を持つことさえもままならない。自分の生活を日々維持することで精いっぱいで、もはや生きる希望を見失い、自暴自棄になった人がためらうこともなく凶悪犯罪に手を染めてしまう──。そんな現代社会の負の一面を風刺した言葉なのだが、近年起きている事件を見回すと、もはや、それが常態化しつつあるようだ。
厚労省の「国民生活基礎調査の概況」(2019年)によると、日本の「相対的貧困率」は今や15.4%となり、1985年の12.0%から3.4ポイントも増加。「子どもの貧困率」(17歳以下)も13.5%で、同10.9%から2.6ポイント増えた。貧困率の掲載がない21年の同調査でも、生活意識として「大変苦しい」「やや苦しい」の割合は実に53.1%にも達している。大阪大学社会経済研究所などがネット上で公開している「失業率と犯罪発生率の関係」によると、<犯罪の発生率は失業率が上昇すると上昇>するという相関関係にあり、<失業率の上昇よりも貧困率の上昇が犯罪発生率を高める影響が大きいことが分かる>というから、<無敵の人>が少しずつ、確実に増える傾向にあるのは容易に想像がつくだろう。
格差の固定化は真面目な者がバカを見る社会
もちろん、失業や貧困を理由に犯罪に手を染めても構わない、という理屈にならないのは言うまでもない。だが、刹那的とも言っていい理解不能な凶悪犯罪が起きている背景に、今の経済不安、政治不信、格差への怒り──といった側面があるのは否めないだろう。
<「勝ち組」と「負け組」の格差が、いやおうなく拡大するなかで、「努力は報われない」と感じた人々から「希望」が消滅していく>
<格差社会が進めば、社会から見捨てられたと感じた人々が反社会的行動に走るようになる>
中央大学教授で、社会学者の山田昌弘氏は2004年に出版した著書「希望格差社会-「負け組」の絶望感が日本を引き裂く」(筑摩書房)でこう書いていたが、前述した小田急線車内の乗客3人切り付け事件でも、被告の無職の男は「人生がうまくいかず、大量に人を殺したかった」と身勝手な理由を語っていたというから、こうした猟奇的な殺伐事件は今後も増え続けるのではないか、という嫌な予感を抱かずにはいられない。
政治評論家の本澤二郎氏がこう言う。
「格差の固定化というのは、真面目な者がバカを見る社会ともいえる。親ガチャなどというシニカルな言葉が流行したのが、それを表しているでしょう。そんな風潮の中で、政治の世界に目を向ければ、物価高に苦しむ国民生活そっちのけの世界一高い給料と世襲まみれの社会。出てくる政策は利権絡みのような話ばかりで、国会議員は犯罪行為すれすれのようなことばかりやっている。これでは、国民が『俺たちもドロボーぐらい』などと考えるようになっても不思議ではありません」
政治の腐敗、悪化も凶悪犯罪の背景にあるのだ。
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