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※紙面抜粋
※2023年6月26日 日刊ゲンダイ2面
※文字起こし
鬼の形相でテレビ演説(ロシア大統領府提供・ロイター=共同)
反乱を起こした“汚れ役”が丸1日で、あっさりと方針転換。ロシアの民間軍事会社「ワグネル」創設者・プリゴジン氏がプーチン政権に反旗を翻した決起は、あっけない幕切れを迎えた。
プリゴジンは現地時間24日夜、首都モスクワへの進軍停止をSNSで表明。その数時間前には投降を呼びかけるプーチン大統領のテレビ演説に猛反論し、ワグネル部隊はモスクワまで約200キロの距離に到達していた。
部隊撤収の理由について「流血の可能性が出てきたため」と説明。ロシアの同盟国であるベラルーシのルカシェンコ大統領と協議し、事態の沈静化で一致したという。ロシア司法当局もプリゴジンへの刑事訴追手続きを打ち切り、ベラルーシへの事実上の亡命を認めた。
全面衝突が回避。サクッと収束の道筋がついたことに、内戦への期待をあおった日本のメディアは拍子抜けではないか。
プリゴジンは23日夜、SNSでロシア国内での武装蜂起を宣言。「私と2万5000人の兵士は、祖国のために死ぬ覚悟ができている」とし、ロシア国民に「正義の行進」への参加を断続的に呼びかけると、プーチンは24日朝、黒いスーツ姿で緊急のテレビ演説に臨み、「反乱に参加したものは全員処罰する」と鬼の形相で強調してみせた。
演説冒頭で第1次大戦末期の1917年にロシア革命が起こり、内戦につながった自国の歴史に言及し、「再発を許してはならない」と警告。仰々しい表現に引きずられるように、日本のメディアは「ワグネルの乱」を、さも軍事クーデターのように大げさに伝えた。
25日の大手紙はこぞってワグネルの乱をデカデカと報じ、〈露、二正面作戦に〉〈侵略継続とワグネル鎮圧〉(読売)などと、プーチンの「窮地」をことさら強調。〈最大規模の政治危機に発展する〉〈ウクライナ侵略の前線で戦う兵士の士気低下や戦線離脱に拍車がかかる〉との観測記事を並べ立てた。そして必ずウクライナのゼレンスキー大統領の「悪の道を選ぶ者はみな、自らを滅ぼすことになる」とのコメントを紹介していた。
内戦をあおった紙面が届いた朝にもう収束
大手紙の一部からは、ウクライナ侵略作戦に危機感を抱くロシア軍内部からの一定の支持を見込んだ計画的なクーデター説まで浮上。あたかもモスクワ陥落をにおわせるような紙面が届いた朝には、すでにワグネルは撤退を開始。「死ぬ覚悟」の「正義の行進」から一転、事態は収拾に向かっていたのだから「バカ騒ぎ」としか言いようがない。
そもそも、反乱に打って出たプリゴジンにどんな成算があったのかや、どこまで真剣だったのかすら怪しいものだ。彼の経歴もひたすら怪しい。
プーチンと同じサンクトぺテルブルク出身で外食産業で財を成し、その知遇を得たことから「プーチンの料理人」との異名を持つ。中東シリアやアフリカへの戦闘員派遣などエリートが敬遠する「裏の仕事」を請け負うことで、プーチンの信頼を得てきた“汚れ役″だ。2016年の米大統領選では米世論の分断工作に関わっていたことが、米特別検察官の捜査で判明している。
決して公の場には出られない「影の人物」が表舞台で情報発信するようになったのは、昨年9月からだ。ロシア国内の刑務所を回って恩赦と引き換えに受刑者に入隊を呼びかける映像が公開されて各国メディアが報じると、SNSで突如、自分がワグネルの創始者だと初めて告白したのだ。
プーチン失墜の前に屈辱の暴走を心配すべき
受刑者を前線に送り込み、民間人の殺害や拷問など非人道的行為や人命軽視の限りを尽くしてきたプリゴジン自身、窃盗や詐欺で服役した過去を持ち、政権中枢入りがかなわない“劣等生”だ。
こんな札付きのワルが“正義の決起”を呼びかけたところで誰も信用しないし、ロシア正規軍や国民の賛同は考えられない。プーチンに取って代わってロシアを支配できる“タマ”ではないことは、日本のメディアだって理解できたはずだ。
しかも、怪しい民間企業の示威的行動は、今回が初めてではなかった。ワグネルはウクライナ東部の激戦地バフムトの攻略作戦を担った。プリゴジンは昨年秋以来、ショイグ国防相やゲラシモフ参謀総長への批判を繰り返し、今年4月末には「(ワグネルに)弾薬が補給されない」と不満をぶちまけ、バフムトからの撤退を示唆。その数日後、「戦闘続行に必要な弾薬と兵器の供給が約束された」と、あっさり戦闘継続を表明したのは記憶に新しい。
「駆け引きにたけた人物で、今回の騒動も何らかの対価を得るためのデモンストレーションとみるのが妥当でしょう。政権転覆の意図はハナからなかったはずです。ロシア国内の中立系メディアでも、プーチン政権の支持率は70〜80%を維持しており、ワグネルの乱に同調する勢力は国内に存在しません。軍事クーデターのように伝えた日本のメディアは、明らかに騒ぎすぎです」(元外務省国際情報局長・孫崎享氏)
ロシア国防省はワグネルなど非正規軍事組織に対し、ロシア軍との正式契約を求めるよう命じたが、プリゴジンは軍傘下に収まることを拒否。契約期限は7月1日に迫っていた。米情報当局は「直近2週間以内」に武装蜂起の兆候をつかみ、政権や議会の限られた関係者に伝えていたという。そんな分析など望むべくもない、メディアに代表される日本のインテリジェンス能力の体たらくである。
ウクライナ全面支持では戦争は終わらない
日本のメディアは今さら、ワグネルの乱について「ウクライナの戦況への影響は少ない」などと、したり顔で解説。それでも未練がましく、プーチン体制の「崩壊のはじまり」を願っているかのような報道が相次ぎ、わざわざキーウ市民を登場させ、その願望を代弁してもらう始末だ。高千穂大教授の五野井郁夫氏(国際政治学)はこう言う。
「今回の騒動でプーチン氏の権威が揺らいでも、ロシアが戦術核、戦略核の双方を所有している状況は変わりません。格下のルカシェンコ氏の仲介を受け入れたことは、プーチン氏にとっては最大の屈辱です。世界に恥をかかされたことを払拭するため、暴発しかねないことを懸念した方がいい。NATO加盟国のトルコのエルドアン大統領はプーチン氏との電話協議で『ロシアの指導者による措置への全面的な支持』を表明。ロシアと対峙するNATOが決して一枚岩じゃないことも露呈しました。プーチン氏の権威失墜をひたすら願うだけの日本のメディアは楽観的すぎます」
この国の大メディアはマトモな戦争報道ができるのか。プーチンの苦戦は何が何でも派手に扱うだけでは戦前と同じで、親ウクライナという身びいきの大本営垂れ流しばかりになってしまう。今月4日に本格化させたはずのウクライナの反転攻勢だって“その後”がさっぱり伝わってこないのも奇々怪々である。前出の孫崎享氏はこう言った。
「即時停戦に目を向けた動きが、日本のメディアから出てこないことも問題です。米軍トップのミリー統合参謀本部議長は『ロシアを完全にウクライナから追い出すには、ウクライナはあまりにも多くの“血と財産”を失うことになる』と発言。戦場では決着に至らず、外交で決着せざるを得ないとの見解を示しています。日本のメディアがウクライナを全面支持するだけではどうにもならない。この戦争は決して終わらないのです」
日本の大メディアはなぜ、岸田政権に和平案を提示するよう迫らないのか。トンチンカンな戦争偏向報道が続く限り、「今日のウクライナは明日の東アジアかもしれない」と連呼し、軍拡路線をひた走る岸田政権は、安泰である。
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