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※紙面抜粋
※2023年6月6日 日刊ゲンダイ
※文字起こし
抜本的な経済対策は何一つない(岸田首相)/(C)日刊ゲンダイ
「バブル後最高値」をまた更新だ。
週明けの5日、東京株式市場は取引開始直後から全面高の展開で、日経平均株価は3万2217円で取引を終えた。終値として33年ぶりに3万2000円台を回復。前週末から693円も値上がりし、上げ幅も今年最大となった。
こうした数字だけ聞いているとずいぶん景気のいい話だが、「一体、どこの国のことなのか?」と不思議な気分にもなる。
安倍元首相が「1人あたりの国民総所得(GNI)を10年後には現在の水準から150万円増やす」と宣言したのが2013年6月5日。丸10年経って株価は33年ぶりの高値に沸いても、庶民の給料は低いままで、そこに物価高も加わり暮らし向きは苦しくなる一方だからだ。
「実体経済が良くなって株価が上がっているならいいのですが、この株高はそうではない。まず、1ドル=140円台まで円安が進んだこともあり、日本株が割安だということが大前提としてある。米国の景気後退が始まる兆しがあり、中国経済も減速する中で投資先を探していたファンドや海外投資家が、日本株に目を付けたのです。これまで注目されずに低迷していたこともあり、ドルベースで見るとかなり割安になっていた。ただ、あくまで一時的な資金の避難先ですから、東証バブルがいつまでも続くわけではありません。一般投資家まで過熱してきたところで海外ファンドは利益確定に走るでしょう。この急上昇には警戒が必要です」(経済評論家・斎藤満氏)
今月に入り、日経平均は3営業日で1300円も値上がりした。
東証の投資部門別売買動向を見ると、3月末から9週連続で海外投資家が買い越していることが分かる。株価の「バブル後最高値」を演出したのは、国内経済の好転ではなく海外マネーなのだ。
マネーゲームの具にされているだけ
「この業界で“投資の神様”と呼ばれるウォーレン・バフェット氏が4月にわざわざ来日して『日本株への追加投資を検討している』と発言したことが、日本株過熱の一因になっていることは間違いない。バフェット氏はすでに日本の5大総合商社株を保有していますが、追加でどこを買うかが世界的に注目され、海外からの投資も激増した。海外勢の買い越しが続き、NTTやメガバンク株が値上がりしています」(マーケット関係者)
短期的な投機目的の海外投資家は、日本企業の将来性や事業内容にさほど興味はない。割安と思えば買い、一定の利益が確定する段階で売る。保有期間はわずか数分ということもある。日本株はマネーゲームの具にされているだけなのだ。その結果の株高だから、株を保有していない一般国民には何の恩恵もない。日本経済は海外勢に翻弄され、漂っているだけだ。
それも当然で、岸田政権で効果的な経済対策が示されたことはない。政権発足から1年半経っても、結局「新しい資本主義」とは何だったのか判然としないし、アベノミクスの異次元緩和を推し進めた日銀の黒田前総裁が退任しても、金融政策の明確な転換はない。
日銀の植田新総裁は4月28日、就任後初めての金融政策決定会合で金融緩和について「多角的なレビュー(検証)」を始めると表明したが、検証は外部の有識者を交えて1年から1年半をかけて行うという。緩和策の修正を事実上、先送りしたも同然で、異次元緩和の円安政策は継続されることになる。
大企業だけが儲かり国民生活は苦しいイビツな構造
「円安に振れれば輸出企業は儲かるでしょうが、輸入価格のコスト増で庶民はますます苦しくなる。物価高がこれだけ国民生活を圧迫しているのに、まだ安定持続的なインフレに至っていないなどという理屈で金融緩和を続けるのはどうかしています。防衛費増額や“異次元”の少子化対策で今後も増税や社会保険料の負担増も相次ぐ。
選挙対策なのか、岸田政権は少子化対策の費用を3兆円台半ばとしながら具体的な財源を示すことは年末まで先送りしましたが、いずれにせよ国民に負担させるつもりですから、一般家庭の可処分所得がさらに減ることは確実です。それでどうして子どもが増えるというのでしょうか。少子化は静かな有事です。対策の予算は、円安政策のおかげで濡れ手で粟の大企業に払ってもらえばいい。応能負担です。
儲かった分を人件費に還元することもなく、ため込んできた内部留保に1%でも課税すれば、少子化対策予算なんて簡単に捻出できる。大企業は、従業員が消費者でもあるという基本原則を忘れているのではないか。家計の所得が上がらないことには、子どもの数も増えないし国の経済発展はありません。いくら株価が上がっても、大企業が内部留保をため込むだけで国民生活が豊かにならない政治は間違っています」(法大名誉教授・五十嵐仁氏=政治学)
今年の春闘で大企業の賃金が上がったのは自分のおかげというように岸田首相はアピールしているが、そんなものは光熱費の高騰や増税、社会保険負担増で相殺されてしまう。賃上げもできない中小零細企業では、労働者の家計負担増はハンパない。「五公五民」を超えて、江戸時代なら一揆が起きるレベルだという指摘もある。
ドルベースの日経平均は上がっていない
経団連の十倉会長は5日の定例会見で、少子化対策の財源確保について、「ぜひ、全世代型社会保障改革による財源のベストミックスを検討してほしい」と注文を付けた。かねて持論である消費税の増税を含めて議論すべきだと強調し、「そうでなければ持続可能ではない」などと言っていた。
企業側も負担する社会保険料ではなく、消費税で国民が負担すべきだというのだ。消費税アップは大企業にとってはメリットが実に大きい。値上げもできるし、増税分は下請けに押し付ける。さらに輸出企業には還付金まである。
「このままでは、いくら株価が上がっても、大企業だけが儲かって国民生活は苦しい状況が続くでしょう。今年4月、東証はPBR(株価純資産倍率)が低い上場企業に対して、株価を引き上げるための努力を求めましたが、それで企業側がやったのは配当金を上げることと、自社株買いです。内部留保でため込んでいたカネで自社株を買って株価を上げるわけです。それで喜ぶのは株主と投資家だけですから、人件費などで還元した方がよほど日本経済のためになる。
大企業がため込んだ540兆円の内部留保に1%課税するだけで、少子化対策の財源に十分になります。現状のように円安と海外の状況任せの株式市場では、アメリカが金融引き締めに走った瞬間にはじけてしまう。日銀が異次元緩和の修正に着手した場合も同様です。非常に脆弱なマーケットになっているし、実体経済がマーケットに翻弄されることになりかねません」(斎藤満氏=前出)
いまは海外投資家が安い円を買って日本株を購入しているだけだから、ドル建てで見ると、実は日経平均株価はほとんど上昇していない。円が安くなっているだけなのだ。そして、円安は物価高の形で国民生活を圧迫する。
日銀が異次元に購入したETFを市場で売りに出せば株価が暴落する可能性が高く、実質的に保有し続けるしかないことも投資家に足元を見られる要因になっている。
日銀はいまや日本株の最大株主である。そのため大企業の株価が突然、暴落することもないだろうが、東証はどれだけ企業株価が変動しても投資家と大企業の問題でしかないイビツな構造になってしまった。庶民生活とはかけ離れた別世界で、うたかたの宴を繰り広げている。
こういうシステムを土台から変えない限り、本当の経済成長も、異次元の少子化対策も望むべくもない。
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