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※紙面抜粋
※2023年5月30日 日刊ゲンダイ2面
※文字起こし
何を今さら…(岸田首相)/(C)日刊ゲンダイ
連立与党を組む自民党と公明党がモメているというので、「自公の亀裂深刻化」「関係悪化に懸念」などと大新聞の政局報道を賑わせている。
まるで連立解消もあり得る一大事のように騒いでいるのだが、有権者はドッチラケではないか。こんな小競り合いは、夫婦喧嘩と同じで犬も食わないというやつだ。
自公関係がこじれた直接の原因は、東京の選挙区をめぐる対立である。衆院小選挙区の「10増10減」に伴って、公明は選挙区が5つ増える東京の第28区(練馬区東部)に独自候補を擁立することを主張。自民党本部の了承も得ていたというが、自民は東京都連の猛反発で28区を譲ることを拒否したため、公明側は「話が違う」と激オコというわけだ。
「公明は千葉でも選挙区を得ようとしていた。4月に行われた衆院千葉5区補選は自民前職が“政治とカネ”の不祥事で辞任したことによるもので、当初はそこに公明が候補を立てようとしていたのです。しかし、自民が公認候補を立てて公明に支援を要請。千葉5区での候補者擁立を諦める代わりに東京28区は公明に譲るというバーター取引が党幹部間で行われたとか。しかし、そんなこと勝手に決められても現場の東京都連は困る。公明は今年1月にも、東京29区(足立区の一部と荒川区)への候補擁立を一方的に決めた。これ以上、譲ることはできません」(自民党都連関係者)
公明は旧12区(足立区・板橋区などの一部と北区)選出の現職を29区にスライドさせ、新たに28区も要求していた。これを拒否した自民側は、28区の代わりに12区か15区(江東区)ではどうかと打診したというが、すでに両区を地盤にする自民現職もいて、公明側がのめる条件ではない。それで交渉は決裂。25日に公明の石井幹事長が「東京での全選挙協力を解消する」と自民の茂木幹事長に通告するに至ったのだ。
「東京に限定した話」と強調
「公明票は各選挙区に1万〜2万票あるとされる。公明との選挙協力がなければ落選危機の自民議員は少なくありません。今回は公明側が東京での選挙協力解消という強硬手段に出たため、『これが全国に波及したら大変だ』と選挙に弱い議員は慌てているのですが、これは本気の喧嘩ではない。20年以上にわたって連立を組んで政権与党のうまみを知り尽くした自公はズブズブの関係です。権力を維持するため、自民は公明の集票力を手放せないし、公明も権力から離れられない。自立できない党になってしまったのです」(政治評論家・本澤二郎氏)
実際、公明は選挙協力解消は「あくまで東京に限った問題」と強調している。「東京における自公間の信頼関係は地に落ちた」とまでタンカを切った石井も、28日に自身が出馬予定の埼玉14区(草加市など)で街頭演説した際に、「協力解消は東京に限定しての話。連立政権に影響がないよう取り組んでいきたい」と話していた。
公明や支持母体の創価学会が条件闘争に選挙協力を利用するのは今回が初めてではない。2021年の衆院選でも、河井克行元法相が公選法違反で辞職した広島3区に公明が初めて候補者を擁立したが、自民広島県連の猛反発には推薦見送りを示唆して対抗したとされる。
昨年の参院選でも党本部による一括推薦を見送って選挙区ごとに調整を進める方針を取ったため、多くの地域で推薦決定が遅れた。背景には、岡山選挙区の自民現職が公明の推薦を拒否したことや、比例票で自民から十分な協力を得られていないことへの不満があったとみられる。投開票日が迫るにつれ、自民側は焦りを募らせていた。
選挙協力と連立政権維持の相互依存関係を抜けられない
「政教一致の問題を抱える公明に対し、自民が当時の学会会長だった池田大作氏の証人喚問をほのめかして圧力をかけるなど、両党は犬猿の仲だった時代がある。それが、まさかの連立政権を組んで以降、ともに下野した民主党政権時代にも『悪代官と越後屋』と呼ばれるほどの蜜月関係を築いてきました。公明は選挙協力をタテに自民を揺さぶるのが関の山で、連立を離脱するまでの勇気はない。政治と宗教の問題を抱え、“下駄の雪”と揶揄されても自民に守ってもらうしかないからです。旧統一教会が社会問題化している現状ではなおさらでしょう。第2次安倍政権下で、平和憲法を破壊する集団的自衛権の行使容認や安保法案に学会員から疑問の声が上がっても、政権与党の権力にしがみつき、自民と一体になって進めていった。増税も容認し、いまの岸田政権では軍事大国化も原発再稼働にも従っている。タッグを組んで、ありとあらゆる暴政を押し付けてきた自公連立です。庶民生活を犠牲にしても権力にしがみつくでしょう」(本澤二郎氏=前出)
今年2月、かつて公明党代表代行も務めた浜四津敏子元参院議員が20年11月に死去していたことが報じられた。2年以上もよく秘匿したものだが、5月27日の朝日新聞夕刊「惜別」欄で取り上げられた逸話は興味深い。
浜四津氏は生前、自衛隊のイラク派遣に「平和の党が戦争に賛成するなんてできない」と主張していたという。
引退後の14年秋、安保法制に突き進む当時の安倍首相について尋ねられた際も、「歴史修正主義、戦後最悪の総理」「右翼の跋扈を後押しし、最も国益を害している政治家ではないでしょうか」と手厳しかったそうだ。
まるで未練タラタラのカップル
「自公両党はもともと理念がまったく違う。公明党は『福祉と平和の党』だったはずなのに、いつしか権力にぶら下がるようになってしまった。何でもかんでも自民と歩調をそろえる公明に疑問を抱く学会員もいると聞きます。しかし、理念の違いをのみ込んで20年以上も連立を続けてきた結果、政権維持と選挙勝利を最優先にした相互依存関係に陥っている。今回のイザコザも政策的な対立ではなく、選挙目当ての話です。国民生活を無視した党利党略でしかありません」(政治ジャーナリスト・山田厚俊氏)
物価高に苦しむ庶民を切り捨て、自分たちの議席増にばかりシャカリキなのが自公政権なのである。
東京での選挙協力解消をめぐる決裂は、公明側が最後通牒だと突きつけたものの、自民の申し入れで30日、自公幹事長の再会談が行われることになった。
公明の石井は「それでもお話をしたいということでありますので、そこまでお断りすることもないかなと思って……」とか言っていたが、なんなのだ、この茶番は。別れ話を切り出したものの未練たっぷりのカップルみたいだ。お互い不満を抱えていても、結局のところ「俺には(選挙で)尽くしてくれるオマエが必要なんだ」「やっぱり(政権与党から)離れられない」とばかりに元サヤに収まるのは目に見えている。
29日、岸田首相は長男の秘書官を事実上更迭すると発表したが、その直前には自民党本部での役員会を終えてから、茂木幹事長、東京都連会長の萩生田政調会長、森山選対委員長と協議していた。公明対策を話し合ったとみられる。
G7広島サミット効果で支持率の大幅アップが期待されたのに、長男の問題と公明との折衝で解散に打って出る機運は急速にしぼんでしまい、岸田も焦っているのだろう。それは結局、岸田も選挙のことしか考えていないということだ。
それにしても、選挙の心配しかしない高等遊民の世襲政治家と、日々の生活も不安なわれわれ庶民の格差には、ため息しか出ない。自公の痴話喧嘩も、勝手にやってろという気分になる。自分たちではなく、国民のための政治をしてほしい。
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