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※紙面抜粋
※文字起こし
ドンチャン騒ぎの長男もおとがめなし(C)日刊ゲンダイ
しょせん、薄っぺらいパフォーマンスの効果は、長く続かないということだ。はやくも化けの皮が剥がれ始めている。
広島サミットが閉幕した翌日(22日)、自民党の役員会に出席した岸田首相は、「国際社会の結束を高める、歴史を刻むサミットになった」と、サミットの成果を誇らしげに報告。岸田周辺によると、サミットを終えた首相は、高揚しているように見えたそうだ。
実際、岸田は得意の絶頂だったに違いない。広島サミット後、内閣支持率は急上昇し、株価も3万円を軽く突破。自民党内からは「いますぐ解散すべきだ」との声が上がり、一気に“解散風”が吹きあがった。
しかし、あれから1週間、もう馬脚をあらわしている。いかにも岸田政権らしい失態、失策が次々に明らかになっているのだ。
その最たるものが、岸田の秘書官をつとめる長男(32)が、首相公邸で乱痴気騒ぎの「忘年会」をしていた一件だろう。さすがに自民党幹部も「言語道断だ。こういうのが政権にとって一番ダメージになる」と早期更迭を求めているほどである。
さらに、政権をあげて普及を急ぐマイナンバーカードも欠陥が続出。「マイナ保険証」では誤登録が相次ぎ、「マイナポイント」では、ポイントを受け取れなかった住民と、二重に受け取る住民がいるなど実害まで出始めている。強引に普及させようと、保険証廃止という“ムチ”と、2万円分のポイント配布という“アメ”を使ったことが、完全に裏目に出た格好である。
ここまでデタラメが続くと、せっかく上昇した内閣支持率も元に戻るのではないか。
そもそも、大マスコミと岸田が「歴史に刻まれる」と絶賛した、あの広島サミットが本当に成功だったのか怪しいものだ。
なにしろ、昨年11月にインドネシアで開かれたG20サミットでは、すべての核保有国を念頭に「核兵器の使用・威嚇は許されない」と宣言しているのに、広島サミットで発表された「広島ビジョン」には、「核廃絶」の文字はなく、あろうことか「防衛目的のために役割を果たし、侵略を抑止し、戦争や威圧を防止すべきとの理解」などと、核兵器の正当性を主張する始末である。
これでは、カナダに住む被爆者のサーロー節子さん(91)が「サミットは失敗だった。死者に対する侮辱だ」と失望したのも当然だろう。
立正大名誉教授の金子勝氏(憲法)がこう言う。
「岸田首相は、本気で『核なき世界』を訴えるのではなく、どうすれば支持率がアップするかを最優先したのだと思う。さもないと『広島ビジョン』で核兵器を正当化したりしないでしょう。重視したのは、G7の首脳が揃って慰霊碑に献花する絵だったのではないか」
もし、岸田が各国首脳を説得し、「核廃絶」を宣言していたら、広島サミットは歴史に刻まれ、日本国民の心に深く残っただろう。しかし、しょせん薄っぺらいパフォーマンスにすぎなかったサミットのことなど、多くの国民は忘れているのではないか。
少子化対策は“やってる感”ミエミエ
岸田政治の中身のなさを象徴しているのが「異次元の少子化対策」だ。岸田は「少子化への対応は待ったなしだ」などと口にしているが、対策の中身はどれもこれも小粒で的外れ。とても少子化を解消できるとは思えない内容だ。
岸田政権は来年度からの3年間を少子化対策の「集中取り組み期間」として、年間3兆円規模の追加予算を確保。うち、1兆2000億円を目玉の児童手当の拡充に充てる方針だが、ハッキリ言ってセコいバラマキでしかない。
支給対象を高校生まで拡大し、1人当たり1万円を支給。また、第3子以降の支給額を現行の1万5000円から1人3万円に倍増させる案を検討している。しかし、この程度で「子どもを持ちたい」と思う国民がどれだけいるのか。「少子化対策」ではなく「子育て支援」でしかない。
子どもが増えない最大の理由は、経済的な不安から若者が結婚に二の足を踏んでいることだ。経済的な不安が払拭されなければ、少子化が解消されることはないだろう。
だいたい、児童手当の支給拡大が少子化対策の目玉とは、いつもの“やってる感”がミエミエである。
経済ジャーナリストの荻原博子氏がこう言う。
「対策の中身からは、岸田首相の本気度がうかがえません。子どもを増やすには、誰もが安心して結婚でき、子どもを持とうと思える社会をつくるしかない。まず、すべきことは高等教育の無償化でしょう。北欧では無償化が進んでいるおかげで優秀な人材が育ち、新しい産業も生まれている。新産業が出てくれば結果的に経済が好循環し、誰もが安心して結婚できる社会をつくることにつながるでしょう。岸田首相の対策からはそうしたビジョンが見えない。目玉政策の児童手当の拡充は、来たる選挙向けのパフォーマンスとしか思えません」
自民への不満が拡大中
こんな男に総理大臣を任せていたら、日本の将来は真っ暗だ。さすがに国民も口先だけで空っぽの岸田の正体に気づき始めているのではないか。
なにしろ、物価高は止まらず、足元の生活は苦しくなるばかりだ。実質賃金は12カ月連続で前年同月を下回っている。
総務省の家計調査によると、とうとう年収550万円未満の世帯は、食費などがかさみ、教育費まで削り始めている。教育費の削減は最後の手段だ。これでは、経済無策の岸田に批判が向くのも当然だろう。
実際、岸田自民に対する不満は確実に広がってきている。先月の統一地方選の都内区議選では、自民候補の大量落選が相次いだ。杉並区、渋谷区で7人、大田区は6人、江戸川区で5人が落選──といった具合だ。21日投開票の東京・足立区議選でも、自民は19人擁立したが、現職5人、新人2人の7人が落選。選挙前の17議席から5議席も減らした。無党派層が多い東京で岸田自民への不信感が高まっているのは間違いない。
政治アナリストの伊藤惇夫氏はこう言う。
「内閣支持率は上がっていますが、世論調査を精査すると、個別の政策への反対は根強い。国民は選択肢がないから仕方なく岸田政権を支持しているのが実態です。消極的支持というのは、ちょっとしたきっかけで一気に離れるもの。これから、防衛費倍増や少子化対策の財源を巡る議論が始まる。今後、問題が噴出し、支持率が急落することも考えられます」
「早期解散」説が流れているが、いま選挙をやれば国民から「NO」を突きつけられるに違いない。しかも、連立を組む公明党との関係に亀裂が入り、これまでの選挙協力態勢がどうなるか見通せない。解散すれば、岸田に鉄槌が下るのは確実だ。
「一見、誠実そうに見えて、岸田首相が国民に真摯に向き合おうとしないことに国民は気づき始めていると思います。大軍拡に道を開いた安保関連3文書の改定を巡っても、野党からの追及を免れた昨年の臨時国会閉会後に閣議決定し、その後、国民に説明することなく、米国への手土産にしている。国会での質問には『手の内を明かす』との理由で説明を拒否するありさまです。さらに、広島サミットでは被爆者に寄り添う姿勢は皆無で、公邸でドンチャン騒ぎした長男はおとがめなしときています。岸田首相の不誠実さに国民が気づくのも当然でしょう」(政治評論家・本澤二郎氏)
薄っぺらなパフォーマンスで国民をだませると思ったら大間違いだ。
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