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全部ゼレンスキーに持って行かれたG7広島“自己満足”サミットを総括する
https://www.mag2.com/p/news/576697
2023.05.25 『きっこのメルマガ』 まぐまぐニュース
自身の地元広島で開催したG7サミットを、見事政権支持率アップにつなげた岸田首相。ゼレンスキー大統領の電撃来日や各国首脳の広島平和記念資料館の視察などが大きな注目を集めましたが、はたしてこの国際会議は実のあるものだったのでしょうか。今回の『きっこのメルマガ』では人気ブロガーのきっこさんが、国内からG7に対して発せられたさまざまな意見を紹介。その上で、共同声明「広島ビジョン」については厳しい評価を下しています。
せいぜい2.5点。岸田の自己満足のため開かれた広島サミットの評価
広島市で開催されていた「G7広島サミット」が、3日間の日程を終え、21日、閉幕しました。取りあえず、大きなテロなどが起こらずに無事に終了したことだけは良かったですが、その評価は様々です。政権に極めて近いスタンスのメディアが諸手を挙げて「大成功!」と報じた一方で、広島の被爆者たちからは厳しい批判の声が相次いでいます。
カナダから広島市に帰郷している被爆者のサーロー節子さん(91)は、岸田首相が主導した「広島ビジョン」の核軍縮に関する声明について、「国際社会には核兵器禁止条約がありますが、声明ではひと言も触れていないので驚きました。広島に来て被爆者と会い、資料館に行って考える機会もあったのに、これまで議論されて来たようなことしか書けないのかと、失望しました」と述べました。そして、「自国の核兵器は肯定し、対立する国の核兵器だけを非難する内容の声明が、被爆地から発信したのは許されないことです」と厳しく批判し、今回のサミットを「失敗」と結論づけました。
15歳のときに被爆し、広島を訪れる修学旅行生などに被爆体験を伝える語り部を続けている広島市の切明(きりあき)千枝子さん(93)は、「核保有国を含めたG7の首脳が原爆資料館を訪れて核兵器の悲惨さを目の当たりにすることで、核廃絶の糸口になることを願っていましたが、その気配がないのが残念です。広島が利用されたのなら悲しいことです」と肩を落としました。
日本原水爆被害者団体協議会(被団協)の木戸季市(すえいち)事務局長(83)は、「核廃絶を正面に据えた議論を求めて来たのに、核の傘の下で戦争を煽るような会議となってしまったことに怒りを覚えます。核兵器廃絶への希望を完全に打ち砕かれました」と厳しく批判しました。
浜住治郎事務局次長(77)は、「核兵器禁止条約には一切触れず、核の抑止力や核の傘を強調した内容には、被爆者の一人として憤っています。広島で開催した意味があったのでしょうか?」と疑問を呈しました。和田征子事務局次長(79)は、「『核なき世界を目指す』という文言だけはありますが、具体的なプロセスが一つもありません」と失望した様子で述べました。
また、被爆者ではありませんが、2017年にノーベル平和賞を受賞した「ICAN(核兵器廃絶国際キャンペーン)」の国際運営委員をつとめる川崎哲(あきら)さん(55)が、閉幕後にメディアの取材に応じました。川崎さんは「世界の多くの指導者が原爆資料館を訪れたことは良かったが、実際の核兵器廃絶の行動が伴わないといけない。その意味では成果がなく、とても失望している」と述べました。そして、「広島ビジョン」については、「相手の核兵器は悪いが自分たちの核兵器はいい、と核保有各国が言っている限り、起きることは核軍拡競争であり、最終的にはわれわれ全員の破滅だ」と厳しく批判しました。
ゼレンスキーを支持率稼ぎに利用した岸田の強か
…そんなわけで、リモート参加の予定だったウクライナのゼレンスキー大統領の訪日によって、完全に主役の座を奪われてしまった岸田文雄首相でしたが、岸田首相も十分にゼレンスキー大統領を支持率稼ぎに利用できたと思います。それは、岸田首相らしからぬ強気の発言の数々から伝わって来ました。
議長の岸田首相は、「G7とウクライナの揺るぎない連帯を示すとともに、法の支配に基ずく自由で開かれた国際秩序を守り抜く決意を新たにするとのメッセージを力強く示せた」などと、ウクライナとの連携、つまり、ロシアとの対決姿勢を強調したのです。閉幕後の会見でも、「対ロシア制裁を維持・強化し、その効果を確かなものとするために、(ロシアによる)制裁の回避・迂回防止に向けて取り組みを強化していく」と、ロシアを名指しで敵対視しました。しかし、本当にこれで良かったのでしょうか?
ゼレンスキー大統領としては、G7の強い援護射撃を再確認できただけでなく、バイデン大統領から「EUの同盟国からのF16戦闘機の供与を容認する」という言質が取れたのですから、これだけでも大成功でした。その上、グローバル・サウスを束ねるインドのモディ首相と対面できたのですから、これも棚ボタです。
ロシアとのパイプも大切にしているモディ首相ですから、「紛争の解決方法を見出すために協力する」、つまり、「ウクライナの味方をする」ではなく、あくまでも「和平の仲介に寄与する」と述べただけですが、G7という場がなければ実現できなかった対面ですから、これは大きいです。
ま、インドの外交は、ヒンドゥー教の最高神シヴァの三面神のように、1つの顔はアメリカや日本を始めとした西側諸国の方を向きながら、別の顔はロシアの方を向いており、3つめの顔が周辺のグローバル・サウスに向いているのです。これが一番賢いやり方でしょう。
しかし、G7以外の招待国がどのように動こうとも、主役はG7であり、所詮は「西側諸国の西側諸国による西側諸国のためのサミット」なのです。議論は西側諸国の利益を最優先したシナリオに沿って進められ、その結果、「休戦や和平のための橋渡し」を模索したのではなく、ロシアを名指しで煽って火に油を注いだのです。「ドラクエ4」の作戦コマンドで言えば、「いのちだいじに」ではなく「ガンガンいこうぜ」を選択したわけです。そして、岸田首相が掲げた「核なき世界」というご立派なお題目とは、完全に正反対の方向へ進んでしまったのです。
2016年5月の「G7伊勢志摩サミット」の時、当時のバラク・オバマ大統領は、現職のアメリカ大統領として、初めて被爆地の広島を訪問し、広島平和記念資料館などを視察しました。そして「歴史的な出来事」だと報じられました。しかし、オバマ大統領が広島平和記念資料館に滞在したのは僅か10分だけ。それも、東館の「導入展示」を見ただけで、本館の「被爆の実相展示」は見なかったのです。
しかし今回は、イギリスのスナク首相が、3歳で原爆の犠牲になった鉄谷伸一ちゃんの焼けた三輪車やボロボロになった学生服などを見たと明かし、「ここで起きたことを忘れてはならない」と述べました。これは本館の「被爆の実相展示」なので、今回の各国首脳らは、本館へも足を運んだようです。この点だけは、表面を取り繕うだけの安倍晋三元首相とは違い、きちんと仕事をした岸田首相を評価したいと思います。
ただし、「被爆の実相展示」を見たのに、それでも核軍縮への具体的な道筋を示せなかったどころか、自分たちの核だけを正当化してロシアを挑発する始末。絶対に逆らえないバイデン大統領がいるだけでなく、ゼレンスキー大統領の訪日で舞い上がっちゃったのかもしれませんが、今回、終始コーフン気味の岸田首相を見ていたら、ジャイアンの後ろに隠れて相手にケンカを売るスネ夫の姿が重なりました。
西側以外には「寝言」でしかないG7共同声明「広島ビジョン」
…というわけで、評価が様々な今回の「G7広島サミット」ですが、閉幕翌日の5月22日(月)のTBSラジオ『スタンバイ!』の「トーク・ファイル」は、「G7サミット、5段階で評価してください」というテーマだったので、その結果を紹介したいと思います。
森本毅郎さん 「たくさんメールをいただきましたが、結果から言っちゃいますと、5点満点が4%、4点が15%、3点が30%、2点が36%、1点が15%、平均すると2.55点でした。けっこう手厳しいですね。それでは、いただいたメールを紹介していきます」
横浜市の田中さん70代の女性 「4点ですかね。結局は全部、ゼレンスキーさんが持って行った感じですが、演出は上手だった。出迎えの場面、記念植樹、記念撮影の場所、かなりの費用を使っての選挙運動に見えましたけどね」
埼玉県の宮園さん66歳 「1点ですね。核なき世界という言葉とはかけ離れた宣言でした。ロシアは核を使ってはダメ、でも私たちは脅し続けるために核を持つよ、だってそれが現実だもん。原爆資料館を見学したというのに、こんな結論でいいんですか?広島をうまく利用しましたね、岸田さん。広島市民の怒りが分かりますよ」
三鷹市の76歳の男性 「非常に残念な結果だと思います。5段階の評価なら、せいぜい2点ですね。ロシアや中国に対して、結束して対抗することばかりが全面的に打ち出され、ウクライナ戦争の終結や核兵器廃絶への具体的な道筋については議論もされず、何も打ち出されませんでした」
匿名希望の方 「開催できたことで3点。見栄えのいい映像がいっぱい撮れたし、皆さん、満足できたんじゃないんですか?広島を自己満足のために利用し尽くしたこと、(G7の)存在意義が失われてしまう可能性まで残したことが減点だと思います」
…そんなわけで、結局のところ、ロシアによる核の威嚇を徹底的に批判しつつ、自分たちの核保有は世界平和のための大切な抑止力だと公言した今回のG7共同声明「広島ビジョン」は、西側諸国という団地の中だけでしか通用しないゴミ出しのルールであって、この団地に住んでいない人たちの耳には、単なる「寝言」にしか聞こえなかったことでしょう。
プーチン大統領と習近平主席も招待して、世界のステージの上でバイデン大統領やゼレンスキー大統領と握手でもさせていたら、いつも辛口なあたしでも岸田首相に5点をつけてあげたのに…なんて思いました。
(『きっこのメルマガ』2023年5月24日号より一部抜粋・文中敬称略)
image by: The White House − Home | Facebook
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