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※紙面抜粋
※2023年5月23日 日刊ゲンダイ2面
※文字起こし
ーダー気取りで有頂天。岸田首相が踏み出した危険な一歩(代表撮影)
G7広島サミットで注目された岸田首相は有頂天だ。サミット期間中の週末に実施された世論調査では、内閣支持率が10ポイント近くも上昇。自民党内では、「ゼレンスキー効果だ」「この勢いなら圧勝できる」と、早期解散を望む声が高まっている。
サミット閉幕から一夜明けた22日、記者団から成果について聞かれた岸田は「当初の狙いを果たすことができた」と自画自賛。G7や招待国の首脳らが平和記念公園内の原爆資料館を訪問したことについて、「世界の政治のリーダーに被爆の実相に触れてもらうことについて、大きな成果を上げることができた」と胸を張った。
もちろん、被爆の実態を知ってもらうことには意義がある。わずか40分程度の見学時間でG7首脳に被爆地の惨禍がどこまで伝わったかは分からないが、これを機に核軍縮・核兵器廃絶の機運が高まれば、地元への利益誘導という批判も無視して広島でサミットを開催したかいがあったというものだろう。
だが、19日に発表された核軍縮に関する「広島ビジョン」は、核兵器廃絶に向けた実質的なメッセージは何ひとつなく、ロシアを名指しして核兵器の使用や威嚇を許さないと牽制するものだった。被爆者や市民団体からは怒りと落胆の声が相次いでいる。
核兵器の非人道性を訴え続けているカナダ在住の被爆者、サーロー節子さん(91)は「核兵器禁止条約など大切なものがなかった。怒りというか本当にびっくり仰天」と驚いていた。彼女は岸田の遠縁にあたるが「自国の核兵器は肯定し、対立する国の核兵器を非難するばかりの発信を被爆地からするのは許されない」と痛烈批判し、広島サミットは「大変な失敗だった」と断じた。
ロシアを敵視した作戦会議
広島県原爆被害者団体協議会の箕牧智之理事長(81)も、「広島ビジョン」がG7各国の核保有や“核の傘”による安全保障を正当化し、「核抑止」を肯定する内容だったことに「まったく賛成できない」と拒否反応で、「ロシアの核の脅しも問題だが、ますます世界を分断させることにならないか」と懸念を表明した。
「核軍縮に踏み込むことが期待された広島サミットですが、ゼレンスキー大統領を招待し、電撃訪日を演出したことで、終わってみればロシアとの戦争をあおり、ウクライナへの武器供与を話し合う会合になってしまった。原爆を投下された広島の地が、ロシアを敵視して壊滅させるための軍事作戦会議の舞台となったのです。岸田首相はそのリーダー役を気取り、ウクライナへの軍事支援をまとめ上げて悦に入っている。被爆地選出を売りにしていながら、こんな裏切りはないでしょう。平和を希求するヒロシマを冒涜しています」(政治評論家・本澤二郎氏)
1991年から2期8年にわたり広島市長を務めた平岡敬氏(95)の怒りは苛烈だ。朝日新聞の取材にこう話している。
<岸田首相が、ヒロシマの願いを踏みにじった。そんなサミットだった><19日に合意された「広島ビジョン」では、核抑止力維持の重要性が強調されました。戦後一貫して核と戦争を否定してきた広島が、その舞台として利用された形です>
<核兵器禁止条約に署名・批准した国と地域に「広島が核を許容した」と思われてしまう>
<G7首脳との間では、軍事的な支援の強化が約束されました。「広島選出」を強調する岸田首相は、戦争を是認し、激化させることを広島の地で許したことになります。核を否定し、平和を訴えてきたヒロシマを、これ以上利用するなと言いたい>
欺瞞の政治ショーで内閣支持率は爆上がり
「中身のない『広島ビジョン』を読めば、原爆資料館の見学も、その後のG7首脳による慰霊碑への献花もパフォーマンスでしかない。ところが、NHKはじめテレビ局は、岸田首相のリーダーシップで重大なミッションが達成されたかのように報じ、G7首脳がそろって宮島の厳島神社を訪れる様子なども延々と中継していた。このサミットでは、訓練に数カ月かかるF16戦闘機をウクライナに供与することも決まりましたが、それは少なくとも数カ月は戦争を継続させることを意味する。
半年後にはF16がロシアを空爆し、追い詰められたプーチン大統領が核のボタンに手をかける可能性が高まるのです。なんと不毛なサミットなのか。みんなそろって厳島神社で戦争勝利の祈願でもしたのでしょうか。ひどい欺瞞の政治ショーでした。しかし、大メディアは岸田首相が立派なことをしているようなイメージづくりに協力するから、国民は錯覚して支持率が跳ね上がった。そうやって支持を得た首相が何をやるかといえば、大軍拡に突き進もうとしているのですよ。その礎を広島の地で築こうと画策するなんて、倒錯しているとしか思えません」(本澤二郎氏=前出)
岸田が3月にウクライナを訪問した際、手土産の「必勝しゃもじ」をゼレンスキーに贈ったことが「戦争は、受験や野球の試合とは違う」と批判されたものだが、この必勝しゃもじも厳島神社に由来するものだ。日露戦争に出征する若者たちが、「敵を召し捕る」の語呂合わせで縁起物のしゃもじを厳島神社に奉納していったという。
軍事と経済はトレードオフ
今回のサミットに出席した首脳らへの土産は万年筆や蒔絵グラスなどで、必勝しゃもじは贈られなかったようだが、ロシアと中国を明確に敵視し、先頭に立ってウクライナを鼓舞した岸田は確実に危険な一歩を踏み出したと言える。
岸田政権は防衛費を今後5年間で43兆円に増やし、巡航ミサイル「トマホーク」を400発購入し、海上自衛隊のイージス艦8隻すべてをトマホーク搭載可能に改修する。
麻生副総裁らは「岸田総理は安倍元総理にもできなかったことを実現している。リーダーシップは安倍よりある」と手放しで褒め称えているが、この国が防衛費増額や敵基地攻撃能力保有の軍拡路線に乗り出すその先に、何があるのか。
「米国の軍事分担方針に従い、防衛費を43兆円に増やせば、日本は世界3位の軍事大国になる。それは果たして身の丈に合ったことなのでしょうか。株価が上がったといっても、国内の産業は空洞化し、国際競争力も下がり続けている。少子化問題も根深く、これだけ国力が低下しているのに、軍事に傾斜すれば経済力はますます落ちる一方です。しかも、軍拡の財源は増税です。今も物価高に苦しんでいる国民生活が大増税に耐えられるのか。
国土防衛や抑止力以前に、社会基盤が内部崩壊しかねません。かつて『富国強兵』で国を誤ったのに、その反省も忘れて、今度は『強兵貧国』の道を歩もうとしている。大国志向の妄想に取りつかれているのか、現実的に戦争の準備を始めているのか、いずれにしても暗黒の未来と言うほかありません」(法大名誉教授・五十嵐仁氏=政治学)
軍事力と経済力は常にトレードオフの関係にある。戦後日本がめざましい成長を遂げたのも、専守防衛に徹して経済に注力できたことが大きい。その間も、世界中で戦争はあった。時には米国からの参戦圧力もあった。
自衛隊の戦地派遣や、中には憲法改正を試みる政権が誕生しても、かつては世論がブレーキ役になっていたのだが、悲惨な戦禍と敗戦を肌感覚で知る世代が減り、戦争支援で結束したG7サミットを国民が評価して支持率が爆上がりしている現状は危うい。安倍政権以降、あっという間に国の姿が変わってしまった。
6月21日の通常国会会期末まで1カ月を切り、解散・総選挙があるかどうかが政局の話題の中心になっていく。だが、本当の焦点は大軍拡・大増税だ。いま、この国には「新たな戦前」どころか、「いつかの戦前」のようなきな臭さが漂っている。
広島サミットのショーアップに浮かされて政権を支持した国民が、平和の本当の尊さに気づいた時には、もう手遅れかもしれないのだ。
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