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※紙面抜粋
※文字起こし
やりたい放題(C)日刊ゲンダイ
毎度のことだが、選挙が終わればやりたい放題ということか。統一地方選が終わった途端、国民生活や日本社会に大きな影響を与える法案が次々と衆院で可決されている。
28日、衆院法務委員会では、怒号が飛び交う中、外国人の収容や送還ルールを見直す入管難民法改正案の採決が行われ、与党と一部野党の賛成多数で可決した。
入管法改正案は2年前にも国会に提出されたが、廃案になったシロモノだ。背景には、名古屋の入管施設でスリランカ人のウィシュマ・サンダマリさんが亡くなったことなどを受けて日本の入管行政への批判が高まったことがある。改正案は長期収容の解消を名目に、内戦や差別から逃れて来た難民申請者の強制送還を進めるようなものだったこともあり、反対デモも頻発。当時の政府は入管法の“改悪”を断念せざるを得なかった。
ところが、その改正案の大枠が踏襲されたまま、今国会に再提出され、遺族側や支援者の深刻な懸念をよそに成立に向けて着々なのだ。
もちろん、よほどの世論の後押しがあれば別だが、数の力で圧倒的に劣る今の野党が廃案に追い込むことは難しい。窮余の策で修正協議が進んでいた。
立憲民主党は難民認定のための「第三者機関の設置」を求め、与党側は設置の「検討」を法案の付則に書き込むと譲歩。修正案でまとまりかけたのだが、土壇場で立憲は法案そのものに反対することを決めた。そのため与党側は立憲に譲歩した部分を削除し、ほぼ原案通りの法案が自公と日本維新の会、国民民主党などの賛成多数で可決されたのである。大型連休明けには衆院本会議で可決、参院に送られる運びだ。
「議論が深まらないまま、野党も巻き込んだ数の力で押し切ってしまう。本来は、外国人の技能実習制度を今後どう見直すのか、移民政策はどうするのかといった課題と合わせて総合的に考え、議論する必要があるテーマのはずです。入管法の改正だけを急いでやる必要があるのか。入管法に関しては、2年前と比べて世論の関心が低かったことも法改正を急ぐ与党側にはプラスに働いた。大メディアが法案の問題点をまるで報じようとしないからです」(政治ジャーナリスト・角谷浩一氏)
「自公維国」の4党が賛成でどんな法案も通ってしまう
入管法だけではない。23日に統一地方選の後半戦と衆参5補選を終えてからというもの、この1週間で重要法案が続々と仕上げに入り、怒涛の勢いで成立に向けて突き進んでいる。
25日に衆院の特別委員会で、保険証を廃止してマイナンバーカードに一体化する「マイナンバー法改正案」が可決。26日には衆院経産委で、60年を超える原発の運転延長を可能にする「GX(グリーントランスフォーメーション)脱炭素電源法案」が可決。どちらも、自公と維新、国民が賛成した。入管法改正案と同じ枠組みだ。
これら2法案は27日の衆院本会議で可決され、衆院を通過。今国会中の成立が確実視されている。
だが、マイナンバー法案ひとつ取っても問題は山積だ。マイナンバーカードの取得は「任意」と政府は言いながら、保険証を廃止して「マイナ保険証」に一本化するなんて、実質的な強制ではないか。
だったらいっそ取得を義務化して全国民にマイナカードを配ればいいのに、あくまで「任意」の建前を崩さないのは、個人情報流出などのトラブルが起きた際に国が責任を負いたくないからだろう。申請は任意だから、何か起きても自己責任という理屈だ。
「マイナンバーカードがなければ病院にもかかれない状態に国民を追い込んでおいて、任意を強調するのは詭弁というほかない。原発60年稼働にしても、総論では反対しにくい脱炭素の束ね法案に紛れ込ませるという姑息なやり方です。このような悪法が、まともな審議もないまま続々と可決されていく。ひとたび閣議決定すれば、自公維国の4党が法案に賛成して何でも通ってしまうのだから、統一地方選で維新が躍進したところで、岸田政権には痛くもなんともないということです。むしろ、国会審議から逃げてのらりくらりゴマカしさえすれば、維国の賛成で苦労なく法案成立できるようになったと喜んでいるんじゃないですか」(法大名誉教授・五十嵐仁氏=政治学)
強行採決よりタチが悪い令和の大政翼賛を許すメディア
第2次安倍政権でも、数の力を頼んだ強行採決が繰り返され、民主主義の冒涜だと批判を浴びたものだ。国会の現状は、その当時よりも危うい。与党が通したい法案に維新と国民が乗ってくれるのだから、少なくとも2つの野党が賛成した形になる。強行採決する必要もないのだ。
大メディアは「法案が成立しました」と伝えるだけで、途中経過も問題点も報じないから、賛成多数で成立した悪法に反対する立憲や共産党がまるでダダをこねているように見えてしまう。
どう考えてもおかしな法案に反対したところで、大メディアは「一部野党が反発」という常套句で報じるようになって久しい。これは政府・与党目線の表現だ。大メディアがこういう呆けた報道をしていると、それを目にする有権者も、反対する野党には理がないかのように感化されていくわけだ。「是々非々」とか言う維新と国民が正しい野党だと思わされる。その結果が、統一地方選での維新の躍進である。
国会の会派別勢力を見ると、すでに「自公維国」で衆院、参院とも7割を超す議席を擁している。この4党で何でも通せる状況なのだ。次期国政選挙では、維新がさらに議席を増やし、野党第1党に躍り出るという観測もある。令和の大政翼賛体制である。25日から、防衛装備品の輸出ルールを定めた「防衛装備移転三原則」の制限緩和を巡る自公の実務者協議が始まった。国会では、防衛産業の生産基盤強化法案も審議入りしている。この調子では軍拡も、そのための国民負担も4党の合意であっさり決まってしまいそうだ。
「立憲は入管法でもGX法でも迷走し、維新に主導権を奪われてしまった。反対なら反対と、最初から覚悟を決めて対決すべきでした。協力体制を築けないかと維新に色目を使っている場合ではなかったのです。野党第1党の立憲がフラフラしているから、岸田自民がやりたいことを維新が煽り、国民がたきつけ、立憲と共産を蚊帳の外に置いて悦に入る国会になっている。数の力で押し切る暴政が加速しています。そのうえメディアが腐敗しきっている状況ですから、国民も真実を見抜く目を培う必要がある。このままでは、国民が事情をよく分からないうちに既成事実がつくり上げられ、戦争国家に一直線ということにもなりかねません」(五十嵐仁氏=前出)
国民の玉木代表は「憲法と安全保障、エネルギー政策では、われわれにもっとも近い政党だ」と、維新との連携に意欲マンマンだ。
自公維国の枠組みが完成すれば、改憲も時間の問題だろう。止まらない岸田暴政を放置している大マスコミの機能停止は度し難い。
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