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憲法記念日に向けて(1)「緊急事態条項」は不必要だ 現行憲法の下で法律を整備すれば済む話 ここがおかしい 小林節が斬る!
https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/news/322164
2023/04/27 日刊ゲンダイ
小林節慶応大名誉教授(C)日刊ゲンダイ
1955(昭和30)年に結党して以来、自民党は憲法改正を党是としてきた。その一番の狙いは9条の改正である。2012年に党議決定された改正草案に明記されているように、自衛「戦争」と「国防軍」を認めて、普通の軍事大国になることを目指している。
しかし、9条改憲には国民の抵抗感が強いため、まずは国民の過半数が賛成しやすいものから「お試し改憲」をということで「緊急事態条項の新設」に焦点が移った感がある。
それに対して維新と国民民主が同調する動きを示したために、今年は史上初の改憲国民投票が提案される可能性がある。
しかし、この提案は後述するように全く不必要なもので、こんなもののために800億円もの国費を使って、2カ月以上もの公論のために政治的空白をつくることは無駄である。
自民党の広報資料は次のように説明している。
「有事や大規模災害の時に国民の生命、財産を保護することは国家の最も重要な役割である。しかし、日本にはそのための規定がないから、それを憲法に明記しよう」
しかし、現行憲法は、12条と13条で、人権も公共の福祉に譲らなければならない場合がある旨を明記している。だから、非常時(戦争、大災害、パンデミック)には、国家の機能を維持するという「公共の福祉」のために、人権を制約できる法律(国民保護法、災害対策基本法、感染症対策基本法等)が現に整備されている。だから、改憲を行う必要などない。
もちろん、東日本大震災、コロナ・パンデミック等の実体験に照らしてそれらの法律を整備する必要は常にある。
自民党が2012年に党議決定した緊急事態条項は要するに次のものである。
「首相が緊急事態を宣言したら、首相は、本務の行政権に加えて、国会から立法権と財政処分権を奪い、地方自治体に対する命令権も持つ。さらに、私たち国民は公の命令に従う義務を負う」
まるで首相に対する全権委任法である。
このように、自民党が考えている緊急事態条項は、現実に不必要なだけでなく、極めて危険なものでもある。つまり、提案されてきたら否決する以外にない代物である。 (つづく)
小林節 慶応大名誉教授
1949年生まれ。都立新宿高を経て慶大法学部卒。法学博士、弁護士。米ハーバード大法科大学院の客員研究員などを経て慶大教授。現在は名誉教授。「朝まで生テレビ!」などに出演。憲法、英米法の論客として知られる。14年の安保関連法制の国会審議の際、衆院憲法調査査会で「集団的自衛権の行使は違憲」と発言し、その後の国民的な反対運動の象徴的存在となる。「白熱講義! 日本国憲法改正」など著書多数。新著は竹田恒泰氏との共著「憲法の真髄」(ベスト新著) 5月27日新刊発売「『人権』がわからない政治家たち」(日刊現代・講談社 1430円)
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