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※紙面抜粋
※2023年4月22日 日刊ゲンダイ2面
※文字起こし
千葉5区で応援演説をする岸田文雄首相(C)日刊ゲンダイ
衆参5つの補欠選挙と統一地方選・後半戦の投開票日があす(23日)に迫った。とりわけ衆参5補選は岸田首相への「中間評価」。この政権でも顕著な「政治の私物化」「権力の乱用」にノーを突きつけるチャンスだ。衆院では千葉5区、和歌山1区、山口2区、4区、そして参院大分の有権者の持つ1票はプラチナチケットも同然である。
自民党は補選の勝敗ラインを「3勝2敗」としているが、どの選挙区も大接戦。選挙終盤になっても自民「全勝」も「全敗」もあり得る情勢だ。特に山口2区が大接戦となっている意義は大きい。
自民の候補は岸信介のひ孫であり、安倍晋三元首相の甥で、岸信夫前防衛相の長男の信千世(31)だ。出馬表明とともに自身のホームページに「家系図」を掲載し、家柄と血筋をアピール。代議士にもなっていないのに東京で政治資金パーティーを開くなど庶民感覚とズレまくった上から目線の“サラブレッド”に、地元が反感を覚えている証拠だろう。
世襲を当然視し、実績のない東京育ちのボンボンでも、藩主のごとく地盤を継がせるのは「政治の私物化」そのもの。自民がこの選挙区を落とせば政治に大きな風穴があき、逆に勝てば無風のままだ。自民党政治家の2世同士が争う東京・江東区長選が典型だが、ますます縁故主義全開の政治が加速しかねない。
山口2区の有権者が反乱を起こせば私物化政治は変わる。それだけ1票の価値は重い。「政治の私物化」といえば、約3年前からくすぶり続ける「日本学術会議」問題はロコツだ。岸田政権は組織見直しを盛り込んだ学術会議法改正案の提出をいったん見送ったが、まだまだ油断はできない。
「任命拒否」を制度化する改正法案
岸田が引っ込めた改正法案は会員選考方法を変更し、第三者による「選考諮問委員会」を関与させるのが柱だ。諮問委の顔ぶれは、首相が議長を務める内閣府の総合科学技術・イノベーション会議(CSTI)の有識者メンバーらと協議し、学術会議の会長が決める。内閣府は諮問委の委員を産業界などから選ぶことを想定。会員選考時に学術会議側は「諮問委の意見を尊重しなければならない」と定めている。
問題は諮問委の構成に口を挟むCSTIの存在だ。メンバーは両議院の同意を得て首相が任命。NHK会長や日銀総裁など多くの国会同意人事と同様、その人選は時の政権の意向が反映される。要はCSTIを介して政権側が学術会議の会員選考に口出しできる立て付けとなっており、政府から「独立して職務を行う」と定めた学術会議法の趣旨にも反する。会議側が対立するのも当然だ。
そもそも、対立の発端は2020年10月に当時の菅首相が突然6人の会員候補の任命を拒否したこと。6人は安全保障関連法に反対の立場だ。政権に逆らう候補への「見せしめ」としか考えられないが、菅は一貫して理由を明かさず、NHKの番組で「説明できることとできないことがある」と逆ギレする一幕もあった。
政権が代替わりしても「任命問題は決着ずみ」との立場を崩さず、学術会議側が求める理由説明に応じないまま。その間、政府・自民党内は学術会議という組織のあり方を俎上に載せ、会員選考に矛先を向けた。現職会員らの推薦する候補を首相が任命する現在の仕組みは「仲間内で人事を決めている」(自民党幹部)というわけだ。
海外の国を代表する学術機関でも同様の選考方式を採用しているのに、政府は「透明性を高めるため」と会員選考の見直しを学術会議側に要求。政権側の人事介入の余地を残し、菅の任命拒否を制度化するような改正法案への譲歩を迫った。
民主主義への「不信任」に票を投じるのか
任命拒否の理由は「不透明」なクセに、「透明性」もへったくれもありゃしない。論点ずらしの言いがかりに過ぎないが、政府・自民党が強気でいられるのは毎年度、学術会議に投じる10億円の国費を盾に取っていると思い上がっているからだ。
自民党のプロジェクトチームは、学術会議が科学研究の軍事利用を否定する立場を取り続けていることにも強く反発。「国のカネをもらっている以上、俺たちに従え」と言わんばかりで恫喝に近い態度だが、勘違いも甚だしい。高千穂大教授の五野井郁夫氏(国際政治学)が言う。
「国費は決して自民党のためにあるのではなく、主権者・国民のためにあるのです。国のカネは俺たちのものという発想は、権力者の驕りでしかない。学術会議の人事に政治や産業界の意向を反映させたがるのも、『学術の独立性』の意義を全く理解していない証拠です。例えば環境問題を考える際、自動車メーカーの意向だけを反映したら、どうなりますか。目先の利益を重視しがちな政治や経済の都合だけで政策を判断すれば道を誤る。だから高度な専門知識と幅広い視野に基づく、独立機関の提言が必要なのです。ましてや、この国で学術会議が政府から独立して仕事を行う『特別の機関』と定められているのは、科学者の戦争協力や動員への反省から。他の国以上に独立性の意義は重いのです。それでも軍事力の強化を進める国の意向に従えと迫るのは、中国やロシアなどの専制主義国と変わらない。中国では国の方針と異なる民主主義の研究はご法度ですが、政府と自民党の発想は同根です。はたして、その自覚はあるのでしょうか」
学術会議は18日、政府に改正法案の提出を見送るよう異例の勧告。前日の総会では梶田隆章会長が、海外からの「連帯」の動きを報告した。2月に白川英樹氏(00年化学賞)や本庶佑氏(18年生理学・医学賞)など日本のノーベル賞受賞者ら8人が連名で岸田に「熟慮を求める」声明を送付。この声明に世界の自然科学系ノーベル賞受賞者61人が全面支持する共同声明を出したという内容だ。
「恥を知る」の美徳を完全に失い
国際的な反発が顕在化し、法案提出断念は恐らく開催目前のG7広島サミットを意識したものだろう。とはいえ、政府も自民党も学術会議への圧力を緩めていない。法案を担当する後藤経済再生相は「民間法人とする案を俎上に載せ、再度議論を進めたい」と発言。国から切り離し、資金を外部から調達させる考えを示唆。自民の世耕参院幹事長は改正案に同意しない場合は「民間的組織として、ご自由にやってもらう選択肢もある」と牽制した。
言うことを聞かなければカネは出さずに牙をムキ、気に入らない団体だから組織を変えることも厭わない。あからさまな「政治の私物化」「権力の乱用」に恥じ入るそぶりすらない横暴さだ。サミット後に法改正を強行すれば、日本は学術の独立性を守らない国として世界に受け止められてしまう。それこそG7議長国のメンツもヘチマもないが、岸田にも恥の意識は感じられない。
山口4区に立つ安倍の後継候補の出陣式では萩生田政調会長と下村元文科相、地元選出の江島潔参院議員が参加。旧統一協会と深い関わりを持った議員が何事もなかったように応援に駆け付ける無反省ぶり。「恥を知る」という日本人の美徳を完全に失っているのが、今の自民党の体質である。
「岸田政権下では、国論が二分した安倍元首相の国葬をはじめ、GDP2%に防衛費を大増額する軍事増強や原発回帰という政策の大転換まで国会の議論を経ず、閣議決定で強行。あすの選挙で自民が勝てば政権はますます図に乗り、国権の最高機関である国会は行政府の下請け化に拍車がかかる。自民勝利は民主主義への不信任であり、独裁信任と同じ意味を持つ。その重大さを有権者は自覚すべきです」(立正大名誉教授・金子勝氏=憲法)
有権者の反乱で政治は変わる。自民に勝たせたら、この国の民主主義は万事休すだ。
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