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※紙面抜粋
※2023年4月23日 日刊ゲンダイ
※文字起こし
何の実績もない4代目が藩主の如く当たり前のように出てきて地盤を受け継ぐのか(左から、衆院山口2区補選の岸信千世氏と平岡秀夫氏)/(C)日刊ゲンダイ
衆院補欠選挙が行われている和歌山県で、岸田首相の演説直前に爆発物が投げ込まれた事件は、威力業務妨害容疑で逮捕された木村隆二容疑者(24)が黙秘を続け、一番の関心事である動機がいまだ分かっていない。大メディアは「爆発物の蓋が60メートル離れた物置の壁に突き刺さった状態で発見された」などと、木村が自作したとみられるパイプ爆弾の殺傷力について詳細に報じ始め、警察は殺人未遂容疑での立件も視野に入れて捜査を進めているという。
いまのところ動機の一端につながる可能性があるのは、木村が選挙制度への強い不満から、国賠訴訟を起こしていた事実だ。参院選の被選挙権に30歳という年齢制限があることや300万円の供託金が必要なことを憲法違反だとし、「普通選挙ではない」と訴えていた。
さらに、木村のものとみられるツイッターを見ると、選挙制度批判が、議員の世襲批判や民主主義への疑問にまで広がっていて、その投稿が改めて注目を集めている。
ツイッターアカウントのプロフィルは<普通の国民が政治家になれる民主主義国を目指します>。投稿には<岸田首相も世襲3世ですが、民意を無視する人が政治家には通常なれません><投票だけは行っている、民主主義風の専制政治国家が日本です>といった書き込みがあった。
政治に不満があるからといって暴力に訴える行為は決して許されないが、世襲政治家が当たり前の政界に違和感を持っているのは襲撃犯だけじゃないだろう。
山口ではありえない逆風
23日投開票の補選で最大の焦点は衆院山口2区だ。
自民党が擁立したのは岸信介のひ孫であり、安倍晋三元首相の甥で、岸信夫前防衛相の長男の信千世候補(31)。この政界のサラブレッド4世が、民主党政権時に法相を務めた無所属元職の平岡秀夫候補(69)に猛追され、横並びの大接戦となっているのだ。
「普通ならありえません。山口県で岸・安倍家の世襲候補が接戦どころか、敗北説まで流れている。ホームページで家系図を見せびらかしたり、まだ代議士にもなっていないのに東京で政治資金パーティーを開き、選挙資金集めをしたことが、地元の反感を買ったのは間違いありません。世襲を当然視し、庶民感覚とズレた上から目線には、さすがに山口といえども、『いつまでもそんな時代じゃないよ』と呆れる有権者が出てきているということでしょう」(政治評論家・野上忠興氏)
保守王国の山口県は、信千世が家系図で自慢した岸信介、佐藤栄作、安倍晋三を含め、全国最多の8人の首相を輩出している。選挙民は常に地元からの「次の宰相」誕生を求め、安倍亡き後は林芳正外相がトップに上りつめることを夢見る──そんな地盤ではあるのだが、岸信夫・信千世親子に対する反応は最初から少し違った。
健康問題が理由とはいえ、昨年12月に岸が突然、引退を表明し、地元には衝撃が走った。岸は同時に長男を後継指名。しかし、東京育ちの信千世は山口に馴染みが薄い。保守系の地方議員でさえ「本来は地元の課題に精通した人に出てもらいたい」と不満を漏らし、有権者からは「市民、県民のための選挙区を好きなように考えている」と非難する声が上がったと、地元紙が報じていた。
何の実績もない岸家4代目が当たり前のように出てきて、藩主のごとく、地盤を受け継ごうとする異常さ、異様さ。以前なら考えられなかった世襲への“逆風”は、山口の政治土壌にも変化の兆しが出てきているということなのだろうか。
ボンボン政治家に庶民の苦しみは理解できない
「信千世氏の当落は、岸田政権の行方を左右することになりそうです。落選すれば、県内で長らく続いてきた安倍系VS林系の対立が、清和会(安倍派)VS宏池会(岸田派)に発展し、党内政局が勃発しかねない。加えて、世襲が当然という自民党内の空気も微妙に変わる可能性がある。苦労して当選してきている非世襲の中堅や若手は、苦々しい気持ちを胸に秘めている。この先、麻生副総裁や二階元幹事長は後継をどうするのか。息子に継がせたいと考えていると言いますからね。岸田首相もそのために長男・翔太郎氏を首相秘書官にした。党幹部になればなるほど、世襲が横行する。自民党が劣化するはずです」(野上忠興氏=前出)
裏を返せば、信千世が勝利すれば、自民党は“世襲万歳”だ。岸田政権の横暴はますます増長する。翔太郎秘書官の物見遊山外遊や、「私人」であるはずの首相夫人が単独で公費訪米するどころじゃなくなるだろう。縁故主義全開で政治の私物化がさらに加速することになりかねない。
自民党国会議員の世襲比率はおおむね3割。1996年に小選挙区制度が導入されて以降、自民党議員の首相は9人いるが、世襲じゃないのは菅義偉前首相、ただ1人だけである。
世論調査などで「次の首相」として名前が挙がるような次世代のメンメンも、河野太郎、小渕優子、小泉進次郎、福田達夫……と、みな世襲だ。初出馬時から知名度バツグンで下駄を履かせてもらっている温室育ち。銀のスプーンをくわえて生まれてきたようなボンボン政治家に、年金削減や物価高に苦しむ庶民の実態が理解できるのだろうか。
非正規雇用で給料は自分が生活するだけで精いっぱい。何十年もかけて借りた奨学金を返済しなければならない。子どもをもうけるどころか、結婚したくても結婚できない。若年世代のそんな苦しみも世襲議員には一切無縁だ。
世襲候補は勝率8割
だが、政治を変えたくとも、小選挙区制では現職が有利だし、「地盤」「看板」「カバン」の揃った世襲議員は選挙にめっぽう強い。一昨年の衆院選公示直前の日経新聞の記事によれば、小選挙区制導入以降の8回の衆院選で、延べ8803人が小選挙区に出馬し、うち13%が世襲。驚くのは、比例復活を含めたその勝率の高さである。ナント8割に達する。非世襲候補の勝率は3割だ。ちなみに世襲候補は7割が自民党から出馬しているという。
ま、世襲候補を簡単に当選させてしまう有権者の側にも問題はあるが、これでは庶民感覚と乖離した特権階級の政治が延々と続く。当選回数を重ねる世襲議員が力を持つから、非世襲議員の発言力や影響力は低下し、自民党内は右へならえだ。自民党政権は安泰だろうが、この国の政治はますます劣化する。
国会では数の論理を振りかざして野党の質問にノラリクラリでまともに答えない。それどころか、GDP比2%に大増額する防衛政策の大転換や運転期間を60年超に延ばす原発回帰への大転換を、閣議決定で強行したように、国の形を変えるほどの重大政策もどんどん勝手に進めるだろう。国会なんてなきがごときありさまが固定化していくのである。法大名誉教授の五十嵐仁氏(政治学)はこう言う。
「血筋で職業が決まるのは封建制であり、民主主義社会とは言えません。伝統文化の歌舞伎ならともかく、議員は公職ですよ。世襲の横行によって新規参入を狭め、多様性のある政治が阻害されている。山口2区で世襲候補が当選したら、『やっぱり日本は後進国』だと世界に誤ったメッセージを発信することになってしまう。国民一人一人が主権者として、政治のあり方と今後の日本の進路を示すべき時です」
果たして、山口の選挙民はどんな審判を下すのか。亡国の政治をさらに前に進めるのか、それとも風前のともしびとなっている民主主義を取り戻すのか。まさに分水嶺の選挙になる。
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