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衆院山口補選が告示 4区は壺議員勢揃いの吉田陣営vs統一教会問題問う有田芳生、2区の岸vs平岡は接戦に
https://www.chosyu-journal.jp/yamaguchi/26363
2023年4月19日 長周新聞
衆院山口2区、4区の補欠選挙が11日に告示された(23日投開票)。安倍晋三元首相が統一教会への怨念を発端にした銃撃事件によって死亡したことに伴いおこなわれる4区の補選には、安倍晋三の後継として元下関市議の吉田真次氏(38歳)が自民党公認候補(公明党推薦)として立候補したほか、ジャーナリストで元参議院議員の有田芳生氏(71歳)が立憲民主党公認で立候補しており、事実上の一騎打ちとなっている。
吉田陣営の出陣式。安倍昭恵を筆頭に、萩生田光一政調会長、下村博文元文科相、江島潔参議院など統一教会の関連議員が勢揃いした(11日、下関市海峡ゆめ広場)
11日午前10時から、海峡ゆめ広場で出陣式を開いた吉田陣営には、前田晋太郎下関市長をはじめ自民・公明の下関市議会議員や山口県議会議員の一部が参加したほか、自民党本部からは萩生田光一政務調査会長、下村博文元政務調査会長、江島潔参議院議員など、統一教会との深い関係がとりざたされている清和会メンバーが壇上に並んだ。
「38歳というのは安倍総理が国政の代表に立ったのと同じ歳。安倍総理はそれから総理大臣までなった。ということは吉田真次候補は総理候補を目指す有資格者。これから磨いていくべきダイヤモンドの原石」(江島潔参議院議員)、「圧勝することで安倍晋三の魂が吉田候補に乗り移る」(下村博文衆議院議員)、「吉田真次が国政に行くことが安倍晋三先生の思いをしっかりつないで新しいニッポンをつくる第一歩になる」(萩生田光一衆議院議員)などとして支援を呼びかけた。
立憲民主党公認で出馬した有田芳生陣営は、下関駅前で出陣式を開き、統一教会問題、アベノミクスの検証、拉致問題の三つの争点を掲げて挑むことを訴え、「保守の皆さんも含めて、歪められてきた政治を正すことを願う多くの人々の気持ちを実現したい。山口4区から日本の新しい状況をつくり出そう」と呼びかけた【別掲】。「第三奇兵隊」と銘打って各地からボランティアを募り、草の根選挙を展開する。
山口4区補選には、そのほかに政治家女子48党の渡部亜衣氏(37歳)、無所属で投資家の竹本秀之氏(67歳)、同じく無所属で元新聞社社員の大野頼子氏(49歳)が出馬している。
■山口4区 有田芳生の第一声
告示後、第一声をあげる有田芳生(11日、下関駅前)
私の父と母は、20歳、21歳のときにこの下関で働き、1950年11月12日に今の長門市で結婚した。私は両親の出発点の地であり、私にとっての原点である山口4区で勝利のために徹底的にたたかう。
私は今回の選挙のために「第三奇兵隊」を結成した。明治維新に向かう幕末期、山口県では、長州藩がたいへん厳しい状況に置かれていたときに、若き高杉晋作たちが志士、農民、商人など身分や職業の違いをこえた奇兵隊を結成し、この日本を変えていかなければならないという思いで、わずか80人ほどで決起し、萩の俗論政府とたたかって状況を転換させた。当初は無謀な戦いとみられていたが、志ある人たちが立ち上がり、この日本を大きく動かしたのだ。1年後には第二奇兵隊がつくられ、また被差別部落の方々は維新団という組織をつくって、みんなで新しい日本をつくろうと努力してきた。
ところが維新回天の事業が成った後、奇兵隊は組織を解散させられた。私はそこから日本の変質が始まっていったと判断している。
今回、山口4区から日本の政治を変えていくために第三奇兵隊を結成し、今日も昨日も人々がボランティアとして駆けつけて下さっている。
作家の司馬遼太郎さんもいうように、山口県で「先生」といえば吉田松陰だ。その吉田松陰先生は、「草莽崛起(そうもうくっき)」を唱えた。名もなき一人一人の小さなものたちが志を持ち、その世の中を変えようという思いが重なることで日本は変わってきたし、これからも変えていくことができる。その思いで全力をあげてたたかう。
争点の一つは、統一協会問題だ。極端な韓国ナショナリズム。世界はやがて韓国語に統一される、あるいは日本はサタン(悪魔)の国であるとまで書かれた「原理講論」という教理解説書を、教会信者たちは学び信じて、今も活動をしている。下関は、統一教会にとっての聖地だ。1941年4月1日、後に統一教会の教組となる青年(文鮮明)が、釜山から関釜連絡船に乗って下関に降り立った。だから、ここは聖地として今も多くの信者さんがいらっしゃる。
だが極端な韓国ナショナリズムで、天皇陛下が文鮮明教祖にひざまづくような儀式までする教団と、どうして保守を名乗る日本の政治家が手を携えてやってくることができたのか――。こんな政治は今度こそやめさせなければならない。
昨日、県議選がおこなわれ、三重県では文鮮明教祖の葬儀の実行委員になっていた現職県議が落選した。だが、全国的には統一教会と深いかかわりのある国会議員が、この山口県も含めて何もなかったかのように今も活動している。
統一教会がなぜ国会議員に近づくのかといえば、政治の力を使って日本の政治を歪めるためだった。数日前にも報じられたが、1992年3月26日、統一教会の文鮮明教祖は日本に超法規的に入国した。1970年代から3回にわたり、「文教祖にビザを出してほしい」と統一教会は組織を挙げて政治家に働きかけたが、入管法五条――日本又は海外で一年以上の懲役を受けた者は入国できないという法規定があるため入国できなかった。ところが最後は、金丸信自民党副総裁(当時)の力によって法務行政を歪めて、文鮮明は日本に入ってきた。その日本の政治を歪めるという目的や、統一教会と政治の関係性は今も続いている。このような現実を4区の皆さんとともに変えていく契機にしたい。
二つ目の争点は、皆さんの暮らしだ。10年前、安倍元総理は“アベノミクスによって10年後には国民の所得は150万円上がる”とくり返し語り、メディアは毎日朝から晩まで大絶賛キャンペーンを広げた。あれから10年で暮らしはどうなったか? 150万円上がるどころか、実質賃金も、平均賃金も下がり、G7の比較でも1997年の平均賃金を100として、米国は200をこえているが、日本だけが93・3だ。こんなことでは、年金も下がるなか、私たちは安心して暮らすことはできない。下関・長門だけでなく、全国を歩いてもシャッター通りが広がった。これがアベノミクスが残したものだ。
だが下関・長門の地は、司馬遼太郎さんが書いているように、まろやかな自然、温和な気候、丁寧で正しい言葉遣いの住民の皆さん、優しさ、そして武家の気品が地熱のように今も続いている。この地において観光産業を含め各種とりくみを住民の皆さんとともに新しい政策に練り上げ、実行していくことができれば、必ず新たな展望を切り開くことができる。
三つ目の争点である拉致問題については、結論のみお伝えする。2002年9月17日、小泉純一郎総理が訪朝し、北朝鮮の最高指導者は日本人を拉致したことを認めた。今、政府認定拉致被害者は、横田めぐみさんをはじめ17人。安倍元総理が「内閣の最重要課題」といい続け、菅政権、岸田政権まで維持されている方針は「すべての拉致被害者の即時一括帰国」だ。だが外交交渉の常識として、要求が100%すぐに実現することはあり得ない。02年に5人の拉致被害者が帰国して以降、議員が胸にブルーリボンを付けるだけで交渉は影を潜め、1人も被害者をとり戻せていない。
2014年、日朝ストックホルム合意があり、北朝鮮側は、日本政府が認定する拉致被害者である田中実さん、金田龍光さんが北朝鮮で生きているということを日本政府に通告したが、このとき安倍元総理は報告書を突き返した。あれからもう7年だ。田中さんは今どうなっているかもわからない。私の調査では結婚相手は日本人であり、もしかすると拉致被害者かもしれない。本人に会って帰国の意志や家族のことも含めて聞きとり、1人からでも取り戻すという方針に転換しなければ交渉は前には進まない。
今日から12日間の選挙戦が始まる。“保守王国での無謀な挑戦”といわれるが、果たしてそうだろうか? 私は今回立憲民主党から出ているが、この選挙は、保守か、リベラルかの対決ではない。日本のよき伝統・文化、新しい暮らしを立場や政党をこえて実現するのが保守の核心だと私は思う。この選挙は、保守の方々の、よりよい日本をつくっていきたいと願う人たちの気持ちを実現するものにしたい。
高杉晋作は辞世の句で「おもしろきこともなき世をおもしろく」とうたった。毎日の生活は苦しい状況が続いているが、諦めることなく、黙することなく、皆さんと一緒に山口4区から日本を変えていきたい。
■山口2区 岸信千世vs平岡秀夫
山口2区では辞職した岸信夫前防衛大臣の長男・岸信千世(31歳)が自民党公認候補として出馬し、無所属で立候補した元法務大臣の平岡秀夫(69歳)との一騎打ちとなっている。
16日、岩国市内のスーパーマーケット前で街頭演説をおこなった岸陣営は、福田良彦岩国市長をはじめ市議らがマイクを握った。福田市長は岸信千世候補について「政治界のホープ」「安倍総理、岸さんを近くにお持ちの方」とし、「私たちも多くの期待を寄せている」と持ち上げた。また、桑原敏幸岩国市議(元議長)は対抗馬の平岡秀夫候補について「岩国大竹道路は本来なら平成18年に完成している予定だが、彼が横槍を入れたためいまだに遅れている」「光市の女児殺人事件のときに、むごたらしいことをした犯人について“加害者にも人権がある”というつまらんことをいった」などとネガティブキャンペーンを展開し、岸信千世候補について「2世がどうこういわれるが、すばらしい2世だ」「岩国市は国防に一番協力している街だ。道路や河川、学校や病院にすべて補助金が入っている。給食がタダになったのも信千世君のお父さんたちのおかげだ」と訴えた。
街頭で支持を訴える岸信千世と福田良彦岩国市長(16日、岩国市)
岸信千世候補は、「岩国市は基地を抱え、国の安全保障上非常に重要な地域だ。基地関連の振興策として再編交付金も国が重要視している。一方、騒音や安心安全の課題に細心の注意が必要」「県内では中山間地域の人口減少、過疎化により経済、雇用、教育などに影響が出ている。自民党はこの対策に力を入れている」「私は31歳と若く、大変厳しい状況だ。この若さを強みに変えて頑張る。30代だからこそ同世代の声を聞きやすいかもしれない。国策の課題に長期的にとりくめるかもしれない」と訴えていた。
対する平岡陣営も同日、岩国市民文化会館で個人演説会をおこなった。以下、演説の内容を紹介する。
基地、原発問題は中心争点 平岡秀夫の訴え
無所属で出馬した平岡秀夫(16日)
私は3月に出馬の打診を受けた。「私に出る資格があるのか」とも思ったが、今の政治のままでは日本が危うい方向に行ってしまう。これまでの経験を活かすなら山口2区のみなさんの思いを一手に引き受けることが許されるのではないかと思い、完全無所属で立候補を決めた。
完全無所属では法律上、公営掲示板のポスター以外は他の候補のように街中にポスターを貼れない。また、届け出政党がないため選挙には1台しか車を使えない。本来4万枚刷ることができるチラシも無所属は出せない。政見放送もない。そのような立場だが、私は決断した。
今、政治のありようが歪められている。政策を決める手続きがおかしい。私は種子法廃止は憲法違反であるという訴訟をやっている。種子法廃止は国民の食料の権利を侵害するものだ。憲法には、食料の権利は書かれていないが「健康で文化的な最低限度の生活」のなかに食料が含まれていないはずがない。また、本来農業に関する重要な政策は、農政審議会で審議して法案になり、国会で審議される。しかし種子法廃止をめぐってはいっさい農政審議会を通さないかわりに、「規制改革会議」にかけられた。また、国会審議するさいに野党議員がなぜ種子法を廃止しなければならないのか、そのための情報提供を政府与党に求めたが、情報がまったく出てこない。国会審議も非常に短く強行採決した。
もうひとつの問題は「敵基地攻撃能力保有」についてだ。政府の一部の人たちが、先にアメリカと手を握って十分な国会審議もないままに国民に押しつけようとしている。民主主義を無視したこんなやり方では、私たちがよく知らないままに危険な状況に巻き込まれてしまう。この山口2区の住民が大きな危険や損失を受けるかも知れない。
私は、5つの政策をあげている。
1、岩国の米軍基地、自衛隊基地に象徴される安全保障政策の問題
2、上関原発計画に象徴されるエネルギー政策の問題
3、山口2区から選出されていた国会議員が関わってきた統一教会問題
4、世襲政治の問題
5、山口2区には山間部も島嶼部もあるなかで、地方の過疎化や衰退の問題
こうした問題はすべて、全国の課題と直結している。
安倍首相の時代に安保法制問題があり、集団的自衛権の一部が行使可能になった。そしてこれを米国との関係のなかで行使する危険性がある。台湾有事が考えられるなかで、台湾が独立するとなると中国が「台湾は中国の一部だ」ということで武力で防ごうとする。
日本は、中国と国交正常化するさいに台湾が中国の一部であるということを認めている。しかし、アメリカが中国と台湾の間に介入し、アメリカ側から日本に協力を要請されれば、今の日米関係では断れない。日本が敵基地を攻撃するということが仮におこなわれたら、中国から最初に狙われるのは極東最大の航空基地である岩国だ。第二次世界大戦終戦前夜に、岩国駅前空襲で多くの人々が亡くなったのと同じようなことが起きるかもしれない。そのような危険性があるにもかかわらず、政府は一言でも岩国の人々に敵基地攻撃能力の保有について説明しただろうか。
こういう政府の物事の進め方はまったく民主主義に反している。さらにいえば、日本には憲法九条があり、国際的な紛争を武力による威嚇によって解決しないと世界に宣言している。日本がアメリカと中国の間に立って、武力衝突しないよう努力することこそ本来の道筋ではないか。
中国は日本にとって世界第1位の貿易相手国だ。日本がアメリカ側に立って中国に対して武力行使したら、年間50兆円ある中国への輸出はすべてなくなり、日本経済にとって大打撃だ。自衛隊員にも被害が及ぶし、基地周辺の住民にも被害が及ぶ。それを考えたら、絶対に戦争だけはしてはいけない。だが政府はそういった外交的努力をせず、「抑止力を」「敵基地攻撃能力を」といい、政府としての説明もなく兵器購入も進める。
政府は防衛軍事費を倍にするといっており、財源確保のための特別措置法が国会で審議されようとしている。いろんなところからかき集めて基金を創り防衛力を高めるというが、そのお金はアメリカの軍需産業へと流れる。防衛費は対前年度比26・3%も増えているのに対し、子ども家庭庁の予算は2・6%しか増えていない。農林水産業費はマイナス0・4%、経済産業省の予算はマイナス2・4%だ。今日本が抱えている課題克服のために必要なお金が足りていない。このことについてもっと声を上げていかないといけない。
「日本の政治の課題」といわれると他人事のように聞こえてしまい「誰かがやってくれる」と思うかも知れない。だが、この山口2区には日本の政治の課題が縮図のように詰まっている。この山口2区の政治の課題や問題について、「今のままではいけない」とみなさんが表明することが、日本の政治を変えることに繋がる。
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