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※紙面抜粋
※2023年4月17日 日刊ゲンダイ2面
※文字起こし
反省は生かされず(逮捕され、送検される木村隆二容疑者=17日午前、和歌山西署)/(C)日刊ゲンダイ
あの悪夢が再び現実となる寸前だった。15日午前、和歌山市の雑賀崎漁港で岸田首相が衆院補選の応援演説を行う直前、聴衆の中から筒状の物体が投げ込まれた。
約50秒後に大きな爆発音が響き、現場は騒然となったが、岸田はケガひとつなく無事。犯人の男も近くにいた漁師に羽交い締めにされた後、5人ほどのSPに一瞬で取り押さえられた。
威力業務妨害の疑いで現行犯逮捕されたのは、兵庫県川西市の職業不詳、木村隆二容疑者(24)。投げ込んだ筒状の爆発物について、専門家は手製のパイプ爆弾の可能性が高いと指摘する。
昨年7月、安倍元首相が奈良市で演説中に2発の銃弾に倒れたことは記憶に新しい。殺人と銃刀法違反の罪で起訴された山上徹也被告(42)が用いた凶器も「手製の銃」だった。映像を見ると、岸田と爆発物の落下地点との距離は1メートルほどしか離れていなかった。難を逃れたのは、運が良かったとしか言いようがない。
安倍銃撃事件を機に、警察庁は要人警護対策を強化。都道府県警が担う要人警護は、計画案を警察庁が審査する仕組みに改められた。この日の岸田の和歌山入りでも、県警は警護計画書を作成。事前に警察庁の確認を受けていたが、またしても事件を防げなかった。
1年足らずで元職と現職の首相が2度も地方遊説中に襲われるとは──。元警視庁警視の江藤史朗氏はこう言った。
「選挙に伴う警備には独特の厳しさがあります。聴衆と触れ合いたい政治家側の意向と警備のバランスを取るのは困難なためですが、今回の警備態勢はあまりにもズサンです。まず爆発物を全く想定していなかった。現場に爆発物処理のプロである機動隊員を配備しておらず、聴衆の近くで爆発も許してしまった。爆発物の飛散を防ぐ『防爆マット』すら準備していなかったのです。より威力があったら大惨事でしたよ。また、選挙カーの上など高い位置から演説してもらい、車上から不審人物の有無を警備員が確認してから、政治家を聴衆の中に向かわせるのが鉄則なのに、それもできていない。
犯人を真っ先に取り押さえたのが地元の漁師だなんて、もってのほか。首相の警備に当たる以上、最大限のテロ対策を行う必要があり、想定外は許されません。落下した際に爆発しなかったからよかったものの、運任せの警備はあり得ない。残念ながら、安倍元首相銃撃事件の反省が生かされていません」
DIY感覚で誰もが凶行に及ぶ時代に
岸田は爆発物を投げつけられてから1時間10分後にはJR和歌山駅で街頭演説。ツイッターに「私は街頭演説の場に立ち続けます」と投稿した。和歌山を離れると、予定通り衆院千葉5区補選の応援のため、JR新浦安駅前に立ち、聴衆とグータッチ。16日も参院大分補選の応援に入った。
「大切なことは選挙をやり通すこと」と繰り返す岸田の気丈な態度は衆参5補選と統一地方選・後半戦にはプラスに働くだろうが、外交パフォーマンスが狙いの5月のG7広島サミットには暗雲が垂れ込め始めている。
事件はG7閣僚会合の第1弾、札幌市での気候・エネルギー・環境相会合の初日、サミットの「前さばき」と位置づけられる外相会合(長野県軽井沢町)の開幕を翌日に控えるタイミングで起きた。海外メディアは安倍銃撃事件に言及しながら、爆発事件を相次いで速報。AP通信は「この混乱した光景は9カ月前に起きた安倍元首相の暗殺事件を想起させた」と伝え、AFP通信は広島サミットの開催に触れ、「安全上の懸念が定期的に持ち上がっている」と報じた。各国とも「治安の良さと厳しい銃規制」で知られる日本で「なぜ?」と驚きを持って受け止めているのだ。
「立て続けに要人が襲われ、日本の警備に対する諸外国のイメージ悪化は避けられません。2016年の伊勢志摩サミットはほぼ完璧な警備で国際社会の称賛を得ましたが、今回の事件で評価はガタ落ち。広島サミットに参加する首脳はカナダのトルドー首相以外、伊勢志摩サミットからメンバーが入れ替わっています。伊勢志摩の警備を経験していないだけに、より日本に悪い印象を持って広島を訪れるはずです」(江藤史朗氏=前出)
テロの標的となるのを恐れて、1人でも首脳がサミット参加をボイコットすれば、議長国のトップとしての岸田のメンツは丸潰れだ。
それにしても不気味なのは逮捕された木村から首相襲撃の背景が全く見えてこないことだ。本人は黙秘を続けているが、近隣住民らの語る人物像からはテロ事件が直接、結びつかないのである。
自宅は川西市のニュータウンにある一軒家。ガレージと庭付きの小ぎれいな2階建てに15年ほど前、父、母、兄、姉と共に移ってきた。母親とは仲が良く、頻繁にガーデニングをしたり、車で一緒に買い物に出る姿を近所の人々は目撃していた。
「勝ちの組」政治が続く限り犯行は絶えない
中学以降の木村はあまり目立たない生徒で、おとなしく控えめな印象だった。高校卒業後の1〜2年の間は毎朝バスに乗ってどこかに出かけ、夕方に帰宅。進学したか就職しているように見えたが、「コロナ禍の21年以降は外で見かける頻度が減った」とは近隣住民の証言だ。それでも目を合わせれば会釈し、あいさつも交わす。「優しい子」だと思われていた。
気になるのは父親の不在程度だ。複数の近隣住民が「宅配の仕事をしていた父親を5、6年前から見かけなくなった」とメディアの取材に答えている。父親は怒りっぽくて、大声で怒鳴る声が自宅から聞こえてくることもしばしば。高校時代の木村をガレージで「グズグズするな」と怒鳴りつける姿も目撃されていた。
文春オンラインによると、昨年9月に木村は自民党系の川西市議が開いた市政報告会に参加。「川西市議の報酬は良いですか?」と熱心に質問しており、少なからず政治には関心を持っていたようだ。持ち込んだ筒状の爆発物は2本。背負っていたリュックサックからはナイフも見つかった。爆発物以外の凶器も用意し、現場の状況に応じた方法で岸田を狙った可能性がある。
周到な犯行計画がうかがえるが、兵庫のニュータウンに住む母親思い、ガーデニング好きの24歳の優男はテロとは無縁の存在にしか見えない。「普通の青年」はなぜ突如凶行に走ったのか。山上被告の全ツイートを言説分析し、事件の背景に迫った「山上徹也と日本の『失われた30年』」(共著)を上梓した高千穂大教授の五野井郁夫氏(国際政治学)に聞いた。
「木村容疑者と山上被告には『政治的有効性感覚』の低さを感じます。投票に行ってもどうせ政治は変わらないし、何をやってもムダとの心境から直接、政治を変えようとする行動へと飛躍したのです。また、2人とも犯行時に顔を隠さず、木村容疑者は免許証も所持していたことから、身元がバレるのを恐れていない。特定のテロ組織に属するプロの犯行ではあり得ない稚拙さで、手製の武器で凶行に及んだのも共通項。思想犯でもない一見、普通の市民がDIY感覚でテロに走る時代になってきたのです。木村容疑者には同世代との接点は見えず、恐らく孤独を抱えていたに違いない。山上被告はロスジェネ世代、木村容疑者はZ世代とそれぞれ世代は異なりますが、決して輝いた半生を送っていないだろうことは一致しています。自分は社会のお荷物だと過度に思っていながらも救済を求める弱者になるのを嫌い、自尊心を保ち、自分が『人生の主人公』になるには、あの行動を起こすしかなかったのではないか。それも失われた30年の間に、政治が大企業や富裕層のみに目を向け、『輝けない人々』を置き去りにしたゆえの宿痾です。勝ち組のための政治が続く限り、今回のような事件は絶えないと思います」
動機の解明が待たれる。
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