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なぜアメリカとイスラエルは"特別な関係"か/橋祐介・nhk
2023年10月30日 (月)
橋 祐介 解説委員
https://www.nhk.or.jp/kaisetsu-blog/100/489097.html
イスラエル軍はガザ地区でイスラム組織ハマスの排除をめざす軍事行動を拡大しています。アメリカはイスラエルを物心両面から支えています。
両国の関係は「特別な関係」と呼ばれます。なぜ「特別な関係」か?を考えます。
「特別な関係」という言葉には、多くの場合、相手国との▼絆の強さ▼戦略的な重要性▼価値観の共有といった意味が込められます。
アメリカと「特別な関係」と呼ばれる国は、イギリスをはじめ、イスラエルに限りません。イスラエルにとって「特別な関係」と呼ばれる唯一無二の国がアメリカです。
“イスラエル建国の父”ダヴィド・ベングリオンが、ユダヤ人国家の樹立を宣言した直後、当時のアメリカ大統領トルーマンは、世界に先駆けてイスラエルを国家承認しました。
イスラエルとの関係を初めて「特別な関係」と呼んだアメリカ大統領はケネディでした。「中東でイスラエルとの特別な関係は、世界でイギリスとの関係に等しく比類がない」と述べました。
冷戦時代のアメリカは、アラブ諸国に接近したソビエトに対抗するため、民主主義を掲げるイスラエルへの軍事支援や財政支援を本格化させました。
イランが1979年のイスラム革命で反米姿勢をとるようになると、イランも両国にとって“共通の脅威”になりました。
その結果、アメリカは、イスラエルの建国以来これまでに、1,580億ドル=日本円で23兆円以上もの援助を供与。戦後アメリカが支援したどの国よりも突出して多い金額です。
両国の間に、日米のような防衛義務を定めた正式な安全保障条約はありません。
しかし、アメリカは、イスラエルをNATO=北大西洋条約機構の加盟国と同等の優遇措置を受けられる「主要な同盟国」に指定し、様々な協定や取り決めを結び、“揺るぎない支援”を約束しています。
こうしたイスラエルの存立を認めず武力闘争を続けるハマスを、アメリカは「テロ組織」と看做しています。今回の武力衝突で、バイデン大統領は「イスラエルにはテロから自国を守る権利と義務がある」とする立場を堅持し、ふだんは党派対立に明け暮れる議会も、イスラエルを超党派で支援しています。なぜアメリカはイスラエルに肩入れするのか?
アメリカ国内のユダヤ系人口はおよそ750万人。全体の2%あまりに過ぎません。ユダヤ系の人が、すべてイスラエルを支持するとも限りません。一面的な見方は差別や偏見にもつながりかねないので注意が必要です。
では、なぜ両国の政治は緊密か?要因のひとつに「イスラエル・ロビー」と呼ばれる圧力団体の存在が挙げられます。AIPAC=アメリカ・イスラエル公共問題委員会の年次総会には、毎年多くの議員や閣僚らが超党派で駆けつけます。AIPACは、政府や議会にイスラエル支援を働きかけ、豊かな資金力と、全米にネットワークを張り巡らせた組織力で選挙情勢を左右するからです。
ただ、最近は若者世代の“イスラエル離れ”が目立ちます。アメリカでは、若い世代ほど、リベラルな考え方を持つ傾向にあり、イスラエルの占領政策を批判し、パレスチナ住民に人道配慮を求める人が増えています。
こちらは、民主党支持層に対して、イスラエルとパレスチナのどちらに共感するかをたずねた世論調査です。近年はふたつの線が徐々に接近し、去年「イスラエル史上もっとも右寄り」と言われるネタニヤフ首相率いる連立政権が発足したあと、ことし3月の調査で、パレスチナに共感する人が初めてイスラエルを逆転しています。
一方、共和党支持層の調査を見てみましょう。こちらはイスラエルに共感する人が圧倒的に多く、近年も大きな変化はみられません。
これは共和党が支持基盤とする「福音派=エバンジェリカル」と呼ばれる保守的なキリスト教徒が要因と考えられています。福音派は、国民のおよそ4分の1を占める最大の宗教勢力とも言われ、聖書信仰を重んじて、イスラエルを擁護する傾向があります。
2016年の大統領選挙で、白人エバンジェリカルの8割は、共和党のトランプ氏に投票したと言われました。前大統領は、ネタニヤフ首相らイスラエルの右派勢力と関係を深めて、イスラエルが「永遠不可分の首都だ」とする主張を国際社会の大半が認めていないエルサレムにアメリカ大使館を移転したり、パレスチナへの援助を打ち切ったりしました。
イスラエルとの関係は、アメリカ政治では、半ば国内問題でもあるのです
【即時停戦求めるデモ 10月28日/ニューヨーク】
民主党支持者が多いニューヨークでは、イスラエルによる軍事行動で、罪のない多くの命が奪われていると抗議して、即時停止を求める大規模なデモが行われました。デモは、アラブ系住民が多い中西部ミシガン州など、各地に広がっています。
【トランプ前大統領 ユダヤ系の会合で演説 10月29日/ラスベガス】
一方、トランプ前大統領は、共和党を支持するユダヤ系の団体の会合で演説し、ハマスによるイスラエルへの攻撃は「バイデン政権の弱さがもたらしたものだ」と批判し、ハマスを壊滅させる戦いを全面的に支援するとアピールしました。
(トランプ氏の発言)「ホワイトハウスに戻ったら100%イスラエルの味方になる」。
バイデン大統領はイスラエル軍が民間人を犠牲にしないよう国際法の順守を求めています。このまま軍事行動が拡大し犠牲者を増やしたら自らも民主党支持層の離反を招きかねない。イスラエルに自制を求めて圧力をかければ共和党からの批判を勢いづかせてしまう。そうしたジレンマを抱えているかたちです。
公然と本音を語れないバイデン大統領の苦しい胸のうちを汲んで、いわば代弁してみせたのは、オバマ元大統領でした。
オバマ氏は、「イスラエルとガザについて思うこと」と題した声明をSNSに投稿し、イスラエルが人命を無視した軍事行動を続ければ、「結果的に裏目に出る恐れがある」と指摘し、「人道危機を深刻化させるだけではなく、パレスチナ住民の態度を何世代にもわたり硬化させ、イスラエルへの国際的な支持を低下させ、敵の術中にはまり、地域の平和と安定実現への長期的な取り組みを損なう恐れがある」と述べました。
バイデン大統領は、一時冷え込んだアメリカとサウジアラビアの関係をひとまず修復し、イスラエルとサウジアラビアの国交正常化を水面下で後押ししていました。
この構想が実現すれば、イスラム教スンニ派の“アラブの盟主”サウジアラビアとライバル関係にある“シーア派の大国”イランの影響力を抑えて、イスラエルの安全保障を外交によって強化できるという思わくがありました。
しかし、パレスチナ問題をいわば置き去りにしたまま今回の武力衝突が起きたことで、構想の実現はいま大きな疑問符がついています。
またイスラエルは中東唯一の「事実上の核保有国」と言われます。イスラエル政府は、核兵器の存在を否定も肯定もしていませんが、「核弾頭およそ90発を保有している」と推定されています。
アメリカの歴代政権は、イランの核開発を強くけん制する一方で、イスラエルは、近隣諸国と和平が実現していないこともあり、いわば不問に付してきました。
核の不拡散をめぐり、アメリカが語らないイスラエルの核問題は、両国の「特別な関係」がはらむ2重基準=ダブルスタンダードを浮き彫りにしています。
バイデン大統領は、中国との競争にアメリカの勢力を集中するため、中東からアメリカは次第に手を引く将来像を思い描いていたのでしょう。しかし、アメリカとイスラエルとの「特別な関係」はいま、それが可能かどうかもわからない厳しい現実に直面しているようです。
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