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宇宙基地でのロ朝首脳会談 どこまで軍事協力は深まるのか/石川一洋・nhk
http://www.asyura2.com/23/kokusai33/msg/473.html
投稿者 仁王像 日時 2023 年 9 月 16 日 06:13:52: jdZgmZ21Prm8E kG2JpJGc
 

宇宙基地でのロ朝首脳会談 どこまで軍事協力は深まるのか/石川一洋・nhk
2023年09月14日 (木)
石川 一洋 専門解説委員
https://www.nhk.or.jp/kaisetsu-blog/100/487615.html

ロシアのプーチン大統領と北朝鮮のキム・ジョンウン総書記が極東にあるロシアの宇宙基地で4年ぶりの首脳会談を行いました。
会談の詳細は明らかになっていませんが、ロシアと北朝鮮は経済及び宇宙を含む軍事面での協力を深めることで思惑が一致したように見えます。国際社会から制裁を受ける両国はどこまで軍事面での協力を深めるつもりなのか。考えてみます。

首脳会談の行われたロシア極東の宇宙基地ボストーチヌィは、ロシアの最新の宇宙基地です。プーチン大統領は、ロシアは北朝鮮の衛星打ち上げを支援するのかと問われ、「そのためにここを会談場所に選んだ。北朝鮮はロケット技術に大きな関心を持っている。宇宙開発を発展させたいと願っている」と答えています。金総書記にとってはコロナ感染拡大後の初めての外国訪問となります。訪問には北朝鮮の核ミサイル開発の中核をなす側近が同行しています。

プーチン大統領の案内で宇宙基地を見学したキム総書記は、ロシアの最新のロケットアンガラについて半径の長さなど具体的な質問を専門家に聞き、ロシアの持つ宇宙技術に北朝鮮として並々ならない関心を持っていることを示しました。キム総書記のロシア極東訪問は今日もまだ続いています。コムソモール・ナ・アムールにあるスホイ戦闘機の製造工場やロシア太平洋艦隊の本部のあるウラジオストクで海軍施設を訪問するものと見られます。
プーチン大統領は金総書記が見たいと思うものを見せると言える今回の訪問です。

ロシア外交を知る立場にあるクリモフ上院国際問題委員会副委員長は、今回の訪問はこの1年間の両国が綿密に準備した結果だとした上で、次のように述べました。
「宇宙での協力を否定しませんよ。会談は宇宙基地で行われたのです。でも宇宙以外でも様々な分野での協力があります」
プーチン大統領は、北朝鮮がロシアのウクライナへの軍事侵攻を一貫して支持していることを高く評価しているのでしょう。夕食会の挨拶で、祖父のキムイルソン主席を偉大な指導者と称えた上で、第二次大戦末期日本軍国主義との戦いでソビエトが支援したことを想起し、両国の友好関係の歴史を強調しました。
軍事面では、▼ウクライナとの戦争が長期化する中で北朝鮮からだ砲弾や弾薬を補充したい、と思っているかもしれません。▼あるいはロシア経済にとって労働力不足が深刻になっており、軍需工場を含めて北朝鮮からの労働力は喉から手が出るほど欲しいでしょう

一方、キム総書記にとっては ▼国防五カ年計画で目標としている軍事偵察衛星の打ち上げや原子力潜水艦の建造にはロシアの持つ技術は欲しいはずです。また▼疲弊した経済を立て直すためにも食糧やエネルギーの供与も受けたいでしょう。また▼弾薬や労働力の供給で外貨を獲得したいとも思っているかもしれません。
▼そして外交的にはロシアの後ろ盾を得ることで中国依存の程度を下げたいと思っているかもしれません。

両者は、中国、ロシア、北朝鮮の軍事面の連携を深め、日米韓に対抗したいという点では一致するでしょう。

ただロシアは、本気で北朝鮮との関係を強めるというよりも、いわばポーズを取ることで、アメリカの注意をウクライナから北朝鮮に向けて逸らしたいという思惑があるかもしれません。

一方、北朝鮮にとっては、アメリカの大統領選挙後を睨んで、ロシアカードをちらつかせる事でアメリカの関心を惹きたいとの思惑もあるかもしれません。

このようにロシアも北朝鮮も、利用できるカードとしてお互いを見ている側面もあります。
同床異夢といもいえるのです。

両国の思惑を述べましたが、双方が描いている協力関係は、国連安保理の決議に違反します。ロシアは国連の常任理事国としてそもそも安保理決議を遵守する重い責任があります。

私は2017年9月北朝鮮が核実験を行った直後のプーチン大統領の記者会見をよく覚えています。

プーチン大統領は、「北朝鮮は草を食んででも核兵器を諦めない。核開発を放棄したイラクやリビアの独裁者の末路を彼らは忘れない。制裁は効率的ではない」と述べました。
アメリカへの反発と北への共感さえもありました。
しかしその一方大統領は「北朝鮮の挑発行為を非難する」と明確に述べた上で、
アメリカを念頭に「ロシアと北朝鮮を同列に扱うな」と述べました。
そしてロシアは、その月、安保理制裁決議2375に賛成したのです。

2006年から2017年まで北朝鮮のミサイル発射や核実験に対して十一の安保理制裁決議が採択されていますが、その全てにロシアは賛成しています。
そこでは北朝鮮に対して核ミサイル計画を完全かつ検証可能な方法で放棄することを要求しています。その上で北朝鮮との間で全ての武器の輸出入、核ミサイル開発につながる関連物資や技術の提供を禁止し、北朝鮮との輸出入についても厳しい制限を加えています。
つまりロシアと北朝鮮が今後軍事を含めて協力関係を深めることは、
国連常任理事国による国連安保理決議の違反となり、安保理及び国際法とも言える安保理決議の形骸化を招くのです。

では軍事面を含めたロシアと北朝鮮の接近の動きについて、世界はどのように見ているのでしょうか。特にアメリカと中国の動きが重要です。

アメリカは、ロシアと北朝鮮の接近の動きを強く警戒しています。ウクライナ情勢をさらに悪化させ、また北東アジアの緊張を高めるからです。
アメリカ国務省の報道官は「ロシアは物乞いだ ロシアと北朝鮮を制裁する」として両国に警告しています。

これに対してロシアは、「欧米の対ロシア経済制裁こそ不法であり、不法な制裁を科した国にロシアと北朝鮮を非難する権利はない」とむしろ開き直っています。

アメリカとしては国連総会を利用して、国際社会と連携してロシアと北朝鮮への非難や圧力を強めるものと思います。

一方、中国はどうでしょうか。
中国は自国がいわば国際社会の外れものとなったロシアと北朝鮮と同列に置かれることは警戒し、両国の接近からは距離を置こうとするでしょう。しかし両国への制裁には反対し、事実上黙認するものと思います。10月にはプーチン大統領を一帯一路の国際会議に招待、そこで北朝鮮についての両国の立場を調整するのでしょう。

鍵を握るのはグローバルサウスです。多くのグローバルサウスの国は、ウクライナへのロシアの侵略についても、是認はしないものの、一種の地域紛争として、ロシアへの制裁には積極的ではありません。さらに北朝鮮については、そもそも関心が薄いのが現状です。

ロシアは中国と連携して、BRICSにサウジアラビアなど中東、エジプトなどアフリカ、そして南米のアルゼンチンという六カ国を加えることで、BRICSをアメリカ中心の国際秩序に対抗する新たな軸としようとしています。

日本を含むG7など欧米は、グローバルサウスにG7の持つ懸念を共有してもらうよう努力を続けています。しかしグローバルサウスにはアメリカへの反感にもつながる複雑な感情があるだけに難しさもあります。インドで開催されたG20ではロシアを直接非難する文言が削除されました。
ロ朝の接近は日本の安全保障にとっては直接脅威となります。
ウクライナの軍事侵攻までは距離を置いてきた北朝鮮にすり寄るプーチン大統領、それはロシアの弱さと危険性を示しています。プーチン大統領は、国連安保理の決議は遵守すると述べていますが、とても信用することはできません。ロシアと北朝鮮の軍事面での協力がどこまで進むのか厳しく監視していく必要があるでしょう。
 

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