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アメリカ大統領選挙 トランプ氏復権はあり得るか/橋祐介・nhk
2023年08月25日 (金)
橋 祐介 解説委員
https://www.nhk.or.jp/kaisetsu-blog/100/487042.html
来年秋のアメリカ大統領選挙で、トランプ前大統領が当選する可能性はどれぐらいあるでしょうか?退任後のトランプ氏は、4つの刑事裁判で被告となる一方、開幕まで5か月を切った共和党の大統領候補選びでは、群を抜く支持率を維持し、政権奪還をめざす最有力候補として、着々と歩みを進めているように見えます。現状を分析し、今後を考えます。
怒りに満ちた表情でカメラをにらむトランプ氏。こうしたマグショットと呼ばれる写真を大統領経験者が司法当局に撮影・公表されるのはアメリカ史上初めてです。
この日アトランタの拘置所に出頭したトランプ氏は、一般の刑事裁判の被告と同様に、身長や体重、目や髪の毛の色を登録、指紋を採取され、特定の番号を割りふられ、20万ドル=日本円で2,900万円あまりを支払って、ただちに保釈されました。
(トランプ氏の発言 8月24日/アトランタ)
「アメリカにとって悲しい日だ。私たちは何も悪いことはしていない。不正な選挙”には異議を唱える権利がある」
これまでにトランプ氏は4つの事件で起訴され、合わせて91の罪に問われています。
ニューヨーク州では不倫相手への口止め料の支払いを隠蔽するため、ビジネス記録を改ざんした罪などに問われていますが、このケースでは仮に有罪になっても罰金刑との見方が多いようです。
機密文書の持ち出しや議会乱入事件では、より重い罪に問われていますが、いずれも司法省が任命した特別検察官が連邦法に基づいて起訴したもので、トランプ氏が政権に返り咲いたら特別検察官を解任したり、自分を恩赦したりするのではないかとみられています。大統領が自分を恩赦することは法的に許されるか、前例がないため専門家の見方は分かれていますが、トランプ氏自身は「可能だ」と主張しています。
ところが、大統領選挙で敗れたジョージア州の結果を覆そうと工作したとされる今回の事件では、大統領にも州知事にも恩赦の権限がありません。
トランプ氏が現地の選管当局に違法な圧力をかけたとされる電話録音が残されています。
しかも通常はマフィアなどの組織犯罪を処罰する「RICO法」と呼ばれる州法に基づいて起訴されたのが特徴です。有罪になると最高禁錮20年、最低でも5年以上が科せられます。ほかに18人の元側近らが連座して起訴され、その中から、罪を認める代わりに刑を軽くする司法取引に応じ、トランプ氏に不利な証言をする被告が出てくる可能性もあります。
公判の日程は調整が進められています。
出頭の前日に開かれた共和党の第1回のテレビ討論会。渦中のトランプ氏は参加を見送りました。一連の起訴について、多くの候補がトランプ支持者の反発を恐れ、言葉を濁す中、「大統領にふさわしい行為ではない」そう明確に批判した候補は、観衆から容赦ないブーイングを浴びました。さながら“トランプ党”と化した共和党の現状を物語る光景でした。
トランプ氏は、敢えて同じ時間帯、保守層に人気が高い元テレビ司会者とのインタビューをSNSで配信し、一連の起訴は「バイデン政権による権力乱用だ」と主張、ほかの候補を大幅にリードしていることを理由に「討論会には参加する意味がない」と述べました。
実際、こちらの共和党内の平均支持率を見てみると、トランプ氏は抜きんでたトップで、圧倒的に優勢です。ほかの候補がいくら論争を挑んでも、いわば“コップの中の嵐”にとどまりそうな状態です。
去年11月の中間選挙のあと暫くは、いまほどの独走状態ではありませんでした。トランプ氏に対抗し得る若手ホープとして、フロリダ州のデサンティス知事が一時脚光を浴びました。
ところが3月末にトランプ氏が初めて起訴されたのを境に、両者の差は広がる一方です。トランプ氏とデサンティス氏は保守的な支持層が重なります。起訴は「民主党による政治的な魔女狩りだ」そう主張するトランプ氏のもとに支持者らが結束を固め、支持率を押し上げてきたことがうかがえます。
トランプ氏と2位以下との差は、相次ぐ起訴にもかかわらず広がっていると言うよりは、むしろ起訴されたからこそ広がっているのでしょう。
一方、民主党でも、再選をめざすバイデン大統領をおびやかす有力候補は見当たりません。ただ、大統領の支持率は40%台前半にとどまり、不支持率が上まわっている状態です。
「バイデン再選は決して安泰とは言えない」そう危惧する民主党関係者もいます。
バイデン氏にとって、最大の不安要因になっているのは、高齢問題です。
こちらはバイデン氏とトランプ氏の心身の健康状態をどうみるかをたずねた世論調査です。3年前の大統領選挙の直前、2人の健康を心配する見方は、半数ほどで並んでいました。
ところがバイデン氏が80歳、トランプ氏が77歳になった今年6月の調査では、バイデン氏の健康を心配する見方が急増し、7割近くに達しています。
トランプ氏との再対決になった場合、かなりの接戦となる可能性もありそうです。
どれぐらいの接戦か?前回バイデン氏は得票数でトランプ氏に700万票以上の差をつけました。しかし、大統領選挙は、州ごとに人口に応じて割り振られた選挙人の数を競います。ほとんどの州で1票でも多く得票した候補が、その州の選挙人を総取りする仕組みです。
選挙人の獲得数は、前回バイデン氏が306人、トランプ氏が232人でした。
全米の地図で見てみると、青色がバイデン氏の勝った州、赤色がトランプ氏の勝った州。
このうち両者の得票率が1ポイント以下の僅差だった州は、南部ジョージア、中西部ウィスコンシン、西部アリゾナの3つ、いずれもバイデン氏が競り勝ちました。
この3つの州をトランプ氏がひっくり返すだけで、両者の選挙人の数は269人で並びます。激戦州の行方次第で、勝敗はどちらにも転び得るのです。
では、仮にトランプ氏が共和党の大統領候補の指名を獲得し、本選挙で雪辱を果たしたら、どのような事態が考えられるでしょうか?
トランプ氏はまだ新たな政権公約を明らかにしていません。
ただ、これまでの発言などから推し量ると、まず司法省の政治的な偏向を正すためとして、幹部らを総入れ替えするのは確実、いわば“解体”に乗り出すかも知れません。
ウクライナ支援は、全面的に打ち切るまではしなくても、縮小は避けられないでしょう。気候変動対策は撤回する可能性が高そうです。
貿易ではすべての輸入品目を対象に関税率を一律に引き上げる案も検討されています。
そもそも刑事裁判を抱えたまま、大統領に就任した人物は、過去に例がありません。
トランプ氏は、いまの4つの裁判の審理を来年秋の大統領選挙以降に引き延ばした上で、“国民から信を受けた”との理由で、みずからの“免責”を主張するでしょう。
アメリカの“法の支配”は崩れかねず、かつてない混乱に陥る公算が小さくありません。
トランプ氏の返り咲きもバイデン氏の再選も、どちらもご免こうむりたい。そうした声は最近アメリカの有権者からよく聞かれます。2大政党以外の“第3の候補”への待望論も一部で高まっているようです。しかし、これまでは“第3の候補”が登場しても当選には至らず、2大政党のどちらか、あるいは双方の候補に不利に働き、しばしば思いがけない結果をもたらすこともありました。トランプ氏とバイデン氏の再対決が実現したら、その行方を見通すことはますます難しくなりそうです。
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