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日米韓豪の中国敵視は茶番から自滅に(田中宇)日本は半導体業界の縮小という失敗に直面
http://www.asyura2.com/23/kokusai33/msg/376.html
投稿者 てんさい(い) 日時 2023 年 8 月 22 日 21:02:04: KqrEdYmDwf7cM gsSC8YKzgqKBaYKigWo
 

8月18日に日米韓の首脳が米キャンプデービッドで開いたサミットは、3か国が結束して中国の台頭・脅威に対抗する決意を示す意味があったと喧伝されている。だが、会合で取り決めた声明文(キャンプデービッド精神)を見ていくと、中国の「脅威」「悪さ」についての十分な指摘すらできていないことがわかる。
ちまたでは、いずれ米中が台湾をめぐって戦争し、日豪など同盟諸国も巻き込まれるという「予測」が飛び交っている。だが、日米韓は今回の声明文で「台湾に関する我々の基本的な立場(台湾が中国の一部であるという中共の認識を日米韓が理解・尊重。一つの中国の尊重)に変更はなく、我々は両岸問題の平和的な解決を促す」と明言している。

https://www.mofa.go.jp/mofaj/files/100541771.pdf
日米韓首脳共同声明「キャンプ・デービッドの精神」

https://asia.nikkei.com/Spotlight/Comment/U.S.-Japan-South-Korea-alliance-sends-clear-message-to-China
U.S., Japan, South Korea alliance sends clear message to China

米国は1978年に中共を国家承認して以来、台湾が中国の一部であることを一貫して認めている(米中共同声明)。この間、台湾が中国から分離独立する流れを米国が肯定したことはない。対米従属の日韓も、米国と同じ姿勢だ。
その一方で米国は、台湾軍に戦闘機の部品を供給したり、数十人規模の米軍を軍事顧問として駐留している。これは、米国が中共を国家承認する前にやっていた中華民国(台湾)への軍事支援の名残りであるが、米国はこれを対中挑発としてやっている。
中共はこれを共同声明違反として怒り、正当防衛として中国軍が台湾近海で軍事演習をする。米日のマスコミなどは、米国の共同声明違反の部分をわざと無視して「中国が藪から棒に台湾に侵攻しようとしている」と歪曲喧伝する。藪から棒ではない。米国が煽ったのでこうなっている。

https://www.whitehouse.gov/briefing-room/statements-releases/2023/08/18/the-spirit-of-camp-david-joint-statement-of-japan-the-republic-of-korea-and-the-united-states/
The Spirit of Camp David

現実論として、米国が台湾への軍事支援をさらに増やすには米中共同声明を放棄せねばならない。だが今回の日米韓の声明文には、米中共同声明と同じ「台湾が中国の一部であるという認識」が盛り込まれている。
台湾をめぐる米国の扇動は今後も続き、一触即発っぽい感じが醸成され続ける。日本などの人々は騙され続ける。台湾の人々はかわいそう。しかし、米中戦争にはならない。その流れが、今回の米日韓の声明文で再確認された。
日韓は、米国に守ってもらっているので、仕方なく米国主導の中国敵視に付き合っている。日韓政府の本音は、大きな貿易相手である中国と対立したくない。その本音にそって日韓が米国に頼んで、声明文に「一つの中国の原則を尊重します」と盛り込んだのだろう。

https://www.cnbc.com/2023/08/18/us-seeks-to-bring-japan-and-south-korea-closer-with-eye-on-china.html
U.S. seeks to bring Japan and South Korea closer with eye on China

今回の声明文では、台湾問題でなく南シナ海問題で、中国の軍事行動を「危険かつ攻撃的」と名指しで非難している。南シナ海問題で中国と対立するASEAN諸国と日米韓との協調関係を強化することが盛り込まれている。「名指し非難が画期的」と喧伝されている。
だが、この分野もすでに底が抜けている。ASEAN諸国は以前、南シナ海の領有権をめぐっで中国と鋭く対立していたが、近年は中国の経済影響力が大幅に拡大し、ASEANは中国との対立を回避して経済でよろしくやった方が良いという結論に達している。
ASEAN諸国は、まだ建前的に南シナ海の領有権を主張しているし、米国から促されれば中国を非難するが、実際はすでに南シナ海での中国の軍事施設拡大・人工島の建設などを黙認している。
米国(と日韓)は、そんな現状を知りつつ、声明文で中国を名指しで非難し、ASEANと関係強化すると言っている。米日韓がASEANと関係強化しても、すでに中国の経済圏・影響圏に入っているASEANが方向転換することはない。

https://responsiblestatecraft.org/2023/06/05/indonesias-audacious-ukraine-play-is-a-message-from-the-global-south/
Indonesia’s audacious Ukraine play is a message from the Global South

中国(中共)を非難する事案といえば従来、新疆ウイグル自治区や香港での人権侵害や民主破壊が米側で喧伝されていた。それらの分野の状況は今も変わっていない(香港民主化はもともと英国による茶番劇)。
だが、今回の米日韓サミットにおいて、それらの批判は姿を消している。米日韓が中国を非難したのは、すでに底が抜けて無効な南シナ海問題だけだった。茶番ばかり。戦うなら、もっとちゃんとやれよ。
そもそも中国の台頭がもたらす世界の多極化、非米化は、人類を豊かにするし、平和にする。米国は戦争ばかりしているが、中国はトウ小平以降、戦争していない。
途上諸国を借金漬けにして搾取した頻度は中国より米欧の方がはるかに高い。米国側がやっている歪曲に基づく中国敵視は、中国を非米側の雄にして強化してしまう隠れ多極主義的な策略になっている。

https://straightlinelogic.com/2023/07/26/the-alliance-by-robert-gore/
The Alliance

声明文は冒頭でちらりと「地政学的競争」のキーワードを載せている。これはウクライナ開戦以来、中露が結束して非米諸国を取り込んで資源利権を結集し、米国側が弱まっていく非米化・多極化のことだ。
声明文は、自分たちの領域を示す言葉として「インド太平洋」を使っているが、インドはすでに非米側の国だ。ASEANも非米側だ。中露を非難する国が米国側、非難しない国が非米側なので見分けられる。

https://www.rt.com/news/579407-china-united-asia-problem/
Why China’s ‘united Asia’ is a tough sell

米国側の諸国は、米国から加圧されて中露を非難しており、米国の「同盟国」でなく「傀儡国」である。米国側には、国家主権がなく、今後は資源もない。崩壊寸前の金融バブルだけ。昔は先進国が途上諸国より上位だったが、今やすっかり逆転した。米国側は、非米側に馬鹿にされる存在に成り下がっている。
米国側は、もう非米側に勝てないのに、まだ「地政学的競争」とか言って、勝ち目があるかのように書いている。だが、どうやって勝つかは書かれていない。どんな競争になっているかすら明確にされていない。非米側が金資源本位制を形成しつつあることも無視されている。負け組確定。

https://sputnikglobe.com/20230818/bidens-trilateral-summit-with-south-korea-japan-aimed-at-accelerating-anti-china-policy-1112682339.html
Biden’s Trilateral Summit With South Korea, Japan Aimed at ‘Accelerating’ Anti-China Policy

声明文は「グローバル・サプライチェーン(国際流通網)の混乱に関する政策連携」も提唱している。コロナ超愚策の無意味だった都市閉鎖、米諜報界が誘発した米中間の流通網の混乱によるインフレ激化、そして米国側から非米側への資源利権の移転による米国側の資源不足、などが連続する結果、米国側の物不足とインフレが激化していくことが、私が見るところの「流通網の混乱」だ。
権威筋は、そんな風に言ってない。米諜報界やウクライナ戦争がインフレを誘発したのに、米連銀の低金利策のせいにされて間違った利上げが強要され、米経済が自滅させられている。これに象徴されるように、米国側では、混乱に関する政策も大間違いなものになり、混乱がますますひどくなる。専門家たちの頓珍漢が激化する。

https://tanakanews.com/220525hybrid.htm
複合大戦で露中非米側が米国側に勝つ

日米韓は「気候危機」への対策も協調するが、これも頓珍漢。気候危機は起きていない。気候は通常の循環変動をしているだけで危機になっていない。人為の排出が気候に悪影響を与えている証拠もない。米英の学者が作ったインチキなシミュレーションモデルだけが根拠だ。
米国側はインチキな気候危機を軽信して石油ガスの利権を手放し、その利権が非米側に移転している。自然エネルギーは非効率で使い物にならないのに、それも米国側で無視されている。
気候危機のウソがバレ、やっぱり石油ガスしかないねという話になるころ、米国側は利権を持たない貧しい国々になっている。これが「地球温暖化問題」の本質だ。非米側は勝ち組なので、温暖化対策をやると言いつつやっていない。日韓は、対米従属に固執したばかりに自滅させられている。

https://tanakanews.com/191115warming.htm
歪曲が軽信され続ける地球温暖化人為説

https://tanakanews.com/221130climate.php
温暖化対策で非米化の加速

米国覇権の衰退は日韓政府も知っている。とくに韓国の尹錫悦大統領は、米国の衰退に備えて日本との安保関係を強化することに積極的で、昨年5月に就任後、嫌日的な韓国民に反対されつつ、安保や「戦争責任問題」などで日本との和解を進めてきた。
米国自身、以前から、極東での軍事負担を減らすため日韓を和解させて安保協定を結ばせようとしてきた。だがこれまで日韓とくに日本は、対米従属を恒久化したいので、米国を撤退させてしまう日韓和解を嫌がり、日韓対立を温存してきた。
それが今回は、尹錫悦の日韓接近策に、バイデン米政権の中国敵視策が乗っかって、米日韓の結束で中国(非米側)に対抗する図式の今回のサミットになった。バイデンには、中国に強硬姿勢をとることで来年の大統領選を少しでも有利にしたい、不人気を挽回したいという思惑もある。

https://responsiblestatecraft.org/2023/08/18/camp-david-summit-a-trilateral-march-toward-instability/
Camp David summit: a trilateral march toward instability?

日米韓のサミットでは、サミットや各分野の閣僚会議の定期開催など、日米韓の安保関係の「機関化」(制度化)が進められることになった。日米韓がNATOみたいな国際安保機関を形成していくという趣旨だ。
欧米のNATOはロシア敵視が目的で、日米韓の安保機関は中国敵視が目的だ。アジア太平洋地域では近年、AUKUS(米英豪)やクワッド(米豪日印)、NATO東京事務所設立(NATO拡大)構想など、NATOみたいな中国敵視の機関を作りたがる動きが続いている。今回の日米韓もその流れになる。

https://www.indianpunchline.com/aukus-quad-transforming-alliance-like/
AUKUS, QUAD transforming alliance-like - Indian Punchline

中国敵視のアジア版NATOを作ることは、日韓豪を自滅に追い込む超愚策、もしくは中国とロシアを結束させて非米側を強化する隠れ多極主義の策だ。
NATOはウクライナで実質的にロシアと戦争している。アジア版NATOが中国と戦争することはない。すでに書いたように、台湾も南シナ海も戦争にならないからだ。だがアジア版NATOは、日韓や豪州に対し、中国への経済制裁を強要する。
日韓や豪州は、米国の言いなりにならざるを得ないので、アジア版NATOにおける機関決定の場において、米国の提案に賛成する。以前のハブ&スポークの2国間関係の体制なら、表向き米国の言いなりになりつつ実質的に動かない・のろのろ動くといった「ご無理ごもっとも」の対策が可能だった。米国はすべての同盟国に別々に発破をかけねばならず、やり切れなかった。
だが、アジア版NATOでの機関決定になると、同盟諸国間の相互監視がきつくなり、従来のハブ&スポーク時代よりはるかにマジに中国敵視をやらされるようになり、日韓豪の経済自滅がひどくなる。

https://amp.scmp.com/comment/opinion/article/3230059/does-australia-really-want-be-front-line-us-aggression-against-china
Does Australia really want to be at the front line of US aggression against China?

日米韓のサミット開催の少し前、8月13日には日豪の軍事的な「円滑化協定」(合同軍事演習時の軍人の出入国手続きの簡素化など)が発効した。これまで米豪と日米という別々の2国間安保体制だったのが合体して日米豪の3か国の安保体制になっていく動きが進んでいる。これは、8月18日の日米韓サミットで、日米と米韓が日米韓に合体していくのと同じ流れだ。
日米豪はインドも入れて中国包囲網として「クワッド」を形成し、8月11日からは豪州沖で4カ国の定例のマラバール軍事演習を行っている。インドはまだクワッドに参加しているが、BRICSの一員として中露との関係を深めている。
インドは、BRICS内で親米的な存在ではあるものの、米国と疎遠になる傾向だ。日米韓と日米豪の2つの3カ国同盟ができていくことは、クワッドからインドが抜けて韓国が入ってくる感じの流れでもある。だが韓国は、日豪よりも中露敵視の度合いが少なく、中国との経済関係も緊密だ。

https://news.antiwar.com/2023/08/15/us-cements-game-changing-military-ties-between-japan-and-australia/
US Cements ‘Game-Changing’ Military Ties Between Japan and Australia

https://moderndiplomacy.eu/2023/08/12/quad-in-action-india-japan-us-australia-to-hold-malabar-naval-exercise/
QUAD in action: India, Japan, US, Australia to hold Malabar naval exercise

豪州は、保守系のモリソン前政権時代(2018-22年)に、中国との経済関係を本気で断絶する敵視策をやり、米英豪の中国敵視網AUKUSに加盟したり、中国が豪州の石炭や大麦を輸入しなくなったりした。だが、これによって豪州経済は打撃を受け、外交関係も失敗し、中国だけでなくインドネシアもAUKUSに反対し、インドネシアと中国が結束してしまった。
2022年5月の総選挙でモリソンが辞任し、その後の今の労働党アルボ政権は、中国敵視したがる米国との安保関係を表向き保ったまま、中国との経済関係を改善していき、中国は石炭や大麦の豪州からの輸入を再開した。

https://www.reuters.com/markets/commodities/chinas-renewed-appetite-australian-coal-disrupts-asia-flows-russell-2023-08-10/
China's renewed appetite for Australian coal disrupts Asia flows

https://www.chinadaily.com.cn/a/202307/31/WS64c71799a31035260b81967d.html
Australia should forge closer relations with China

韓国も豪州も日本も、安全保障を米国に依存しているので米国の中国敵視策に付き合っているが、その裏で中国との経済関係を良好なものにするという、裏表のある国策をとっている。
米国は従来、日韓豪の表裏のある対中政策を黙認してきたが、これからは容認しなくなっていく可能性が高い。米国は、自国の業界と日韓などに対して半導体製造装置の中国の輸出を規制させている。
中国は中長期的に、この経済制裁を乗り越えて自国内や非米側での半導体調達を増やしていく。中国との関係を切った日韓など米国側の方が半導体業界の縮小という失敗に直面する。

https://amp.scmp.com/economy/global-economy/article/3229714/australia-invites-chinas-new-foreign-minister-canberra-sees-no-downside-wang-yis-return
Australia invites China’s new foreign minister to Canberra, sees ‘no downside’ in Wang Yi’s return

ロシアとの経済関係を断絶させられ、石油ガスが不足して経済破綻が続いているドイツなど欧州は、米国との同盟関係を続けていると経済を自滅させられる先例を示した。今後は、日韓豪などアジア側の同盟諸国が、中国を相手に同じような目にあわされていく。
中国もロシアも、米同盟諸国にとって脅威といえるほどの存在でないのだが、脅威の分析からして米同盟諸国の専門家たちは米国から洗脳歪曲させられ、まっとうな判断ができなくなっている。
脅威でないものを脅威だと言って敵視する大間違いの連続をやらされ、細かく管理されて自滅させられていく。米国の隠れ多極主義が巧妙に機能している。

https://www.scmp.com/week-asia/politics/article/3231058/extreme-china-us-rivalry-could-be-disastrous-global-economy-singapores-lawrence-wong
‘Extreme’ US-China rivalry could be ‘disastrous’ for global economy: Singapore’s Lawrence Wong

この流れがどんどん進む前に、米国金融が破綻してくれたら対米従属できなくなって良いのにと、4.2%から4.3%に上がった10年もの米国債金利を見ながら祈っている。



この記事はウェブサイトにも載せました。
https://tanakanews.com/230822japan.htm
 

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コメント
1. 2023年8月27日 21:16:36 : LY52bYZiZQ : aXZHNXJYTVV4YVE=[16678] 報告
<■97行くらい→右の▽クリックで次のコメントにジャンプ可>
BRICS拡大を読み解く
2023年8月27日   田中 宇
BRICSが南アフリカで開いたサミットで、アルゼンチン、サウジアラビア、UAE、イラン、エジプト、エチオピアの6カ国を新規加盟国として招待すると決めた。アルゼンチンとサウジとイランは確実視されていた。エジプトもアフリカの有力候補だった。
UAEとエチオピアは意外な感じがする。UAEは、サウジの弟分みたいな国で、人口も900万人しかいない。兄が入ったら弟は入らなくて良さそうなのだが・・・。アフリカで最も人口が多いナイジェリアでなく、2番目のエチオピアが入ったことも分析が必要だ。東南アジアの大国インドネシアが選ばれなかったのも意外だ。
(Expanded BRICS to dominate global energy markets - data)

サウジとUAEの両方が入った理由はいくつかある。一つは、BRICSが世界の石油ガス利権の大半を握り、米国側をエネルギー面で弱体化させていくためだ。サウジUAEイランが入ったことで、拡大後のBRICSは世界の石油輸出の39%、石油埋蔵の46%、産油量の48%を持つようになった。
2つ目の理由はUAEの外交力だ。サウジは米国に束縛されることが多く、今回のBRICS加盟もこれから米国の了承を得る必要がある。対照的に、UAEは身軽で自由に動けるので、アフガニスタンやイスラエルやアフリカの紛争などに外交的に関与している。
(BRICS Invites the UAE - Another Sign That the Multipolar World Is Here)
(Persian Gulf leaders engage Taliban-ruled Afghanistan)

BRICSを主導する中露は、米国が破壊し混乱させた中東やアフリカを安定化していきたい。それには中東やアフリカで外交力がある地元諸国の協力が必要だ。その意味で、UAEとエチオピアをBRICSに入れたのでないかと思われる。
('Welcome to the BRICS 11')
(What do BRICS invitations mean for the Middle East?)

中南米とアフリカで加盟国を増やすことは予測されていた。中南米は、ブラジルが推していたアルゼンチンになった。だが、アルゼンチンの現政権はBRICSに対して冷淡で、招待されたのにBRICSサミットに代表団を送ってこなかった。
アルゼンチンは非米側のBRICSでなく、米国傘下のIMFに追加融資を求めている。しかも10月の大統領選で親米右派で中国敵視のハビエル・ミレイが勝ちそうだ。ミレイが次期大統領になると、アルゼンチンはBRICS加盟を断りそうだ。
(How one new member can complicate things for BRICS)

ブラジル自身、前大統領のボルソナロは親米右派(親トランプ)で、反米的なBRICSに冷淡だった。2022年に左派のルラが大統領になって(返り咲き)から、ブラジルは急にBRICSに積極関与するようになった。
アルゼンチンも、いずれ左派・ペロン派が返り咲けばBRICSに入る。BRICSのこの手の不安定さは、米覇権傘下のG7やNATOの堅い結束(というより束縛、同盟諸国の傀儡化)と対照的だ。米国側のマスコミ権威筋は「BRICSなんてダメだ。米覇権に取って代われるわけがない」と嘲笑している。

実のところ、結束が堅くければ強いというものではない。NATOは鉄の結束だが、ウクライナ戦争でボロ負けしている。G7はリーマン危機以降ゾンビ組織(G7の機能はG20に移転)で、米国が同盟国を束縛するためだけの組織だ。きたるべき米覇権の崩壊まで、BRICSは弱いふりをしていた方が良いので、中南米の右往左往はちょうどいい塩梅だ。
(‘A wall of BRICS’: The significance of adding six new members to the bloc)

アフリカで人口が最も多いのはナイジェリアだが、米仏のアフリカ支配の片棒担ぎをやっている。最近ニジェール(やマリやブルキナファソ)が、アフリカを不安定にするばかりの米仏に愛想を尽かしてクーデターで親露側に転換した後、ナイジェリアは米仏に味方してニジェールに侵攻する制裁をやると言い続けている。
(アフリカの非米化とロシア)

ナイジェリアはアフリカの安定に貢献しないのでBRICSに入れなかった。替わりに入ったエチオピアは中国ととても親しい。中国は、世界的な大国(極の一つ)になるための練習として、2000年代からアフリカのスーダン周辺の紛争を仲裁し、その際に地元の仲裁役としてエチオピアと組むようになった。
(中国は当時、日本に対し、一緒にアフリカを安定させようと誘ったが無視された。対米従属が何より大事な日本は独自外交など決してやらない)
(Can China Broker Peace in Sudan?)

外国の紛争に対する中国の戦略は、米欧流の直接関与よりも、地元の仲裁役に任せてそれを支援する間接関与の傾向が強い。中国は、アフリカ北東部ではエチオピアと組んでいる。
アフリカの統合を目指すアフリカ連合の本部はエチオピアにあり、本部ビルは中国が建設して寄付した。中国が主導するBRICSの新規加盟国にエチオピアが入るのは自然なことだ。
(Explaining China’s involvement in the South Sudan peace process)

BRICSへのエチオピアの加盟が中国の肝いりであるのと並んで、エジプトの加盟はロシアの肝いりだ。エジプトは、アラブの春で政権をとったムスリム同胞団を軍部がクーデターで倒して今のシシ政権になったが、軍事政権を嫌う米国に冷遇され、シシのエジプトは安保面でロシアに頼る傾向を強めた。
(Sudan conflict: how China and Russia are involved and the differences between them)

エジプトやUAEはイスラエルとも親しいので、サウジのBRICS加盟と合わせ、パレスチナ問題もBRICSで取り扱える。
中露敵視の流れに沿うと、エチオピアやエジプトのBRICS加盟は中露のアフリカ支配が強まるだけだと思うかもしれないが、実際は中露がBRICSを使ってアフリカを紛争解決して安定させようとしている。
(BRICS grows to include Ethiopia - what should we make of the expansion?)

東南アジアでは、インドネシアがBRICSに入りそうな感じがあった。インドネシアは、これまで未加工で輸出されることが多かった鉱物資源を、精製して付加価値をつけてから輸出する新戦略を進めており、中国はインドネシアの資源精製事業への投資・協力を急増している。
これは、資源類の利権を米国側から非米側に移動する中露・BRICSの資源本位制の象徴みたいな話だ。インドネシアは3億人の巨大市場で、その点でもBRICSにふさわしい。インドネシアはBRICSに加盟申請していたが通らなかった。
(BRICS just announced an expansion. This is a big deal.)

その理由は不明だが、もしかするとインドネシアはBRICSに加盟申請しつつも、米国側と非米側の対立の中で非米側に入ってしまうことを躊躇したのかもしれない。インドネシアは、伝統的に「非同盟」の国であり、今回あえてどちらにも入らない姿勢をとったのはインドネシアの伝統に沿っているともいえる。
(Will the BRICS expansion stumble over internal divisions or help bridge them?)
https://tanakanews.com/230827brics.htm

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