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元記事http://blog.livedoor.jp/donnjinngannbohnn/archives/2057916.html
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中国の新疆(しんきょう)ウイグル自治区で進む民衆監視・弾圧の現状を伝えるノンフィクション。監視にはAI搭載カメラや生体認証、DNA情報と国家ID番号のひも付けなど、科学技術が駆使されている。拷問の絶えない施設への収容を含め、近未来を暗澹(あんたん)たる気持ちにさせる。著者のジェフリー・ケインは調査報道を得意とする米国人ジャーナリスト。
ウイグル自治区では2017年以降、推定180万人のウイグル人やカザフ人、その他主としてイスラム系少数民族の人々が「思想ウイルス」や「テロリスト思考」を持っていると中国政府から見なされ、地域内に数百ある強制収容所に連行された。そこで拷問や洗脳、教化が行われている。収容所送りを免れても、地獄の監視社会が覆っている。
暗黒郷(ディストピア)の現況は、メイセムという1人の少女の実体験を通じて生々しく描かれる。ウイグルで生まれた彼女は北京の一流大学に入り、民族の自由を唱える教授に出会う。トルコの大学院に進学すると中国当局から目を付けられ、家族が監視下に置かれる。自身も再教育センター、次には拘留センターに収容され、洗脳教育を受けさせられる羽目に。両親の共産党との古い縁故を使い、命からがらトルコへ脱出するが、家族と連絡が取れなくなる。
この暗黒郷を支えるのが科学技術だ。もともとマイクロソフトやグーグル、フェイスブックなど米国企業が監視装置の開発を先導したが、現在は米中対立で中国企業が踏襲し、政治力でユーラシア各国にその技術を広めている。
同書によれば、中国全土には1億7000万台の監視カメラが設置され、中には15キロ離れた場所から個人を識別できるものもある。さらに「Wi−Fiスニファー」と呼ばれる政府のデバイスは、一定の範囲内にある全てのスマートフォンとコンピューターのデータを収集できる。
メグビー(曠視科技)が開発した顔認証システム「Face++」は、カメラが捉えた人々の顔と声を結び付け、住民を監視するために必要なスマートフォンとアプリを警察に提供し、AIによって処理される大規模な監視ネットワークに全ての情報をリンクできるようにしている。
センスタイム(商湯科技)は100億の画像と動画からなるデータベースを構築し、顔認証の精度を上げた。その多くがオンライン上から収集されたものである。開発した責任者は、重慶市でこのシステムを活用し、40日間に69人の容疑者を特定し、16人の逃亡者を逮捕したと誇ったという。
人間による監視も、暗黒社会の構成要素だ。ウイグル自治区では、各家庭が10世帯ごとのグループに分けて管理されている。グループ内の住民は互いに監視し合い、訪問者の出入りや友人・家族の日々の行動を記録することを求められた。共産党幹部20万人が班長として送り込まれ、毎晩家々を回り、日々の行動を報告させ、玄関外側に貼られたQRコードをスキャンして当局にデータを送る。
衝撃を受けた点が幾つかある。1つ目は、女性の場合、毎日正午、政府が提供する経口避妊薬を飲むことを求められる。地元の診療所に呼び出され、避妊手術を受けさせられる者もいる。少数民族の出生率を下げるためである。
2つ目は、「不規則な行動」があると居間にカメラが設置されるだけでなく、家の中に全くの他人が監視員として送り込まれ、寝食を共にする。何と、男女でも同じベッドで横になるという。断れば、テロリストと見なされ、強制収容所に送り込まれる。これは17年から「家族になる運動」の名でプロパガンダされた。
3つ目は、「予測的取り締まり」で施設に収容されること。映画『マイノリティ・リポート』を地で行く世界だ。わが国でも17年に「テロ等準備罪」(共謀罪)が成立し、227の犯罪について犯罪を実行していなくても計画や準備をしたと見なされれば処罰が可能になっている。
海外に逃れても、安心できない。アンカラの大学院に復学したメイセムに、見知知らぬ女性からメッセージが送られてきた。ウイグルの古里の風景や自宅のバルコニーの写真も。「分かります?」との問いに理由を尋ねると、今度は「どこに住んでいるんですか? トルコのアンカラ?」と聞いてくる。政府の諜報員と察した。
トルコに一家で逃れていたあるウイグル人作家は19年8月、トルコ当局によって家族ごと国外追放され、ウズベキスタンの空港に着くなり、身柄は中国当局に引き渡された。以後、毎月のようにウイグル人が拘束され、一部は中国に強制送還されたとのニュースが伝えられているという。
別のウイグル人作家は20年3月のある日、イスタンブールのウイグル料理店にいたとき、突然やって来た私服警官に説明なしに拘束された。「共産党はいずれ、海外でも国内と同じように振る舞うことになる」と専門家は指摘する。著者はこれを「新疆式の社会統制の輸出」と呼ぶ。近年わが国で「中国秘密交番」と言われるものと重なる。
読む中で、気付いた点を挙げる。夏休みに帰省したメイセムは警察から採血を求められる。DNAサンプルを取るためだ。「検査」と称する写真撮影や文書朗読による声紋情報の取得もふくめ、「同意するかどうか」尋ねられたという。しかし、拒否したら政府から嫌がらせを受けるか、逮捕されるという。この手口は、私が拒否して飛行機から降ろされた「マスク着用のお願い」と同種のものだ。この手法は計画的に広げてられているのかもしれない。
メイセムが学部を卒業して一旦帰省したとき、町中に「コンビニ交番」と監視カメラが設置されていた。警察にいちいち尋問を受ける危険を冒すことを人々は嫌うようになり、通りは閑散となっていた。「そのような世界では、どんどん防衛的になります。誰かと話したり、出掛けて人に会ったりするのが怖くなる。誰も信用できなくなるんです」とメイセムは吐露する。われわれがコロナ対策禍の3年間に経験した構図と似ている。オンラインを通じて人類を亜現実の世界に押し込むため、わざと戸外を物騒にしているのかもしれない。
この暗黒郷報告に触れつくづく思ったのは、「あすはわが身」ということだ。デーヴィッド・アイクが常々しているように、世界を中国化するのが国際カルトのプランだから。
同書の著者に欠けている視点は、国際カルトの存在に尽きる。ウイグル自治区の監視体制づくりは01年の米国9.11テロから始まったと指摘しながら、やむを得ぬ流れだったとの筆致である。出版は22年1月だが、パンデミックも自然の猛威として捉える。AI技術をめぐる中国企業の興隆と米国企業の撤退についても、米国の計画的崩壊という発想が全くない。
最後に登場する、トルコに身を隠すウイグル人作家のぼやきが頭に残る。「これらの新しいテクノロジーが世界を変えるだろう」と若い頃、大学で学生たちに伝えていたことを恥じ、次のようにこぼす。
「テクノロジーは自由など与えてくれなかった。僕たちはデジタル化された牢獄の中で暮らしている。望んでいた世界が訪れることはなかった」
デジタルやAI技術など全て、われわれを監視するために国際カルト側が持ち込んだもの。同書を読めば、恐ろしさとばかばかしさで、SNS(会員制交流サイト)などやっていられなくなる。
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