<■80行くらい→右の▽クリックで次のコメントにジャンプ可> ナゾ残る能登半島地震 研究者が現地調査で驚いた、前代未聞の複雑な動き「活断層リスク見直しを」(東京新聞) 2024年2月18日 07時39分https://www.tokyo-np.co.jp/article/310037 能登半島地震では、想定されていた半島北岸の断層群が動いたと考えられています。しかしそれで問題が解決したわけではないと研究者は考えています。断層そのものの性質や周辺の地盤の変化など、まだ分からないことが多いのです。(永井理) 今回の地震は、国土交通省や内閣府、大学の断層調査プロジェクトなどが10年前に指摘していた能登半島北岸沖の活断層が起こしたとみられます。断層は石川県の津波想定にも取り入れられていました。「そのためか想定通りだったという予定調和的な捉え方が目立つ。しかし活断層からみれば今回の地震は分からないことだらけ」と、日本活断層学会長の鈴木康弘・名古屋大教授は指摘します。 鈴木さんらは石川県志賀町を調査し、同町の富来(とぎ)川に沿って地震断層が3キロ以上にわたり現れているのを発見しました。断層の南東側が数十センチたわんで盛り上がり、断層に沿って地盤が水平に10センチ以上ずれているのが確認されました。存在が指摘されていた活断層「富来川南岸断層」が動いたとみられます。断層は川沿いに海まで続き、河口の岩場も隆起していることから「海底に続いている可能性もある」といいます。 ◆これほど離れた場所に「お付き合い断層」が このような断層は大きな地震の影響で付随的に動くため「お付き合い断層」とも呼ばれます。鈴木さんが重視するのは、この断層が能登半島地震の断層から約20キロも離れている点です。「これほど離れた場所に付随して断層が現れた例はこれまで確認されていない」といいます。 2016年の熊本地震でも、本震の断層から5キロほど離れた場所で多くの付随的な断層が動きました。こうした断層は地盤の変形だけでなく揺れの増幅などを起こす可能性が指摘されています。今回も断層の隆起が現れた富来川沿いの家屋は被害が大きかったといいます。 鈴木さんは「1000年に1回大きい地震を起こすというような単純なイメージで捉えられがちだが、今回のようにお付き合いで動くなど複雑に活動し大小さまざまな地震を起こす。活断層のリスクの考え方を見直した方がいい」と指摘します。 珠洲市若山町の若山川沿いでも付随的に動いたとみられる断層が見つかりました。最大2メートルほどの段差が東西2キロにわたり確認されました。調査が進めばさらに延びる可能性もあります。 「ここは活断層があるとされている場所ではなかった」と現地を調査した東京大地震研究所の石山達也准教授は話します。ずれの量は大きいですが「能登半島が大きく変形する中で地表近くが割れたのかもしれない。震源の断層とつながるものかどうかは、きちんと調べて議論していく必要がある」といいます。 ◆「海陸境界」は調査のエアポケット 能登半島地震を起こした活断層は、半島北岸に沿った海底にある「海陸境界の断層」です。今回は長さ150キロにわたって断層が割れましたが、断層の長さや活動度(地震の規模や頻度など)はよく分かっていません。石山さんは「海陸境界の断層は、いわば調査のエアポケットみたいな状態」と話します。 活断層が海底に現れているので陸地のように掘削して過去の活動歴を調べられません。海の断層は掘削の代わりに音波探査で様子を調べますが、陸地に近い浅い海では雑音が多く、深い海のように精度よく探査するのが難しいといいます。また、定置網があったり船が行き来したり、制限も多くあります。 今回の地震では海岸が隆起して新しい段丘ができました。能登半島では、過去の海陸境界の地震で隆起してできた海岸段丘地形が何段も残っています。「そういう地形と結び付けて断層の活動度を推定できる可能性がある」といいます。日本海には海陸境界だけではなく沖にも活断層が多くあります。それらの性質を知る手掛かりになるかもしれません。 また、能登半島の南の富山湾にも活断層があります。地形などから活発に活動しているようにみえますが、地質的なデータがないため活動歴は分かっていません。能登半島をはじめ日本海の活断層にはまだ分からないことが多いのです。 ◆揺れで通信障害、震度計のデータを送れず 別の課題も残りました。輪島市と能登町の3地点の震度計が通信障害でデータを送れず、半月以上後に輪島市で震度7、能登町で6強、6弱だったと分かりました。地震の揺れに詳しい纐纈(こうけつ)一起・慶応大SFC研究所上席所員は「震度7がすぐ分からなかったのは失態だった」と指摘します。大地震時の初動に役立つよう震度計を置いているのに、強い揺れで通信が途絶えては困ります。 国内の震度計は気象庁が管理する約670台、防災科学技術研究所が管理する約800台、地方自治体が管理する約2900台です。データを送れなかった3地点は石川県が管理していました。気象庁によると、バックアップの衛星通信回線や72時間の非常用バッテリーを備える対策を進めており、気象庁分は完了しているといいます。纐纈さんは「縦割りにせず、気象庁が率先して全体の対策を進めていくことが必要」と話します。 【関連記事】「巨大地震が起こる確率80%」の根拠がタンスの古文書って… あぜんとした記者は徹底検証のため高知へ向かった 【関連記事】能登半島地震の引き金は「地下の水の上昇」か 専門家が「日本海側最大級」の揺れをもたらしたものを分析 【関連記事】M7.6は「想定されていた」 能登半島地震の活断層は「未知」でもなかった? 周知や対策はなぜ遅れた
|