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アステラスの「更年期障害」治療薬は日本で臨床試験せず…世界的な偉業が埋もれる恐れ どうする、どうなる「日本の医」
https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/life/324028
2023/06/06 日刊ゲンダイ
アステラス製薬の本社(C)日刊ゲンダイ
5月12日、アステラス製薬が開発していた顔面の火照り、のぼせ感、寝汗などの更年期障害の治療薬フェゾリネタントが米国で承認された。欧州や豪でも承認申請中だ。
更年期障害の原因の一つは、閉経に伴いエストロゲンの量が減少し、脳内でのニューロキニンBとのバランスが崩れることだ。フェゾリネタントは、ニューロキニン3受容体というタンパクを遮断することで、このバランス異常を是正する。
3月13日、米国、カナダ、欧州で実施された第3相臨床試験の結果が、権威ある英医学誌「ランセット」に掲載されている。この研究では、フェゾリネタント30ミリグラム投与群、同45ミリグラム投与群がプラセボ群と比較され、1カ月および3カ月投与時での、研究者が定義した更年期障害の評価指標は、30ミリグラム群、45ミリグラム群のいずれでも有意に改善していた。一方、重度の副作用は確認されず、安全性についても大きな問題がないことが判明した。
従来、更年期障害の治療は、分泌が減少した女性ホルモンを補充することだったが、乳がんや血栓症の危険性を高めるため、多くの医師・患者は使用をためらっていた。フェゾリネタントは、非ホルモン性の初めての更年期障害治療薬である。米国が承認すると、ロイターなど多くの世界のメディアが、偉業を報じた。
日本のメディアは対照的だった。5月13日、日本経済新聞が「更年期障害薬、米で承認取得 アステラスのフェゾリネタント」という記事を掲載しただけで、他紙は報じなかった。私は、全国紙の編集部の「アンテナ」が、あまりにも低いことに驚いた。
ただ、フェゾリネタントに懸念がないわけではない。それはアジア人での有効性が証明されていないことだ。3月15日、アステラスは、中国・台湾・韓国で実施された第3相臨床試験の結果を公表したが、更年期症状の改善は示されなかった。日本人はどう考えればいいのか。
更年期障害は、医学的要因だけではなく、社会・環境的要因も影響する。この試験の結果が日本に当てはまるかはわからない。決着をつけるには、日本人を対象とした臨床試験が必要だ。
ところが、現在、アステラスは日本人を対象とした第3相臨床試験を実施していない。この状況で、巨額の資金を投じ、日本での治験を進めるのに躊躇しているのだろう。我が国初の世界的な偉業が埋もれる可能性がある。
更年期障害は、多くの日本女性が抱える深刻な問題だ。フェゾリネタントが有効なら、一刻も早く、国内で使えるようになって欲しい。同社の英断に期待したい。
上昌広 医療ガバナンス研究所 理事長
1968年兵庫県生まれ。内科医。東京大学医学部卒。虎の門病院や国立がん研究センター中央病院で臨床研究に従事。2005年から16年まで東京大学医科学研究所で、先端医療社会コミュニケーションシステムを主宰し、医療ガバナンスを研究。16年から現職。
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