http://www.asyura2.com/23/iryo11/msg/380.html
Tweet |
結果は残念だったが…ライバル薬の比較臨床は有意義だった どうする、どうなる「日本の医」
https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/life/322603
2023/05/09 日刊ゲンダイ
がん治療薬「オプジーボ」/(C)共同通信社
4月28日、国立がん研究センターを中心とした研究グループ(JCOG)が、肺がんに対する免疫チェックポイント阻害剤の第3相臨床を中止したと発表した。解説したい。
まずは臨床試験の概要だ。対象は再発、あるいは進行した未治療の肺がん患者だ。研究者たちは、抗がん剤+ペムブロリズマブ(商品名キイトルーダ)と、抗がん剤+ニボルマブ(同オプジーボ)+イピリムマブ(同ヤーボイ)の2群にランダムに患者を割り付け、両者の有効性を比較した。
臨床研究が早期に中止となったのは、ニボルマブ・イピリムマブ群に登録された148人のうち、11人(7.4%)が副作用で死亡したからだ。主な死因は肺臓炎3人、サイトカイン放出症候群2人など、免疫合併症である。研究者たちがあらかじめ設定していた副作用死の基準である5%を上回っていた。
肺がん治療は、免疫チェックポイント阻害剤の開発で一変した。開発をリードしてきたのは小野薬品・米ブリストル・マイヤーズスクイブ(BMS)連合と、米メルク(日本法人はMSD)だ。
前者はニボルマブとイピリムマブ、後者はペムブロリズマブを開発した。ニボルマブの開発に貢献した本庶佑・京都大学特別教授は、2018年にノーベル医学・生理学賞を受賞している。
ニボルマブも、ペムブロリズマブも、製薬業界で「ブロックバスター」と称される大型商品だ。両者の売り上げはどうだろうか。
国内では小野薬品・BMS連合が優勢だ。ニボルマブ1524億円、ペムブロリズマブ1283億円(2022年)である。
ただ、世界ではメルクに大きく水をあけられている。2021年の売り上げは、ニボルマブ93億ドルに対して、ペムブロリズマブ196億ドルだ。
ペムブロリズマブに対抗するため小野薬品・BMS連合が選択したのは、作用機序が異なる免疫チェックポイント阻害剤イピリムマブの併用だ。昨年の米国臨床腫瘍学会総会では、抗がん剤と両剤を併用した進行肺がん患者の3年生存率は27%で、化学療法群の19%を上回ったと報告している。
では、抗がん剤に併用するのはニボルマブ・イピリムマブと、ペムブロリズマブいずれがいいのか。残念ながら、このような臨床試験を製薬企業は実施したがらない。万が一、負けたときのリスクが大きすぎるからだ。
今回、ライバル薬同士の比較に取り組んだのは、公的研究グループであるJCOGである。臨床試験の名前は「NIPPON試験」。小野薬品工業を応援したかったのだろう。
真逆の結果に
ところが、結果は真逆だった。免疫チェックポイント阻害剤を併用したら、がん免疫だけでなく、自己免疫も強化されて副作用が強く出てしまった。
安全性強化という点からは高く評価すべき臨床試験だが、日本人としては残念な結果である。小野薬品・BMS連合の今後の研究に期待したい。
上昌広 医療ガバナンス研究所 理事長
1968年兵庫県生まれ。内科医。東京大学医学部卒。虎の門病院や国立がん研究センター中央病院で臨床研究に従事。2005年から16年まで東京大学医科学研究所で、先端医療社会コミュニケーションシステムを主宰し、医療ガバナンスを研究。16年から現職。
最新投稿・コメント全文リスト コメント投稿はメルマガで即時配信 スレ建て依頼スレ
スパムメールの中から見つけ出すためにメールのタイトルには必ず「阿修羅さんへ」と記述してください。
すべてのページの引用、転載、リンクを許可します。確認メールは不要です。引用元リンクを表示してください。