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盛り上がるワクチン不信の世論と政府が発表した「新しい生活様式」への違和感 どうする、どうなる「日本の医」
https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/life/320637
2023/03/28 日刊ゲンダイ
国民のワクチンへのイメージは急速に悪化(写真はイメージ)/(C)共同通信社
コロナ対策が変わる。政府は3密回避など「新しい生活様式」を発表し、準備に余念がない。私は、この対応に違和感がある。それは、ワクチン接種が含まれていないからだ。
我が国のコロナ対応は失敗の連続だった。政府・専門家が「3密回避」を強調したため、高齢者は自粛し、健康を損ねてきた。米ワシントン大学の調査によれば、コロナ死者の約5倍も、それ以外の理由で亡くなっている。この比率は先進国最大で、最も多い死因は老衰だ。
高齢者の健康を守るために何をすべきか。ワクチンを打つことだ。変異株に対する追加接種の有用性は、多くの研究で示されている。
3月10日、韓国疾病対策センター(CDC)は、BA.1、BA.2変異株に感染歴がある人に追加接種することで、新たな変異株BA.5の感染を約9割減らしたと、「米国医師会誌ネットワーク・オープン」に報告している。
世界はワクチンを重視する。米CDCが高齢者に対し推奨するのは、ワクチンとマスクだけで、日常生活には言及していない。厚労省も、このあたりは分かっている。高齢者や持病を有する人を対象に夏前の追加接種を準備している。
ワクチン不信は合理的か?
なぜ、厚労省はワクチンを積極的に推奨しないのだろう。一つの理由はアンチ・ワクチン世論の盛り上がりだ。口火を切ったのは週刊新潮だ。昨年12月22日号で「コロナワクチン『不都合なデータ』徹底検証」という記事を掲載した。他誌も追随した。
週刊文春は「昨年12月までに厚労省に報告された、ワクチンの接種後に死亡した事例は1917件に上ります」(1月26日号)と報じている。ワクチン不信が強い日本で、ワクチン批判の記事は売れるのだろう。国民のワクチンへのイメージは急速に悪化している。
ただ、週刊誌で展開される論理は非合理的だ。偶然でも説明可能だからだ。昨年1〜9月に、50歳未満の若年の国民2万8613人が亡くなっている。急死することが多い大動脈解離や脳血管疾患だけでも1892人だ。彼らが年間1〜2回のワクチンを打てば、毎月20件くらい偶然の一致が起こる。
世界の議論は違う。米CDCは、「歴史上、最も厳格にモニターされた中、すでに何百万人がワクチンを打っている」「コロナワクチンは有効かつ安全」と結論している。
根拠とする研究は多数存在する。1月16日に米カイザーパーマネンテ南カリフォルニアの研究者が、「ワクチン」誌に発表した研究によると、7つのワクチン安全性データリンクサイトに登録されている会員データを解析したが、副反応による死亡の増加は認めず、コロナ以外の死亡率も低かったという。この研究は、全米人口の3%を対象とした大規模なもので、信頼性は高い。
これが世界の議論だ。日本は合理的に考えねばならない。
上昌広 医療ガバナンス研究所 理事長
1968年兵庫県生まれ。内科医。東京大学医学部卒。虎の門病院や国立がん研究センター中央病院で臨床研究に従事。2005年から16年まで東京大学医科学研究所で、先端医療社会コミュニケーションシステムを主宰し、医療ガバナンスを研究。16年から現職。
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