http://www.asyura2.com/23/hasan136/msg/174.html
Tweet |
https://kamogawakosuke.info/2023/05/26/no-1806-%e8%b2%a7%e5%9b%b0%e3%81%ae%e7%bd%a0/
No. 1806 貧困の罠
投稿日時: 2023年5月26日
The Poverty Trap
by Jeffrey D Sachs
経済発展と貧困終結の鍵は投資である。国家は、4つの優先事項に投資することで繁栄を実現する。
最も重要なのは質の高い教育や医療など、人への投資である。2つ目が電気、安全な水、デジタルネットワーク、公共交通機関などのインフラである。
3つ目は、「自然資本」、自然を守ることだ。そして4つ目は企業への投資である。ここで重要なのは融資、つまり必要な規模とスピードで投資するための資金を動員することである。
原則的に、世界は相互接続されたシステムとして運営されるべきである。教育、医療、インフラ、ビジネス資本が充実している富裕国は、人的、インフラ的、自然的、ビジネス的資本の整備が急務である貧困国に十分な資金を供給する必要がある。
お金は豊かな国から貧しい国へ流れるべきである。新興国が豊かになれば、その利益や利子は投資のリターンとして豊かな国に還流する。
これはWin-Winの提案だ。富める国も貧しい国も恩恵を受ける。貧しい国は豊かになり、豊かな国は自国の経済だけに投資した場合よりも高いリターンを得ることができる。
奇妙なことに、国際金融はそうなっていない。豊かな国は主に豊かな国に投資する。貧しい国々はわずかな資金しか得られず、貧困から抜け出すのに十分ではない。現在、世界の最も貧しい半分(低所得国と中低所得国)の年間生産額は約10兆ドルであり、一方最も豊かな半分(高所得国と高中所得国)の年間生産額は約90兆ドルである。
豊かな半分から貧しい半分への融資はおそらく年間2〜3兆円程度あるべきだ。しかし実際にはその数分の一に過ぎない。
長期的な投資のための短期的な融資
2017年、タンザニア・ダルエスサラームのザナキ小学校の英語授業。(Sarah Farhat/World Bank/Flickr, CC BY-NC-ND 2.0)
問題は、貧しい国への投資はリスクが高すぎると思われていることだ。これは短期的に見ればそうである。低所得国の政府が、公教育資金を調達するために借金をしたいと考えたとしよう。
教育への経済的リターンは非常に高いが、現在の子どもたちは12〜16年の学校教育を経てから労働市場に参入するため、その実現には20〜30年の歳月を要する。しかし融資の期間は5年で、しかも自国通貨建てではなく米ドル建てであることが多い。
例えば、今日20億ドルを借りて5年後に返済するとしよう。5年後にその20億ドルをまた5年ローンで借り換えることができれば、それでいい。5年ごとに5回借り換えることで借金の返済は30年遅れとなり、その頃には経済が十分に成長し、新たな借金をしなくても借金を返せるようになるだろう。
しかしある時点で、国は借金の借り換えが困難になるかもしれない。パンデミック、ウォール街の銀行危機、選挙の不透明感などが投資家を脅かすかもしれない。国が20億ドルを借り換えようとしたときに金融市場から締め出される。手元に十分な資金がなく、新たな融資も受けられないままデフォルトに陥り、IMFの緊急治療室に収容されることになる。
多くの救急処置室がそうであるように、その後に起こることは見ていて楽しいものではない。政府は公共支出を削減し、社会不安を引き起こし、外国債権者との交渉は長期化する。つまり、国は深刻な金融・経済・社会危機に陥ってしまうのだ。
長期の借り入れができない
このようなことを事前に知っているムーディーズやS&Pグローバルなどの格付け会社は、その国に「投資適格」以下の低い信用スコアをつける。 その結果、貧しい国々は長期的な借り入れをすることができなくなる。政府は長期的な投資をする必要があるが、短期的な融資は、政府を短期的な思考と投資に追い込みむのである。
また貧しい国々は非常に高い金利を支払っている。米国政府が30年借り入れで年4%以下の金利を支払うのに対し、貧しい国の政府は5年借り入れで10%以上支払うことが多い。
このためIMFは貧しい国の政府に対してあまり借りないようにと助言している。つまりIMFは、将来の債務危機を避けるために、教育(あるいは電気、安全な水、舗装された道路)を見送ったほうがいいと政府に言っているのだ。これは悲劇的なアドバイスである!それは貧困からの脱出ではなく、貧困の罠に陥ることになるからだ。
2020年2月10日、ワシントンで行われた世界銀行のパネルで、IMF専務理事のクリスタリナ・ゲオルギエヴァと世界銀行総裁のデビッド・マルパス(IMF/コーリー・ハンコック)
状況は耐え難いものとなっている。世界の半分の貧しい人々は、半分の豊かな人々から、エネルギーシステムを脱炭素化しろ、国民皆保険、教育、デジタルサービスへのアクセスを保証しろ、熱帯雨林の保護、安全な水と衛生を確保しろ、等々言われているのだ。しかしそれでも彼らはなぜか、10%の金利で5年間の融資を受けながら、これらすべてを行っているのだ!
問題は、世界的な目標にあるのではない。これらの目標は手が届くところにあるが、それは投資の流れが十分な場合に限られる。問題は、世界的な連帯感の欠如である。貧しい国々に必要なのは4%の30年ローンであって、10%以上の5年ローンではない。そして、もっと多くの資金を必要としている。
もっと簡単に言えば、貧しい国々は、グローバルな金融アパルトヘイトをやめることを要求しているのだ。
より良い金利でより多くの資金を
これを達成するためには2つの重要な方法がある。1つ目の方法は世界銀行と地域開発銀行(アフリカ開発銀行など)による融資を約5倍に拡大することだ。これらの銀行は30年、4%程度で借りることができ、その好条件で貧しい国々に貸し付を行うことができる。
2022年11月14日、インドネシアのバリ島で開催されたG20サミットで初めて直接会談した中国の習近平国家主席と米国のジョー・バイデン大統領(ホワイトハウス、ウィキメディア・コモンズ、パブリックドメイン)
とはいえ彼らの業務は小さすぎる。銀行がスケールアップするためには、G20諸国(米国、中国、EUを含む)がそれらの多国間銀行にもっと多くの資本を投入する必要がある。
2つめの方法は、信用格付けシステム、IMFの債務助言、借入国の財務管理システムを修正することである。このシステムは、長期的な持続可能な開発に向けて方向転換される必要がある。もし貧しい国々が5年ではなく30年の借金を可能にすれば、その間に金融危機に直面することはないだろう。
より正確な信用格付けとIMFのより良いアドバイスに支えられた正しい種類の長期借入戦略があれば、貧しい国々は、はるかに有利な条件ではるかに高い資金を利用できるようになるだろう。
主要国は今年、6月のパリ、9月のデリー、9月の国連、11月のドバイと、世界金融に関する4つの会議を開催する予定である。もし大国が力を合わせればこれを解決できる。終わりのない、破壊的で、悲惨な戦争をするのではなく、それが彼らの本当の仕事なのだ。
https://consortiumnews.com/2023/05/10/the-poverty-trap/
▲上へ ★阿修羅♪ > 経世済民136掲示板 次へ 前へ
最新投稿・コメント全文リスト コメント投稿はメルマガで即時配信 スレ建て依頼スレ
▲上へ ★阿修羅♪ > 経世済民136掲示板 次へ 前へ
スパムメールの中から見つけ出すためにメールのタイトルには必ず「阿修羅さんへ」と記述してください。
すべてのページの引用、転載、リンクを許可します。確認メールは不要です。引用元リンクを表示してください。