>>つづき >イスラエル・アメリカなどによる、震災したシリアへの爆撃・その一部の違法占領にどう対応すべきなのか? 白井邦彦 2023年3月16日 https://note.com/brave_borage660/n/n604c4a3049b6 前回も述べたようにイスラエルは震災したシリアに三度にわたるミサイル攻撃を行っています。 イスラエルは震災で苦しむシリアに追い打ちをかけるかのように3度目のミサイル攻撃を実施(青山弘之) - 個人 – Yahoo!ニュース(3/13) 実は震災したシリアでの爆撃に関しては大きな誤解があります。再び青山先生の論考です。 トルコ・シリア地震発生以降、シリアで爆撃を行っていないのはアサド政権だけという知られざる事実(青山弘之) - 個人 - Yahoo!ニュース(3/15) 下記は地震発生以後シリアで行われた爆撃の一覧です。青山先生の上記論考より直接引用したものです。 ●地震発生以降の爆撃一覧 なお、トルコ・シリア地震発生以降も、シリアで爆撃、あるいは有人・無人の航空機によるミサイル攻撃が繰り返されている周知の通りだ。その詳細は以下の通りである。 ・2023年2月12日、クルド民族主義組織の民主統一党(PYD)に近いANHAによると、トルコ軍の無人航空機(ドローン)がシリア政府と北・東シリア自治局(PYDが主導する自治政体)の共同統治下にあるアレッポ県のアイン・アラブ(コバネ)市近郊のマナーズ村の街道で車1台をミサイルで攻撃した。これに関して、PYDの民兵組織である人民防衛隊(YPG)主体のシリア民主軍広報センターは声明を出し、兵士1人がミサイル攻撃で殺害されたと発表した。 ・2023年2月14日、米中央軍(CENTCOM)は15日に声明を出し、現地時間午後2:30頃、米軍が違法に駐留するダイル・ザウル県のCONOCOガス田上空で偵察活動を行おうとしていたイラン製のドローンと交戦、これを撃墜したと発表した。 ・2023年2月19日、イスラエル軍がUNESCO世界文化遺産に指定されているダマスカス旧市街のダマスカス城などを爆撃、シリア軍の発表によると軍人1人を含む5人が死亡、市民15人が重軽症(「イスラエルが震災に喘ぐシリアをミサイル攻撃:トルコ、米国、「イランの民兵」の「火遊び」が疎外する支援」を参照)。 ・2023年2月22日、英国で活動する反体制系NGOのシリア人権監視団によると、トルコ軍がシリア政府と北・東シリア自治局の共同支配下にあるハサカ県のカーミシュリー市とカフターニーヤ市を結ぶ街道を移動中の車輌1台をドローンで攻撃し、民間人1人を殺害、北・東シリア自治局内務治安部隊(アサーイシュ)の司令官を負傷させた。 ・2023年2月24日、シャーム解放機構に近いホワイト・ヘルメットは、所属不明のドローンがイドリブ県北部のカーフ村とダイル・ハッサーン村を結ぶ街道で、2人組が乗ったオートバイを狙ってミサイル攻撃を行い、身元不明の2人を殺害したと発表した。シリア人権監視団やパン・アラブ系ニュースサイトのアラビー・ジャディードなどによると、攻撃を行ったのは米主導の有志連合で、殺害された2人のうちの1人はアブー・イバーダ・イラーキーを名乗るアル=カーイダ系組織のフッラース・ディーン機構のイラク人司令官。(「地震の被害に苦しむシリア北西部でドローンによるミサイル攻撃:誰が誰を狙ったのか?」を参照)。 ・2023年3月1日、ロシア当事者和解調整センターのオレグ・エゴロフ副センター長は、ヌスラ戦線(シャーム解放機構)とトルキスタン・イスラーム党がイドリブ県とラタキア県内の安全地帯やシリア軍の拠点複数ヵ所に対して迫撃砲による砲撃やドローンでの爆撃を行ったことを確認したと発表した。 ・2023年3月4日、シリア人権監視団は、「ジハード主義武闘諸派」に所属する武装したドローン複数機が、シリア政府の支配下にあるハマー県シャトバ村一帯のシリア軍の拠点複数ヵ所を爆撃した。 ・2023年3月7日、イスラエル軍がアレッポ国際空港をミサイル攻撃し、利用不能にした(「イスラエルが震災に喘ぐシリアを再び攻撃、支援物資の受入窓口になっているアレッポ国際空港が利用不能に」を参照)。 ・2023年3月8日、シリア人権監視団によると、ロシア軍戦闘機がイスラーム国のスリーパーセルが潜伏するヒムス県の砂漠地帯に対して重点的に爆撃を実施した。その際、ロシア軍戦闘機は米軍(有志連合)が占領するタンフ国境通行所一帯地域(55キロ地帯)に接近し、爆撃を行った。 ・2023年3月12日、イスラエル軍がタルトゥース県に対してミサイル攻撃を行い、シリア軍の発表によると、シリア軍兵士3人が負傷、若干の物的損害が生じた(「イスラエルは震災で苦しむシリアに追い打ちをかけるかのように3度目のミサイル攻撃を実施」を参照)」(「トルコ・シリア地震発生以降、シリアで爆撃を行っていないのはアサド政権だけという知られざる事実(青山弘之) - 個人 – Yahoo!ニュース」から直接引用したものです) 実は表題にもあるように、地震発生以後シリアで爆撃を行っていないのは「アサド政権だけ」、この点は日本でも誤って宣伝されており、青山先生が指摘するように「プロパガンダとみなされてても仕方がない」と思います。同時に震災を受けたシリアへの爆撃は、イスラエルが一番目立つのですが、アメリカ、トルコ、ロシアによっても行われています。 シリアにおけるアメリカ・イスラエル・トルコなどによる違法占領、爆撃などはなぜ報じられたり非難されたりすることがないのでしょうか? 青山先生は下記のような指摘をおこなっています。 「イスラエルがシリアに対して執拗に繰り返す爆撃やミサイル攻撃は、レバノンのヒズブッラーなど、イラン、そしてイラン・イスラーム革命防衛隊から物心面での支援を受けるいわゆる「イランの民兵」の存在によってもたらされる安全保障上の脅威に対抗することを目指している。 こうした事情ゆえに、イスラエルとの同盟国である米国や西欧諸国は、攻撃がたとえ民生施設を標的としたものだとしても非難することもなく、これらの国のメディアにおいて批判的な記事や論調を目にすることはほとんどない。」(「イスラエルは震災で苦しむシリアに追い打ちをかけるかのように3度目のミサイル攻撃を実施」より直接引用) 「イスラエルにとって安全保障上の脅威となっているならイスラエルの爆撃やミサイル攻撃もその標的が民生施設であっても非難しない」、なら「NATO東方拡大とウクライナまでもNATO加盟の方向でロシアの安全保障に脅威となっているなら、ロシア政権によるウクライナ侵略・民生施設への爆撃も非難しない」、もまた容認されてしまいます。 私はロシア政権によるウクライナ侵略もイスラエル・アメリカなどによるシリア爆撃や占領も同じく強く非難すべき、という立場です。 同時に、イスラエル・アメリカなどによるシリア爆撃・その一部の占領に対してはどのような対応をすべきなのか、特にウクライナへの軍事支援支持の人たちはどう考えているのか?ぜひ知りたいと思います。 なお一言付け加えると、アサド政権は確かに自国市民に対して科学兵器など違法な兵器での攻撃疑惑がありますし、それはおそらく確かでしょう。ただウクライナ政権についても自国内の親ロ派(といってもその人たちもウクライナ市民)にクラスター弾を使った疑惑が報じられています。 ウクライナ軍がクラスター爆弾使用か 国連が懸念表明 – CNN.co.jp(14年10/22) イスラエル・アメリカなどによるシリア違法占領・爆撃については、どのように対応すべきと、特にウクライナ軍事支援支持の人たちは考えているのでしょうか? ロシア・ウクライナ戦争だけが軍事紛争ではありません。白井邦彦 青山学院大学教授 ______________________________________________
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